インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

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郡上伝統の踊りを支える若き下駄職人

 
周囲を山々に囲まれた風光明媚なまち、岐阜県郡上市。多くの観光客を魅了する昔ながらのまちなみでは、7月に入ると日本三大盆踊りに数えられる「郡上おどり」が開催され、およそ2ヶ月の間まちは一層の盛り上がりを見せます。特にお盆期間中に開催される「徹夜おどり」に全国から訪れた人々が昼夜問わず踊り続ける姿は圧巻です! その400年以上の歴史を誇る伝統のまつりを、和の美しさただよう見た目と、軽やかな音で彩る逸品があります。日本古来の履物である下駄を、郡上おどり仕様につくりあげた「踊り下駄」です。
 
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↑ 下駄の音で踊りに拍車をかけるのが郡上おどりの特徴。長時間の踊りにも耐えられるよう、履き心地も重視。
 
そんな地域文化と強いつながりをもつ踊り下駄を手がける工房のひとつが、岐阜県郡上市にある「郡上木履(もくり)」。2014年に設立した同工房は「メイドイン郡上」というこだわりをもち、踊り下駄のデザインから原料となる木の調達、製造、販売という一連の工程をすべて郡上市内で行っています。店主の諸橋有斗さんは、岐阜県立森林文化アカデミーで学んだ木工技術を生かし、下駄づくりに励む若き職人。郡上おどりを愛してやまない通称「踊り助平」の晴れ舞台を足元から支え続けているのです。
 
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↑ 踊り下駄づくりのこだわりを話す諸橋さん。
 

強く、そして美しく! 踊り下駄に散りばめられた職人の技

 
郡上踊りを盛り上げるのに欠かせない踊り下駄。 諸橋さんは「地面を蹴った時の音にこだわり、他の木材より比重の大きいヒノキを使用しています。また、足を乗せる“台”と地面に当たる部分の“歯”を接合する従来のつくり方だと激しい踊りへの耐久性がないため、木の塊から台と歯が一体となった形状に切り出しているんです」と踊り下駄を構成するポイントを話します。
 
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↑ 郡上木履の踊り下駄の原料となる郡上産ヒノキ。ここから下駄のフォルムを切り出します。
 
また、履き心地や耐久性に加えて、ファッション性を添えるのが鼻緒です。郡上木履では素材も製法も異なる色柄多彩なラインアップを展開しています。「郡上市伝統の地場産業である印刷技法『シルクスクリーン』を使ったものや、手作業で刺繍を施す『こぎん刺し』など、鼻緒それぞれに地域の技を生かしています。藍色がきれいな『郡上本染め』の鼻緒は職人さんに直談判して実現したもの。郡上木履の踊り下駄は、“伝統ある生地や技法を鼻緒に取り入れる”という今までにないアイデアを受け入れてくれる方々に恵まれているからこそつくれていると言っても過言ではありません」。
 
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↑ 100種類以上の鼻緒から好みのデザインをチョイスし、オーダーメイドで踊り下駄をつくれます。
 

踊り助平との対話から生まれたマスターピース

 
地域資源や地場産業を生かしてつくられている郡上木履の踊り下駄。そのシンプルな佇まいに、伝統の技が息づいていると思いきや、諸橋さんから驚きの答えが! 「私が郡上市で下駄職人を志した2010年当時、下駄づくりを行っていたのは保存会に所属する1人だけ。下駄の基本的な構造以外は独学で勉強し、現在の踊り下駄のフォルムに辿り着きました。下駄づくりのノウハウが少ない分、積極的に取り入れたのが踊る人の意見です。履いた時のフィット感や、踊り姿が美しく見える歯の高さなど、長年踊り続けてきた方々を満足させるまでつくり続けましたね」。郡上木履の踊り下駄は、まさに諸橋さんの創意工夫の結晶なんですね!
 
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↑ 諸橋さんは手作業で履く人に合わせた微調整を行います。
 
郡上おどり開幕を控え、日に日に高まるまちのムードを感じながら、諸橋さんは一足一足真心を込めてつくり続けます。「郡上おどりには洋服で参加する方もいらっしゃいます。うちの踊り下駄は鼻緒でアレンジできることから、浴衣にも洋服にもコーディネートしやすい点が特徴。郡上おどりに参加される方は、ぜひ下駄選びも郡上おどりの一部として楽しんでほしいです」と諸橋さんは笑顔を浮かべます。
後編では踊り下駄づくりの拠点である工房にお伺いし、製造工程や職人の技に密着。また、諸橋さんが踊り下駄に込める郡上市への思いをご紹介します。後編記事は6月9日(金)記事アップ予定です。
 
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↑ 郡上木履の店舗は木の温もりあふれる落ち着いた空間。ゆったりとした気分で好みの下駄をセレクトできます!
 
(写真:渡辺シンヤ、文:西村友行)
 
後編はこちら
 

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