インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。


 
昔から夏の風物詩として親しまれてきた蚊取り線香。渦巻き型の線香からゆっくりと立ち上がっていく煙や、夏休みに祖父母の家へ訪れた時のようなどこか懐かしい香りに、夏の到来を感じる人もいるのでは。
線香と一口にいってもさまざまな原料で作られている中、合成殺虫剤や合成着色料を一切使用せず、除虫菊などの天然素材のみで作られている「菊花せんこう」。手がけるのは愛知県津島市にある株式会社りんねしゃです。
 

↑ のどかな田園風景の中に佇むりんねしゃ(宇治店)。体にやさしいものを届けたいという思いを大切に、無添加食品や有機農畜産物、天然生活雑貨の開発・販売をしています。
 

開発のきっかけは、家族の体調不良

 
お話を伺ったのはりんねしゃの大島幸枝さん。「私の父が化学物質に敏感な体質で、合成殺虫剤が入った蚊取り線香を焚くと頭痛など体調不良に悩まされていて。昔の人はどうやって防虫していたのだろうと疑問に思い調べていく中で、除虫菊という天然の植物を使った線香があることを知ったんです。除虫菊には、防虫効果のあるピレトリンという成分が含まれています。日本では明治時代から栽培されていて、昔から蚊取り線香の原料に利用されてきましたが、第二次世界大戦後の高度経済成長の中で、合成殺虫剤が開発され、除虫菊を使った線香がどんどんなくなっていきました」。そんな中、除虫菊を使ったせんこうを作り続けているメーカーの存在を知り、需要が少ないため製造を中止しようとしていたところを、りんねしゃが商品を買い取ることで、なんとか製造を続けてもらうことに。
 

↑ 気さくで明朗な人柄が魅力的な大島さん。
 

↑ 「菊花せんこう」は黄土色。合成着色料や染色剤を使用せず、原料そのままの色を生かしています。
 

安心して使えるよう、除虫菊の自社栽培を開始

 
はじめは、買い取った「菊花せんこう」の販売だけをしていたという大島さん。「線香に使用される除虫菊は、輸入がほとんど。どのように作られているのかを調べていくと、海外では除虫菊の栽培がグローバル企業による農民の詐取や児童労働の一因となっていたり、使用基準を守らず農薬を使用している場合が多いことがわかったんです。いくら天然原料を使用しているといっても、これでは意味がないと感じ、除虫菊を自社で栽培することを決めました」。
現在、北海道滝上町にある自社農場と中国の契約農家の2ヶ所で、無農薬の除虫菊を栽培しています
 

(写真提供:りんねしゃ)
 

↑ 北海道にある自社農場に大島さんのお父さんと弟さんが足を運び、除虫菊を栽培しています。(写真提供:りんねしゃ)
 

納得するまで、自分の手で何度も試作を繰り返す

 
さらに「菊花せんこう」を良いものにするため、大島さんはその他の原料も見直すことに。
「よもぎやみかんの皮など思いつくものを粉にしては、自分の手で練り合わせて乾燥させ、燃やしてみる。そうやって原料の種類や配合比率を変えながら、何度も試作を繰り返しました」。除虫菊の割合を多くすると、殺虫効果はあるが煙が多く香りも強くなる。粉を細かくしすぎると燃えにくくなってしまうし、粗くすると折れやすくなってしまう。香りも粉の状態と練って燃やした時では全く違う。防虫効果、煙の出方、燃焼時間、耐久性、香りなどすべてにおいて納得できるものが出来上がるまでに多くの時間と労力を費やしたそう。
 

↑ 「菊花せんこう」は除虫菊の粉以外に、木粉やデンプンなどすべて天然素材を使用しています。
 

現状に満足せず、これからも邁進し続ける

 
「今の『菊花せんこう』が完成形だと思っていません。その年の除虫菊の出来によっても配合比率を変えるし、一旦商品を作っても火が消えやすいということに気づいたら再び粉に戻して練り直すことも。また今後、商品をもっと良くするために新たな原料を取り入れることだってあります。
時間や手間はかかりますが、天然素材でありながら防虫効果や使い心地を追求していくため、絶対に妥協はしたくないんです」。
 

↑ 消費者の声も、商品開発に積極的に取り入れています。防虫成分を増やしてほしいという意見からできた「mone(もね)」やペットのための「菊花のせんこうfor cats」(犬用もあります)、除虫菊のエキスを配合したスプレーなど種類が豊富!
 
使う人や環境にとって、安心・安全なものを作り続けたい。そんな“やさしさ”と“探究心”から生まれた「菊花せんこう」で、夏を快適に過ごしてみていかがでしょうか。
 
(撮影:西澤智子 文:松本翔子)
 
 

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