体験

「しょく」=食、職、触。さまざまな情報を手に入れることがたやすくなった今の時代においても、生の体験、実際に自分の手で触れることを大事にしていきたい。1人でも、友人やお子さんとでも。「触れる」魅力を宝物に。


 
愛知県豊田市の北部にある小原地区(旧小原村)。春と秋の年2回美しい花を咲かせる「四季桜」や豊田市無形民俗文化財でもある「小原歌舞伎」など、豊かな自然の中に伝統文化が息づくのどかな田舎町です。中でも、室町時代に伝えられたといわれる紙漉きの技術は、「小原和紙工芸」という美術工芸品として、今も大切に受け継がれています。
 
紙漉きを体験できる場所があると聞き、訪れたのが「豊田市和紙のふるさと」。小原和紙工芸や全国の和紙資料を展示している「和紙展示館」や紙漉き体験実習を行っている「和紙工芸館」、和紙製品などを販売する「休憩所」など、小原和紙工芸について詳しく学べる参加体験型の施設です。早速紙漉きを体験するべく、「和紙工芸館」へ!
 

 
体験メニューは、和紙に自由に絵を描く「絵すき」、色紙に好きな葉っぱを乗せる「葉すき」、指で好きな文字を書く「字すき」、色和紙でうちわを作る「うちわ」、作った作品を壁に掛けられる「壁掛け」の5つ。今回は夏に活躍しそうな「うちわ」を作ってみることにしました。案内してくれた都築芳美さんは、小原へ移住したことがきっかけで小原和紙の魅力に触れ、その素晴らしさを伝えたいと「和紙工芸館」で働くようになったのだそう。
 
まずは原料の説明から。小原和紙の原料は、楮(こうぞ)という木、水、トロロアオイという植物の根の3つのみ。小原地区では、原料となる楮(こうぞ)の木がたくさんあったことから、和紙づくりが盛んになったのだとか。
 

 
楮(こうぞ)で使うのは皮の部分。剥ぎ取った皮を削り、残った白皮を干して乾燥。アルカリ液で煮て、機械で繊維をほぐすと綿が出来上がります。
 

 

 
この綿にネバネバしたトロロアオイを混ぜます。
 

 
実際に触ってみると、本当にとろっとろ! 「トロロアオイ」という名前から、山芋を連想する人が多いそうですが、実はアオイ科という植物の仲間。「トロロアオイ」を混ぜることで、紙を漉く際に網から水が落ちるスピードを遅くし、均一な厚みに仕上げることができるのだそう。
原料について学んだところで、いよいようちわ作りスタート! うちわ型の真ん中をめがけて原料を入れたら、木枠部分を持って上下、左右にゆっくりと動かします。
 

 
動きを止めると原料が偏るので、動かし続けることがポイント。木枠を握る手に力が入ります(笑)。
 

 
紙のベースができたところで、次は色づけ。青、オレンジ、赤、緑、黄から好きな色を選びます。
 

 
私は涼しげな青をチョイス。そこに黄と赤で水玉模様を作りました。勢いよく垂らすと紙がよれてしまうので、慎重に。
ここで都築さんが和紙の伝統技法を1つ教えてくれました! 手を水につけたら、指をすぼめて目の高さから水を落とす「落水(らくすい)」という技法。ポタポタと落ちる水圧を利用して、水玉模様を作ります。
 

 

 
やり直しができないので緊張しましたが、無事に成功。
 

 
うちわに貼る色紙はハートや星、水玉のほか、うさぎや魚、男の子が喜びそうな昆虫や恐竜も。色や種類がたくさんあって悩んでしまいます…! ここは夏らしく金魚と水玉にしました。
 

 
慎重にうちわの上に置いたら、やさしく霧吹き。最後に金銀の箔をあしらいます。
 

 
涼しげな雰囲気に仕上がりました。この後15~20分程機械で乾燥させます。仕上がりを待ちながら、工房を少し見学してみることに。
 

 

 
職人さんが大きな木枠使って作っているのは、大きな1枚の和紙。豪快かつ繊細に木枠を動かしながら、あっという間に作ってしまう職人技に思わず見入ってしまいます。ポップな色合いがかわいいですね。
 

 
こちらには色鮮やかな染料がいっぱい!これは自由に絵を描くことができる「絵すき」の体験で使用するもの。たくさんの色が用意されているので、オリジナリティあふれる作品が作れそうですね。さて、うちわの乾燥ができたようなので見に行きましょう!
 

 
木枠からそっと剥がして…うちわの紙部分の完成です!思い通りの仕上がりに思わずニッコリ。
次に竹の骨に貼っていきます。
 

 

 
骨にのりをたっぷりと塗り、裏返して和紙の上に乗せ手でしっかり押さえます。この時、縁に1cm程度折り返す分を残しておくのがポイント。
 

 
際にのりを塗ったら、端から順番に少しずつ折り返します。
 

 
表面の付け根部分にもしっかりとのりを塗り、両縁に飾りを付けたら完成です!
 

 
扇ぐのはもちろん、見ているだけで涼しくなるようなうちわが出来ました!
小原の伝統文化を学びながら、気軽に楽しく体験できる紙漉き体験。スタッフさんが丁寧に教えてくれるので、大人はもちろんお子さんと一緒でも安心ですよ。
皆さんも、世界に1つしかない自分だけの和紙作品を作ってみてください。
 
(文 松本翔子)
 
 

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