インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

 

使命を終えた消防服がバッグとして生まれ変わる

 
カーキカラーにビビッドなイエローが映えるこのバックパック。ヴィンテージ感のある風合いが、他のバッグにはない独特の個性を醸し出しています。実はこのバッグ、世界に同じものが2つとないのです! なぜなら、使用されている素材は役目を終えた消防服。いたる所に付いているキズやススの微妙な違いが、バッグにするとオリジナリティのあるアクセントとして現れます。

 

↑消防服には特殊繊維素材「アラミド」が使用されているため耐久性は抜群!

 

名古屋市を代表する商店街のひとつ、大須商店街。大須観音からほど近い、多くの人が行き交う仁王門通沿いに、消防服を素材とするバッグ「FIREMAN」を手がけるバッグブランド「MODECO(モデコ)」本店があります。店内には「FIREMAN」だけでなく廃棄されていた素材を用いたさまざまなバッグがずらり。そのなかでも「FIREMAN」は同ブランドの人気コレクションとして、素材となる消防服とともに展示されています。

 

↑右から名古屋市、豊田市、神奈川県川崎市の消防服。それぞれの色合いを生かしてバッグを製作します。
 
 

欠点こそ長所に! 廃棄物から新たな価値を創造

 
「『MODECO』は廃棄物に新たな価値を見出し、いままでにないバッグを創造するブランドです」と話すのは、同ブランドを立ち上げ、バッグのデザインも担当する水野浩行さん。ミュージシャンとして活動していた水野さんが、消費者至上主義の社会の中で多くのモノが廃棄されていく現状に疑問を抱き、2010年に同ブランドを設立。当初から現在まで「長さが中途半端」「耐久性が足りない」などを理由に廃棄されていたフローリングやシートベルトなどを有効活用し、モノの欠点を「個性」という長所に転換して、社会に向けて発信しています。
 

↑現在、「MODECO」のデザインやブランディングを一手にこなす水野さん。
 

「MODECO」が手がけるバッグには、決まった型がありません。例えば未使用品でありながら廃棄されていたフローリングを素材とするコレクション「FLOORING」は、フローリングの木目と光沢を生かし上品なデザインに仕上げています。「バッグをつくるうえで、自分のこだわりを主張することはないですね。大事なことは廃材それぞれの個性を引き出すこと。そのため、素材と向き合い、魅力を見つけることに注力しています。」

 

↑「FLOORING」のハンドバッグ(右)に象徴されるように、女性的なデザインのバッグも人気です。
 
 

消防士の活動の軌跡を力強いデザインで表現

 
ヴィンテージ感あふれる「FIREMAN」やエレガントな雰囲気が魅力の「FLOORING」など、多種多彩なコレクションを展開する「MODECO」は、エコロジーやリサイクルに関心をもつ人たちだけでなく、ファッションへの感度が高い幅広い世代に注目されています。「同ブランドは廃棄物を再利用する志に注目されることもありますが、あくまでデザイン勝負。バッグはその人の個性を表すものだからこそ、見た人の心に刺さる逸品を目指しています」と水野さんは話します。
 

↑廃棄されていたフローリングの切れ端。いかにして価値を生み出せるか、水野さんの腕の見せ所です!
 
「FIREMAN」に込めた思いについて水野さんに問いかけると「消防服は火災現場で人々のために力を尽くす消防士のパートナーであり、服のいたる所にキズやススなどが刻み込まれています。それらは消防士にとっての勲章であり、決してマイナスの要素ではありません。消防服に宿る“思い・ストーリー”をバッグとして表現したものが『FIREMAN』なんです」との答えが。火と戦う消防士にも負けない、作り手として熱い職人魂を感じることができました! 後編では「FIREMAN」製造工程に迫ります。お楽しみに!
 

↑多彩なフォルム・色合いのバッグを展開する「FIREMAN」。消防服の魅力を最大限に引き出した、水野さん渾身のラインナップといえます。

(撮影:西澤智子 文:西村友行)
 
後編はこちら
 
 

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