インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

リラックスタイムに音楽を聴くという人も多いのでは。心地よいサウンドは、疲れた心を癒してくれますよね。暮らしの中で音楽を気軽に楽しんでほしいと制作された「Clappin Jam(クラッピン・ジャム)」。機械も電気も使わず、ただiPhoneを置くだけで、深みのある音色が簡単に楽しめるウッドホーンスピーカーです。手掛けるのは愛知県半田市にある木工工房「Clappin Jam Wood」の原田佳文さん。一点一点手づくりで生み出されるスピーカーはどのように開発されたのでしょうか。

 


↑「クラッピン・ジャム」シリーズ。左から「WIDE」「L」「TALL」。インテリアとしても馴染むデザインが魅力。

 

心機一転、会社員から木工職人へ

 
「Clappin Jam Wood」を運営する原田さん。木工職人を志したのは45歳のとき。23年務めた繊維関係の商社を辞め、1年間九州地方にある職業訓練校の木工家具科へ通ったそう「商社が人と人を仲介してモノを売る時代から、インターネットが普及して個人でも物が売れる時代になりました。その中で自分で作ったモノを売りたいという思いが湧いたんです」。時間をかけてじっくりものづくりと向き合える木工をしようと決意。ここから、原田さんの木工職人としての人生がスタートします。

 


↑ヨーロッパに商材を仕入れに行くこともあった会社員時代。職人の技やこだわりを肌で感じてきた経験が今に繋がっています。

 

職業訓練校の卒業制作から広がった、スピーカー作り

 

「職業訓練校では、家具作りを学んでいました。卒業制作で製作したのが憧れだったJBL社の『paragon(パラゴン)』です」。「paragon」とは1957年に開発されたスピーカーです。音域を3つに分け、内蔵された3つのスピーカーで音を出す3ウェイユニットタイプで広い音域の音が再生できます。現在のオリジナルの販売価格は中古でも200万円を超えるとか。自作「paragon」の製作には約6ヶ月費やしたと言います。その製作日記をブログで公開すると、オーディオや音楽好きの人々の間で話題に。その後、特注のスピーカーの依頼が来るなど、ネットワークが広がっていきました。

 


↑奥にあるのが、原田さんが製作した「paragon」。その再現度の高さから、映画の撮影セットとしても使用されたこともあるそう。
 

↑原田さんの自宅には、自作した「paragon」以外にもこれまで製作したスピーカーがたくさん置かれています。
 

24時間ずっと聞いていても疲れない音を追求

 
「音源は、iPhoneに入れると圧縮音源となり、低音が削られて高音が強く雑な音になってしまいます。それが聞き疲れにつながるんです。ずっと聞いていられる音が出せたら、場の空気が変り、生活も豊かにできると思いました」。いつでもどこでも、心地よく響く音楽を楽しめるようにと開発したのが「クラッピン・ジャム」。最初は遊びで作ったというから驚きです。「工房を開業した当時友人に展示会に出品しないかと誘われて。そこで販売する商品として、『クラッピン・ジャム』を制作しました。それが思いのほか好評で、現在まで製作を続けています」。卒業制作で培った知識と技術の賜です。

 


↑初期のころの「クラッピン・ジャム」。間接照明を付けたり、女性ユーザー向けにポップなデザインにしたりと試行錯誤をしていました。

 


↑木目が楽しめるシンプルで落ち着くデザインに。スピーカーが本体の底部分についている機器で、挿入口にサイズが合えばiPhone以外でも使用できます。

 

「4種類ある『クラッピン・ジャム』シリーズはそれぞれ内側の構造を変え、狙った音域を響きやすくしています」。「WOOD HORN S・L」はオールジャンル、「WOOD HORN WIDE」はジャズやヴォーカル、レトロミュージックやR&B、「WOOD HORN TALL」は弦楽器やクラシックにおすすめなのだそう。「家で音楽と共にインテリアとして楽しんでもらいたいので、現代の居住空間に合うようにデザインしました。電源がいらないので、アウトドアにもいいし、キッチンなどで家事をしながらでも安心して使えます」。スマホスタンドの役割も果たし、調理中にiPhoneでレシピを表示しながら音楽を楽しむこともできます。

 


↑見た目のサイズやデザインだけでなく、音を左右する内部構造もそれぞれ。左:S フィンが1つ、右:L フィンが2つ。

 

空洞を利用して、いい音を膨らませる

 

「メガホンや拡声器というとイメージしやすいかもしれません。音が空洞を通ることで、大きく響きますよね。その音色をよくするところに、独自のノウハウを詰め込んでいます」。「クラッピン・ジャム」はフロントロードホーン型という形式を採用。スピーカー内で音を長く反響させることで、徐々に増幅させています。素材に木材を使うことにも意味が。表面反発係数という、音がぶつかった時のスピードがほかの素材より優れているのだそうです。「使用する木材は本物のスピーカーと同じプライウッドに加工し湿気などによる歪みや、ひずみを防ぐ特性があり、長く愛用していただけます」。

 

↑iPhoneのスピーカーと、「クラッピン・ジャム」の音を聞き比べてみてください。

 

iPhoneをセットするだけで深みのある音楽が楽しめる「クラッピン・ジャム」。後編では、製作現場に潜入。原田さんならではの製作ポイントや、手作業へのこだわりを紹介します。

 
(写真:西澤智子 文:堀絢恵)
 
 
 

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