インタビュー・モノ

「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。

 
春は出会いの季節。ビジネスで新しく出会った人と、名刺交換をする機会も増えてきます。そんな時、会話のきっかけになりそうなのが、“曲がる木”でできた「iLignos(アイリグノス) 名刺入れ」。この名刺入れ、天然の木でつくられているのに、ふたを開閉するときに革のようにしなやかに曲がることに驚き!そのユニークな個性は、初対面の相手との距離をぐっと縮めてくれそう。また、木材ならではの質感が手にやさしく馴染みます。
 
手がけたのは、名古屋市中川区に本社を置く「名古屋木材」。主に木材や建材、住宅機器の販売やウッドデッキの施工を行っている会社が、どのようにして斬新なアイテムを開発したのか…!? iLignos名刺入れプロジェクトメンバーの竹田博さんと稲垣貴大さんに、話を伺いました。
 

木材の可能性を広げるために

 

↑名古屋木材の商品開発室で室長を務める竹田さん。
 
iLignos名刺入れに使われている“曲がる木”は、木材を圧縮して作られる「LIGNOFLEX®(リグノフレックス)」という素材。2009年に特許を取得しています。これまで、圧縮によって木材を硬くする技術は存在しており、家具やフローリングに使われてきました。しかし、岐阜大学と共同研究に取り組み“木をしなやかに湾曲させる”という新たな境地に挑戦。 圧縮した後に、木材にかかっていた力を少し緩めることで、“曲がる木” LIGNOFLEX®が生まれました 。
 

↑ゴムのようにたわむLIGNOFLEX®ですが、加工する際に化学薬品は一切使っていません。水蒸気の熱とプレスの力だけで加工しているので、人にも環境にも優しい素材です。

 

↑木材を圧縮加工する装置。LIGNOFLEX®もこの装置でつくられています。
 

↑右が圧縮前、左が圧縮後の杉材 。もともとは同じ大きさでした。
 
LIGNOFLEX®の材料には、 国産の杉を使用。杉材を専用の装置に入れ、100度を超える高温の水蒸気で柔らかくした後に圧縮すると、厚さはほぼ半分に!これを用途に合わせて薄くスライスすると、しなやかに曲がるLIGNOFLEX®が完成します。
 

開発段階には、自然素材ならではの困難も

 
こうして開発されたLIGNOFLEX®を使って、2015年にiLignos システム手帳を製作・販売。木の手帳カバーという斬新さで、ビジネスマンをはじめとする多くの人から支持を得たことから、「より多くのビジネスマンが使うアイテムを製作し、もっとたくさんの人に木に触れてほしい」と考え、名刺入れを開発することに。
 

↑右が試作品、左が完成品。本体部分は天然木材を使用。木目の向きや各パーツの形状など、さまざまなパターンを試したとのこと。
 
2018年からスタートした、iLignos名刺入れの開発。機能性を考慮してLIGNOFLEX®と天然木材を組み合わせてつくったことで、開発にはさまざまな苦労があったそうです。
 
「湿度が高い夏に試作品を置いておいたら、天然木材が湿気を吸って木目に沿って湾曲してしまったんです。これでは長く使っていただけないので、木目の方向を変えて再製作。すると今度は他のパーツの強度が下がってしまい…。トライアンドエラーの繰り返しでした」。
 

 

↑完成品の名刺入れ。木材ならではの温もりを感じます。
 
1年半の研究開発期間を経て、iLignos名刺入れは完成。LIGNOFLEX®の最大の特長である“曲がる木”が一目で伝わるよう、アーチ部分はあえて丸みを持たせました。
 

↑本体にはウォルナット・チェリー・メープルの3種類の木材を、ふたの裏地には国内メーカーのスエード 調人工皮革3色を使用。木材とスエードの色を自由に組み合わせて、自分好みにカスタマイズできます。
 

↑名古屋木材の商品開発室 クラウドファンディングの運営を担当する稲垣さん。
 
現在、クラウドファンディングサイト「Makuake」にてiLignos名刺入れプロジェクトの応援を呼び掛けています。応援購入総額は目標額の10倍近くにも上り、プロジェクトサポーターから続々と応援コメントが寄せられている様子。
 
稲垣さんは、「応援が数字に表れることも嬉しいですが、コメントを通じて、どんな思いで応援してくださっているのか知ることができるのは、やりがいにも繋がっています。また、お客様の意見を直接聞くことができるので、マーケティングにも役立っています」と話します。
 

↑iLignosシステム手帳のユーザーが応援購入してくれることも。まるで革のように曲がる、不思議な木の魅力に惹かれる人が増えているようです。
 

↑今後もLIGNOFLEX®を使ったステーショナリーを開発することで、木の魅力を広め、循環型社会の形成に貢献したいとのこと。現在は、ネームホルダーの開発に取り組んでいます。
 
竹田さんは「機能性の高い素材が数多く開発された現代でも、木材は人々に愛され続けています。そんな木材の、更なる可能性を探っていきたいです」と今後の展望を語ってくれました。
 
天然の木の質感を十分に楽しめるうえ、しなやかに曲がり、柔らかな印象と驚きを与える名刺入れ。経年変化によってツヤが出てくるのも楽しみのひとつです。新生活に、木の温もりを取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 
 
(写真:岩瀬有奈 文:國分沙緒里)
 
 

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