蒲郡・三谷温泉で現代アートの芸術祭を。「ととのう温泉美術館 平野寛幸さん・藤田聖人さん」

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愛知県蒲郡市、三河湾を望むように山の麓に広がる三谷温泉。山合いにぽつぽつと旅館が佇み、昔ながらの趣を残すこの場所で2023年1月21日(土)~2月19日(日)、現代アートの芸術祭「ととのう温泉美術館」が開催されようとしています。昭和レトロな雰囲気の漂う旅館という「昔」の空間で「目新しい」現代アートを堪能する--「かつての昔」と「新しいこれから」の空間を行ったり来たりすることで、まるでサウナで温冷交代浴をしたような“ととのう”体験をするかのように。プロジェクトを立ち上げた三谷温泉・平野屋の平野寛幸さんと、プロデューサーの藤田聖人さんに立ち上げの背景や芸術祭の詳細についてお話をうかがいました。

平野寛幸さん

1978年生まれ、愛知県蒲郡市・三谷温泉にある創業90年の老舗旅館「平野屋」四代目代表取締役社長。趣味はランニング、トライアスロン。

藤田聖人さん

防災や減災に関わる防災・通信・映像システムの構築や修理、メンテナンスを行う大藤エンジニアリング代表取締役を本業としながら、「好き」「楽しい」を軸にしたプレゼンテーションイベント「ぺちゃくちゃないと名古屋」も意欲的に取り組む。趣味は旅行、アロハシャツ集め。

平野寛幸さん

1978年生まれ、愛知県蒲郡市・三谷温泉にある創業90年の老舗旅館「平野屋」四代目代表取締役社長。趣味はランニング、トライアスロン

藤田聖人さん

防災や減災に関わる防災・通信・映像システムの構築や修理、メンテナンスを行う大藤エンジニアリング代表取締役を本業としながら、「好き」「楽しい」を軸にしたプレゼンテーションイベント「ぺちゃくちゃないと名古屋」も意欲的に取り組む。趣味は旅行、アロハシャツ集め。

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左より藤田さん、平野さん

温泉とアートで“ととのう”体験。新しい発想ですね。

平野さん(以下、敬称略):

現代アートって最初はどう見たらいいのかまったくわからない。けれど、いろいろ見ているうちに、こういうことを表現しているんだなとかユニークな価値観の人もいるんだなとか、物事を今までと全く違う目線で捉えるということを学んだんです。そして、そういう目線で旅館をみつめ直したら、なにか違うものに見えてきたんですよ。

違うものとは?

平野

旅館の古さっていうのが、非日常を求めて訪れたお客様の思い出が、塵のように積もってできた姿だと思うと、その古さも味わいになるし、古さに意味が出てくるな、と。

たしかに、古さも捉え方次第ですよね。

平野

今までは、鮑がついて何円といったように食材と金額で勝負するのが主流でしたが、アートのフィルターをかけることで、古さが新たな魅力にもなるのではないか?と。それで顔見知りだった藤田さんに相談したのがプロジェクトの始まりです。

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藤田さんには以前もイベントの発起人として取材させていただきましたね。おもしろそうだなと思う企ての裏には、いつも藤田さんがいるという…笑!

藤田さん(以下、敬称略):

平野さんから打診されたとき、自分にできることは何だろうか?と考えたのと、現代アートのイベントを作り出すことにも興味がありました。三谷温泉は高度経済成長期に父親世代が子どもたちとよく行っていた温泉地。私よりもそういったシンパシーを感じる人はたくさんいると思います。

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藤田

レジャーの多様化や景気低迷、そしてコロナが流行して、あれこれ悲しいことも大変なこともありましたが、わたしも含め生き残った人は自分の興味のあることにこれからの時間を充てるべきと思っています。で、何ができるだろうか。新しいことをするのにいい機会だと思うし、温泉地とアートが融合したらどうなるだろう?と。自分はその道のプロではないですが、幸いにもわたしの周りには多才でこれを実現できる友人知人たちがたくさん揃っているので、実現可能性があると思って引き受けました。

「ととのう温泉美術館」とは、どんなイベントなんですか?

平野:

サウナと水風呂の温冷交代浴のように、時代から取り残されたような非日常の空間「歴史ある古びた温泉街」「大型旅館」「郷愁を誘う客室」などと現代アートを行き来する体験を通して、鑑賞する人が“ととのう”芸術祭っていうのをめざしています。

藤田

現在進行形で営業をしている旅館・温泉地でこの規模の芸術祭を行うのは、日本でも珍しいと思います。

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三谷温泉にある旅館が会場に?

平野

三谷温泉の5つの旅館(ホテル明山荘・三谷温泉ひがきホテル・松風園・ホテル三河海陽閣・平野屋)が会場となります。じつは、三谷温泉の旅館が集まって何かイベントを企画するのは、私が社長になってからは初めてなんです。

藤田:

それだけに大変なこともいろいろあったよね…。

平野:

そもそも現代アートってなに?っていう旅館さんもいましたし、今ある空間、今来てくださっているお客さまが大事という思いは、やはり多くの旅館さんが抱いていて。尖ったイメージの温泉にしたくない、今とまったく違うものになってしまっては嫌だ、と。

藤田:

三谷温泉という同じ地区にあるからライバルでもあるし、みなさん個性も違えば、立地環境も違えば、やろうとしていることも違う。そんななかで違いをお互い認めながら共通のゴールを思い描いてもらっています。

みなさんの意見をとりまとめるのは大変だったでしょうね。

藤田:

もちろん平野さんの熱い想いが原動力になっているんだけど、平野さんだけでも、ほかの旅館さんだけでも、僕だけでも実現できなくて、やはりみんなが顔を突き合わせて得意を足したりしながらこの芸術祭が作られていっていると感じています。ここに至るまで苦労もあったけど、何度もフィジカルにお会いしてお話していくうちに皆さまの表情が柔らかくなってくれて…。

それはホッとしました。

平野:

三谷温泉はラグーナテンボスがすぐ近くにあるんですが、2019年に「ラグーナベイコート倶楽部ホテル&スパリゾート」が開業して。設備では勝てないわけです。これから我々はどうやって売っていけばいいのかと…。旅館らしい体験、旅館らしい心のゆらぎってどう表現できたら…という模索からもアートに辿り着いた部分があって。丁寧に伝えていくなかで、次第に前向きに捉えてもらえるようになりました。

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三河湾と山に抱かれる三谷温泉。

ほかの旅館のみなさんの思いもロゴマークに反映したそうですね。

藤田

三谷温泉を「古びた温泉地」という印象にしたくないという方も多かったので、明るい印象に調整しながらわたしの友人が作ってくれました。2色は山と海に囲まれた温泉地だということ。また、“ととのう”ための温かさと冷たさだったり、陰と陽にも見てとれるような。

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作品は何点くらい展示されるんですか?

藤田:

40組以上の作家を招いて作品を展示します。作家のみなさんには三谷温泉を訪れて、この場所の雰囲気を手がかりにしながら“ととのう”を着地点に据えて作品制作をしてもらっています。

平野屋さんを訪れて、レトロと華やかさが絶妙にマッチした内装がとても素敵だと感じます。アートが飾られるのが楽しみ。

平野:

ホテルはアクセスや設備が優れているけど、旅館はそもそも不便な場所にあることが多いし、食事時間も決められちゃうし。だから自分の心に余裕がないときしか選ばないと思うんです。アートも心に余裕がないとじっくり鑑賞できない。そこに通じるものがあるし、そんな場所だからこそ“ととのう”体験ができるのかな、と。

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平野:

また、僕の考え方かもしれないけど、旅館ってホテルと違って人と人が触れ合う場所がある。お風呂だったり食事だったり、またそこにアートが加わって。会話からなにか生まれるのも、ひとつの面白さであるかなと思います。

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平野屋の中庭に展示されている本郷芳哉さんのオブジェ。
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松風園のロビーでは小畑亮吾さんが毎日、気象庁が発表する「日没時刻」に合わせてバイオリン演奏。
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松風園の大きな窓に貼られた安田佐智種さんの作品。
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いろんなお母さんにヒアリングした「名もなき家事」が表現されています。
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ホテル明山荘付近の海に面した高台でひと際目を引く、君平さんによるプランクトンをイメージしたオブジェ。
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すき間から覗いてみると…海の向こうに竹島が見えました!

「ととのう温泉美術館」は三谷温泉アートプロジェクトの第1弾であると?

藤田:

それが理想的です。2023年の「ととのう温泉美術館」をスタートラインとして、これ以降も継続していけるようなプロジェクトにしていきたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。

(文:広瀬良子)

ととのう温泉美術館
日程2023年1月21日(土)~2月19日(日)
場所三谷温泉(愛知県蒲郡市)
ホテル明山荘・三谷温泉ひがきホテル・松風園・ホテル三河海陽閣・平野屋
時間11:00~17:00(最終受付16:30)
休館日火・水・木曜
チケット日帰り温泉入浴券付き鑑賞チケット
当日券2,000円、前売り券1,800円 ※小学生以下無料
アクセスJR「三河三谷駅」より路線バスで約7分
東名高速道路「音羽蒲郡」ICより車で約20分

ととのう温泉美術館公式サイト

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