毎月28日、朝10時から多くの人で賑わう東別院。境内には野菜やパン、菓子、珈琲などの食品からアクセサリーや雑貨、小物まで幅広いジャンルの店が並んでいます。出店数は220と愛知県内最大規模の「東別院てづくり朝市」。朝市で売られている物は、名前の通りすべててづくり。商品1つひとつにつくり手の思いやこだわりが詰まっています。店やつくり手のファンになって毎月通う人も少なくないそう。そんな朝市を楽しみに訪れる多くの人のために、「東別院てづくり朝市」は雨の日も風の日も休むことなく開催しています。2013年5月から毎月続く朝市の発起人は、愛知県津島市でオーガニックカフェ「INNUUNIQ VILLAGE(イニュニックヴィレッジ)をご主人と経営する飯尾うららさん。温かい笑顔があふれる飯尾さんに、朝市に込める思いをインタビューしました。
― 毎月多くの人が訪れる「東別院てづくり朝市」ですが、どのような経緯で始まったのでしょう?
飯尾:あま市にある甚目寺観音で毎月12日に行っている朝市がきっかけだったんです。そこに訪れた東別院の職員から、ぜひ東別院でもやってほしいと声を掛けていただきました。若い人にも気軽にお寺へ来て欲しいという思いがあったようです。真宗大谷派の宗祖「親鸞聖人」の月命日にあわせて毎月28日の開催にしました。
― 甚目寺観音の朝市も運営されているんですね。ところで、甚目寺観音の朝市はどのように始まったんですか?
飯尾:私は当時甚目寺観音の近くに住んでいて、野菜を育てながらオーガニックカフェを開いています。ある日ふらっと甚目寺観音を訪ねてみたら、毎月12日に開催しているイベントを盛り上げてほしいと頼まれたことがきっかけで朝市を始めようと思いつきました。ちょうど自分の野菜を売る場も欲しかったので。最初は私を入れて3店舗しか出店していなかったんです。知り合いに声を掛けたりSNSで発信したりして、次第に出店者とお客さんが増えていきました。今は80店舗の出店者が集まり、「甚目寺観音てづくり朝市」を開催しています。
― その後、2013年から東別院で朝市が始まったんですね! 現在は220店舗だそうですが、最初からこんなに多かったんですか?
飯尾:最初は100店舗くらいで、本堂前のメインエリアだけで開催していたんです。甚目寺観音の朝市の出店者たちが東別院でも出店してくれたので、最初から出店者もそのファンであるお客さんも多い状態からスタートできたのは幸運でした! その後、出店者のつながりやSNSを通じて出店希望者が増えていき、ついに200以上に。スペースにも限りがあるので、今は募集を行うのは年に1、2回くらい。倍率は30倍くらいになっています。
― およそ30倍! すごい競争率ですね。その中からどうやって出店者を選ぶのですか?
飯尾:さまざまな店やつくり手の方が応募してくれますが、私が判断基準にしているのは“てづくり”ということと、“伝えたい思い”があるかどうか。「東別院てづくり朝市」は、“ただ物を売りたい”という人ではなく、“お客さんに商品のことをきちんと伝えたい”“魅力を理解したうえで買ってもらいたい”という人とお客さんをつなぐ場なので、この思いに共感してくれる人に出店してほしいと思っています。今出店している方たちとも、この思いはしっかり共有できているので、朝市が活気にあふれ賑わってるんだと思います。
― 運営側も出店者も、同じ志を持った人たちが集まっているんですね。それでも、これほどの規模になると運営が大変なのでは?
飯尾:甚目寺観音の朝市を立ち上げるときから一緒の仲間が中心となり運営をしていますが、東別院や地域の方々、当日のスタッフなどたくさんの仲間たちが協力してくれてこの規模の朝市が開催できています。多くの人の力と想いが集まったことで、一人では到底なしえなかったことが実現したのです。また、小さな子供連れのお客さんや出店者が多いので、東別院の建物の中に授乳室を設けてもらえたことは本当に助かっています。
― 確かに小さな子ども連れのお客さんや出店者が多いですね。キッズスペースもあるし、ママへの配慮がすごい!
飯尾:キッズスペースでは、資格を持った保育士さんが子どもを見てくれています。彼女もイベントが大好きで、甚目寺観音の朝市からずっと手伝ってくれているんです。甚目寺観音の朝市が始まったとき、私には生後3ヶ月の子どもがいたんです。それでも朝市は続けたい。だからキッズスペースをはじめ、子育てしながら出店できる環境を整えようと思いました。そうすることで、子どもがいる出店者も無理なく仕事を続けられるかなと。
― なるほど! キッズスペースの他にも、子育てしながら続けられるように意識した点はありますか?
飯尾:まず、開催時間を短く設定していること。運営者や出店者が子どもを幼稚園や保育園に預けたり、家事・育児と両立できたりするよう10時から14時までにしました。仮に子どもを預けられなくても、出店者同士の関係がしっかり築けているので、みんなで面倒を見る雰囲気が自然とできあがっているのもありがたい。この先ママになっていく出店者にとっても、「子どもが生まれたら朝市に出られない」ではなく「子どもがいても協力しあえるから参加できる」という環境が助けになりますね。そうした雰囲気づくりをすることで、出店者が長く続けたいと思える朝市にしたいと思います。
― 10年後20年後、「東別院てづくり朝市」がどのようになっているのか楽しみです!
飯尾:私も出店者も年を取っていくから、どう変わるかわからないし、想像もできない。でも楽しみですね。今は出店の数も増えたし、毎回多くのお客さんが朝市を楽しみにしてくれているので、この状態が続けばいいなと思っています。しかし、現状維持をゴールにするのではなく、新しい取り組みに挑戦しながらより良い朝市を目指す努力も大切。そのためにも、お客さんの声を直に聞ける出店者、出店者を取りまとめる運営サイド、私が両方の立場でいたい。今も、出店者としてこだわりの調味料や無農薬有機栽培の野菜のお店を構えています。両者の視点に立って考えることで、誰にとっても魅力のある「東別院てづくり朝市」をつくり続けていきたいですね。