工業のイメージが強い愛知県ですが、実は切り花や鉢植えの生産額も全国第1位なんです。そんな日本一の花の街、愛知県東三河地方のフローリストや花の卸に関わるメンバーが集まって、2011年に結成されたのが「花男子プロジェクト」。生活の中で花に触れる機会が減っている昨今、改めて人に花を贈る文化を提案し続けています。「HANAイノベーション株式会社」の代表であり、「花男子プロジェクト」立ち上げメンバーの近藤祐司さんに取材しました。
―「花男子プロジェクト」を企画したきっかけはなんだったのでしょうか?
近藤:私は花の卸業を生業としているのですが、ライフスタイルの変化にともなって、自宅で花を飾る人が減ってきていると感じています。実際に1998年をピークに年々花の消費量が減少。そこで、業界を盛り上げられるようなプロジェクトができないかと、花の卸先である花屋さんなどに声をかけて有志を募ったのがはじまりです。
愛知県は花の生産量日本一ですが、花の消費量はそれほど多くありません。地域の人がもっと花に触れる機会を作りたいと考え、2011年11月11日に「花男子プロジェクト」を立ち上げました。
―どのような活動をされているのですか?
近藤:ミッションは「日本一花を作る町を、日本一花を贈る町にする」。 体感共有エンターテインメントと位置付けて、主にイベントでパフォーマンスをしています。会場に大きな花の束を置いて、その花を使ってパフォーマーが花束をつくる。花束を作る時間は大体1束3分です。作った花束は会場にいるご夫婦や親子など、“大切な人に感謝を伝えたい方”にプレゼントし、檀上で相手に贈っていただきます。花を贈られた方の笑顔を見て、私たちだけでなく参加者にも花のパワーを感じてもらえたら嬉しいです。
↑イベントではプロジェクトメンバーがMCも務めています。
― “花男子”ということですが、メンバーは愛知県の花き業界関係の男性の方が多いのでしょうか。
近藤:“花男子”とは、イベントに参加した方をはじめとする“花を贈る男子”のことを指しているんです。メンバーは、地元のフローリストや生産者をはじめ、花に関わる職業の方が活躍していますが、花屋でアルバイトしている大学生や花業界に関係のない職業の方もコンセプトに共感して参加してくれています。女性や子どもたちも含めると、全員で60人くらいの規模に。愛知県だけでなく全国各地で活動しているので、地域ごとに新たなメンバーも増えています。
↑豊川市のバラをはじめ、地元で生産された花で作られた花束。
―ほかにも花男子を広めるために行っていることはありますか?
近藤: 6人の花屋が花束のクオリティを競うイベント「ブーケバトル」では、地域のフローリストを紹介することを目標に。気に入ったフローリストに花束を作ってもらいたいと思ってもらうことで来店につながりました。またすべてのイベントに言えることですが、私たちは普段花束を贈られた方の顔を見ることができません。イベントで作った花束をその場で贈ることで、贈られた方の笑顔を見ることができ、私たち自身が花の力を再認識したということも大きな発見でした。ヘアショーとのコラボレーションや企業の周年イベントでのパフォーマンス披露、モニュメント制作を依頼していただける機会も増えて、プロジェクトの広がりを感じています。
↑豊橋駅で行われた「ブーケバトル」。当日発表されたテーマに合わせて5分で花束を作って、出来栄えを競う、1対1の真剣勝負。
↑弥富市で行われた「あいち花フェスタ2016」のメインモニュメントを「花男子プロジェクト」で制作。花魁への贈り物として扱われた菊と金魚を組み合わせて弥富市ならではの作品に。
―パフォーマー側にもいい効果が出ている活動の中で、印象的だったエピソードなどはありますか?
近藤:とあるイベントに親子で来ていたお客さんがいて、そのお子さんの花贈りが印象的でした。「毎日お弁当を作ってくれてありがとう」とお母さんに花を贈っていたのですが、お母さんが泣き崩れてしまって。話を聞いてみたら、お子さんがアレルギーをもっていて毎日工夫してお弁当をつくっているそうなんです。それをわかっているお子さんが感謝の言葉と花束を贈りたいと参加してくれたんです。その姿を見ていた方々やスタッフの中には涙ぐんでいる人もいました。
―じんわり心があたたかくなる素敵なエピソードですね。今後の活動予定は決まっていますか?
近藤: 2月9日(土)~11日(月・祝)の3日間、mozoワンダーシティにてフラワーバレンタインの普及を目的としてギフトの販売や、ワークショップなどのイベントが開催されます。その一環として「花男子プロジェクト」も10日(日)にステージに出演します。
2月13日(水)には豊橋駅東西自由連絡通路で「日本一の花の頂上決戦!東三河3市対抗フラワーバレンタインダービー」を開催。当日は男性限定で花を1輪差し上げます。ぜひ恋人や家族、友人など大切な方へに花を贈ってください。
―「花男子プロジェクト」が目指す目標を教えてください。
近藤:“花贈りの文化”広げていくことはもちろん、バレンタインに花を贈るフラワーバレンタインのような新しい花文化をつくることも重要だと考えています。私たちの活動は花に触れる入り口づくりという意味合いが大きいんです。体感共有エンターテインメントと言いましたが、花が人に与える力を、パフォーマンスを通して体験してもらうこともその一環。ほかにも気軽に花を購入してもらえるようにSNSを使ったサービスも計画中です。少し敷居が高く感じる花贈りを、もっと身近な文化にしていきたいです。
(文:堀 絢恵)