今まで図鑑というと、写真や図、解説文などを交えて総観的であればあるほど良いものと思われてきました。ところが最近では、定番の子ども向けの学習図鑑シリーズ以外にも、大人の知的好奇心をくすぐる、より偏執的で個性とアイデアが詰まったものがたくさん出版されています。
今回取り上げるのは、「調べる図鑑」ではなく、「新たな発見に出会う図鑑」。名古屋市港区「ららぽーと 名古屋みなとアクルス」別棟にある「名古屋みなと 蔦屋書店」書店員の木村いつかさんに、大人の知的好奇心をくすぐる図鑑を選んでいただきました。深海魚など日常でなかなか出会えない生きものの図鑑が好きという木村さん。おすすめの5冊をコメントとともに紹介します。
『ときめくカエル図鑑』
文:高山ビッキ、写真:松橋利光、監修:桑原一司(山と渓谷社)
図鑑を読む際、著者の名前を気にすることはほとんどないのではないでしょうか。そもそも図鑑に著者の個性というのは本来必要のないものなのかも知れません。しかしこの『ときめくカエル図鑑』には著者の趣味嗜好が余すことなく詰め込まれており、それがなんとも言えない魅力となっています。
著者の高山ビッキさんは、祖父の代からカエルグッズを収集するという筋金入りのカエルオタク。そんな高山さんがカエルの魅力を伝えるべく綴った本書は、図鑑的な要素を兼ね備えながらも、カエルを取り巻く文化的側面にも触れています。古くから物語の中で描かれてきたカエル。世界中で縁起物とされてきたカエル。そしてありとあらゆるカエルグッズの数々…。著者ならではの切り口から楽しむ、身近なようでまだまだ知らないことだらけのカエルワールドをぜひ本書を通して楽しんでいただきたいです。
読み終えた頃には、きっとお気に入りの一匹に出会えるはず。
『石の辞典』
文:矢作ちはる、絵:内田有美(雷鳥社)
ポケットサイズの図鑑というのは今までにもありましたが、アウトドアシーンで持ち歩くことを前提とした簡素なものがほとんどだったように思います。雷鳥社の『辞典シリーズ』は手のひらに収まってしまう小型な一冊ですが、ハードカバーの文芸書のような特別感と美しいブックデザインが印象的な、手元に置いておきたい図鑑です。
これまで図鑑は美しく解像度の高い写真であればあるほど良いものとされていましたが、『石の辞典』で紹介されている鉱石はすべてイラスト。内田有美さんの描く石は、現物の特徴を捉えながらも温かみがあり、なんだか身近に感じてくるのが不思議です。寝る前にベッドの中でパラパラとページをめくりながら、世界各地を旅した気分でさまざまな鉱石の魅力に浸ってみてはいかがでしょうか。
『神秘の昆虫ビワハゴロモ図鑑』
著:丸山宗利(エクスナレッジ)
ビワハゴロモという昆虫をご存知でしょうか?表紙に並んだその姿を見るに、蝉の仲間か、はたまた蛾の一種か…などと想像は膨らみますが、実際のところそのどちらとも違い、カメムシ目に属する昆虫。中南米やアジア、アフリカなどに生息しているそうです。『神秘の昆虫ビワハゴロモ図鑑』は日本における昆虫研究の第一人者である丸山宗利さんによる、世界で初めてビワハゴロモだけを集めた図鑑です。
謎が多く、また標本にするのもその生態ゆえにひと苦労だというこのビワハゴロモですが、その魅力は何と言ってもこのゾクゾクするほどに繊細で美しいハネではないでしょうか。ハイブランドの洋服にも引けを取らないハイセンスな配色は生息地によって全く違い、ページをめくるたびその妖艶な美に息を呑みます。おまけにこの奇妙なツノの形状。一体何の為についているのでしょう…。日常ではなかなかお目にかかれない生物に出会えるのも、図鑑の醍醐味かもしれません。
『あなたが知らないウニの世界』
著:アシュリー:ミスケリー、訳:坪田征、監訳:田中颯(ウサギノネドコ)
「自然の造形美を伝える」をコンセプトに京都と東京に店舗をかまえる店・宿・カフェ「ウサギノネドコ」。小さな店内には、植物や鉱石などを中心にさまざまなアイテムが並び、まるで博物館に迷い込んだような興奮と地球の神秘に触れるような緊張感が味わえる、知る人ぞ知る名店です。『あなたが知らないウニの世界』は、そんなウサギノネドコから発行されている、世界中のウニを集めた図鑑です。
私をはじめ多くの方がウニと言えば黒いトゲトゲした姿を思い浮かべるかと思います。しかし実際のところ、ウニは死んで時間が経つと棘が抜け落ち、殻だけが残るそう。その殻は種類によってデザインが異なり、ウニがいかに多様性に満ちた生物かということがわかります。ぜひ本書を通してまだ知らないウニの世界を垣間見てみてください。
『世界で一番美しい切り絵人体図鑑』
著:エレーヌ・ドゥルヴェール、ジャン=クロード・ドゥルヴェール、訳:奈良信雄(エクスナレッジ)
「美しい人体図鑑」とうたう図鑑は何冊かありますが、多くの人体図鑑は体の内部を繊細なグラフィックで表現されており、美しいというよりはどうしてもグロテスクな印象を受けるものが多いのではないでしょうか。
『世界で一番美しい切り絵人体図鑑』はその名の通り、切り絵の手法で人体の構造を表現した図鑑。表紙を一目見ただけで、ほかの図鑑とは違うアート性の高いデザインに驚かされます。とくに全身を描いた箇所は、消化器系、循環器系、呼吸器系、骨格系、神経系とそれぞれ繊細な切り絵で表現されたページが重なり合い圧巻!注意深くめくる必要がありますが、大人から子どもまで一緒に楽しむことができ、贈り物としてもらってもうれしい一冊です。
住所 | 愛知県名古屋市港区港明2-3-2 ららぽーと名古屋みなとアクルス |
営業時間 | 8:00~22:00、不定休 |
アクセス | 地下鉄名港線「港区役所駅」より徒歩6分 |
駐車場 | ららぽーと名古屋みなとアクルス駐車場を利用。 詳細はららぽーと名古屋みなとアクルス公式サイトで確認を。 |
問い合わせ | TEL:052-387-6800 |
「WITH FAMILY」をコンセプトに、家族で一緒に楽しめるコトや時間を提案する「名古屋みなと 蔦屋書店」。店内にはスターバックスコーヒーも併設されています。
日程 | 2月2日(水)~8日(火) |
時間 | 9:00~20:00 |
「畑で今、何が起きているのか、何が始まっているのか」という視点から、「地元生産者とつながろう!」「自分で育てて食べてみよう!」「農業の今と未来、新しい可能性」「マンガで学ぶ、楽しむ農と食」という4つのテーマを軸に、展示や体験コンテンツ、マルシェが登場。6日(日)14:00~15:00には2階エスカレーター前特設会場でタレントの川瀬良子さんも来場するトークイベントも開催!