なぜ屋久島なのか? その秘密を探しに、森の中へ
愛知県田原市の渥美半島に、屋久島のような森がある…! その言葉に誘われて訪れたのは、渥美半島で最も高い、標高327.9mの大山(おおやま)の麓。渥美半島で2017年4月に「渥美半島☆自然感察ガイド」として起業した、屋久島でネイチャーガイドを8年務めていた藤江昌代さんに森を案内してもらいます。もともと渥美半島生まれの藤江さんが、実家に帰省した際に登った大山の一部が、まるで屋久島を彷彿とさせる景色だったことから感動して生まれた、渥美半島の森トレッキング。さっそくHIROBAくんと一緒に出発!
屋久島へ移住する前は宮古島に9ヶ月住み、専門学校時代は北海道や群馬で自然にかかわる仕事を体験。東京環境工科専門学校を卒業後、屋久島のネイチャーガイドとして活動した藤江さん。3年前ほど前に再び、生まれ育った渥美半島へ。
「豚寝南口」トンネルの手前にある大山登山口より、森に入ります。森に入る前に、「おじゃまします!」と声をかける藤江さん。私も一緒に挨拶してから、いざトレッキングスタート。
渥美半島の森の、何が屋久島と似ているのか?
ポイントを藤江さんに伺うと――
「屋久島の中で世界自然遺産登録地は島の約20%。海岸部は沖縄の亜熱帯気候から、屋久島で一番高い山・宮之浦岳は北海道並みの気候。つまり、日本列島を縦に凝縮したのが屋久島なんです。それが、世界遺産に登録された要件のひとつでもあります。その幅広い植生の中に照葉樹林帯があります。私が案内する渥美半島の森によく似ているところは、世界遺産登録地にある『西部林道』の森です。秋や冬も艶やかな葉っぱが残り、細くてくねくねとした幹が視界に広がります」。
森林開発などにより失われた照葉樹林。現在は日本の総森林面積の1.2%ほどしかなく、その中をトレッキングできるのは、なかなか貴重な体験なのです。また、このコースは登山道に沿って鮎川が流れ、川のせせらぎを聞きながら歩けるのも、屋久島とよく似ているんだそう。
途中、大きな岩も!砂や泥、火山砕屑物、生物の死骸などが堆積して固まってできたチャートという岩石。歩いているとあちこちで、このチャートを見かけます。
こちらのチャートは、見ためから藤江さんが「かえる岩」と呼んでいるそう!
うねうねと幹が生い茂った、トンネルのような道も多く、野趣あふれる雰囲気も醍醐味です。
登山口から1時間ほど歩いて、折り返し地点に到着!ここでコーヒータイム。バーナーを使って藤江さんが淹れてくれたコーヒーをお供に、気分はまるで森林カフェ。川のせせらぎに鳥の鳴き声、頬をなでる心地いい風。贅沢なロケーションです!
森で出合った、植物や虫たちにも挨拶!
小さな生き物やその死骸などを餌にする雑食の「ザトウムシ」は、“森の掃除屋さん”です。「千と千尋の神隠し」に登場する釜爺(かまじい)のモデルにもなったともいわれています。
トンボの姿も!
こんな珍しいクモの巣も発見。
森の至るところにジョロウグモと、美しく張り巡らされた巣が。大きくてカラフルなメスの近くに、よく見ると小さなオスの姿も。メスとオスで体の大きさも色も全然違うんですね!
カナヘビも姿を見せてくれました。
これは山椒の葉。鼻を近づけると、爽やかないい香りがします。
ヤブニッケイは、クスノキの仲間。三行脈(さんこうみゃく)の葉が特徴で、よく見ると葉の付け根から3本以上の主脈がきれいに伸びています。この葉もちぎって鼻に近づけると、清々しい香り!
ミカン科の木の葉を日に透かしてみると、ぽつぽつとした点が。これは油点(ゆてん)。細胞の間の油です。生き物や、おもしろい植物に出合うと、「いいコ、いたね!こんにちは!」と声をかける藤江さん。森や植物、生き物に対して深い愛情を感じます。
このコースは、渥美半島の森の椿から採取した椿油のお土産付き。
今日歩いた「屋久島を感じる渥美半島の森へ」ルート以外にも、
・光岩コース(天然記念物のキラキラ光る岩を見る、運気アップコース)
・笠山コース(特殊な地質・蛇紋岩でできた岩でできた標高78mの山)
・蔵王山コース(田原ネイティブが愛する山登り)
・衣笠山コース(屋久島の西部林道に似ているコース)
・ふたつ山コース(三河湾を眺める絶景コース)
・尾村山コース(ロングビーチから水平線まで太平洋を一望)
の6つのコースで、渥美の森トレッキングが楽しめます。
屋久島好きも、屋久島に行ったことのない人も。
身近な渥美半島で、屋久島感じるトレッキングに挑戦してみてください!
(文:広瀬良子)
<取材協力>
渥美半島☆自然感察ガイド 藤江昌代さん