2017年4月にスタートした「大ナゴヤツアーズ」。個性的で、地元や得意分野への愛情にあふれるガイドと一緒にまちを歩き、新たな発見や感動を見つけることができる日帰りプチトリップです。舞台は名古屋市内および近隣エリア。まだ立ち上がったばかりながら、4月から6月までの間に31ものツアーが予定されています。「大ナゴヤツアーズ」を立ち上げ、企画しているのは、街中をキャンパスに学びの場をつくっている「大ナゴヤ大学」学長の加藤幹泰さん。“自分たちのまちを面白がる”という根っこは同じながらも、市民ボランティアが主体となってプロジェクトを起こしていく「大ナゴヤ大学」に対し、自分が選定・企画したツアーを参加者に楽しんでもらうという、別のアプローチで地域を盛り上げる「大ナゴヤツアーズ」を立ち上げるに至った経緯とは? 加藤さんに直撃しました。
― 「大ナゴヤツアーズ」の構想はいつ頃からあったのですか?
加藤:自分の頭の中に芽生えたのは2年ほど前からですね。自分が他の地域にでかける際も、ガイドブックに載っているような名所ではなくて、地元の人が行っているようなローカルな場所に行きたいと思っていて。同じように思う観光客や市民が一緒に楽しめる場があったらいいなと思ったし、自分が「大ナゴヤ大学」に携わってきて、名古屋近郊には魅力がたくさんあると感じて。人だったり、文化だったり。名古屋近郊に住んでいる人に向けても、その魅力に直接触れる機会をもうけて、何か面白いことができないかなと思ったんです。2016年11月に企画がまとまってから、2017年4月のスタートに向けて企画を詰めていき、先日無事に第1回目が開催されました。
― 第1回目は熱田神宮での開催だったんですね!
加藤:熱田神宮の旧社家の家柄である方がガイドとなり、境内を案内してもらいました。ところで、家に玄関と勝手口があるように、熱田神宮にも正式な玄関があるって知っていますか? そのときのガイドさんの話なのですが、神社というのはだいたい南側に正式な門があるそうで、熱田神宮も同様だそうです。ツアーではみんなで南門から入り、境内を歩きながら神様の種類についての話や、境内にある四季折々の植物の見どころについて、また当日結婚式が行われていたので神社での儀式についてなど、参加者のみなさんも「へぇ-!知らなかった!」と、興味津々で盛り上がりました。
― え…! 私は今まで熱田神宮に訪れる際は東側の門から入ることが多くて。知らずに勝手口から入ってしまっていたのですね…(汗)。よく足を運んでいる場所でも、知らないことってたくさんありますよね。今後もおもしろそうな企画がたくさん予定されていますが、加藤さんが企画をたてるときに意識していることはありますか?
加藤:ジャンルは線引きすることなく幅広く考えていますが、“土地らしさ”があるかどうかは重視しています。地域に根づいてきた文化と関係性のあるものを掘り起こしたい。また、ガイドに“毛穴からにじみでるような愛情”があるかどうかも大事。ガイドが心から好きだと思っていて、楽しんで案内してくれることが、ツアーの面白さを左右すると思うんです。
― 専門であるというだけでなく、愛があるかどうか。たしかに、愛を持って話してくれるのって聞く人に伝わりますよね! 内容はガイドさんと一緒に詰めていく?
加藤:そうですね。自分は専門家ではないので、まずはガイドさんにヒアリングして、自分は参加者の立場で“面白いと思えるかどうか”を判断基準に、内容を詰めていきます。例えば「陶器」という企画があったとして、陶芸体験だけでなく、「これはどこの土なんだろう?」と、採掘場所に行って土についての話を聞く内容を盛り込んでみたり。単に「楽しかった!」と終わるのではなく、その中に発見があり、まちとつながれるような接点をつくっていくことが大事かなと。
― ツアーがきっかけとなり、興味がどんどん広がっていきそうですね! 今後はどんなツアーを予定していますか?
加藤:渋いビルが大好きな女性建築士さんによる「ぶらり渋ビル散歩」なんてのもあります。一緒にまち歩きをして、“渋ビル”の見分け方を教えてもらったり、歴史的背景や手法についてなど。タイルや窓の形、フォントなど、施工主のこだわりが知られると、普段歩いているまちも発見だらけです!
加藤:そのほかにも、半田の赤レンガ建物で製造している「カブトビール」の秘話が聞けるツアーや、愛西市のトマト農家「石原農園」でさまざまなトマトの食べ比べや収穫体験ができるツアーなど、いろいろありますよ!
― 面白そうな企画ばかり! 夏以降もツアーは増やしていく予定ですか?
加藤:行楽シーズンの秋は60本くらいツアーを企画していきたいと思っています。まだ表に出せていない面白いネタが自分の中に膨大にあるし、魅力的なガイドさんも無限。名古屋近郊に「こんな場所があったんだ」「こんな歴史があったんだ」とワクワクさせられたり、興味のツボを刺激できるようなことを、どんどんしていきたいですね!
少し見方を変えるだけで、自分たちの住んでいるまちの魅力に気づけることっていっぱい。そのきっかけの種が点在している「大ナゴヤツアーズ」。“面白そう!”という自分の直感を大切に、週末気軽に参加してみては?
(文:広瀬良子)