本に携わるみんなが幸せであってほしい。 夢の始まりのフリーマガジン【読点magazine、古賀詩穂子さん】


 
生まれ育った名古屋で書店を開店したい、という夢をもつ古賀詩穂子さん。夢を叶える第一歩として昨年、書店が抱える問題や、自身の理想の書店の姿を特集したフリーマガジン「読点magazine、」を発刊しました。娯楽の多様化や、オンラインショッピングの普及などの影響もあり書店の現状が芳しくない中、書店を開くという夢に向かって幅広く活動する古賀さんにお話を伺いました。

もくじ

― まずは、古賀さんの書店や本との出会いについて教えてください。

 
古賀:子どもの頃に、家族で通っていた地元の書店が私のルーツだと思います。小学生の頃から、月のお小遣いに加えて本を一冊買ってもらえるのが、我が家のルールでした。そのため、家族そろって書店に行くのが毎月の楽しみでもあり、書店は訪れるたびにワクワクする場所でした。
 

― すてきな家族ルールですね!子どもの頃はどんな本を読んでいたんですか?

 
古賀:その頃はもっぱら少女漫画に夢中でした。中学生くらいまでは漫画家になりたかったんです。漫画の世界を通して外国やカルチャーに興味を持つようになっていきました。
 

↑本との出会いを語る古賀さん。幼少期の書店の存在が、その後の人生に大きな影響を与えたそうです。
 

― 書店での体験や漫画家への憧れが、書店を開きたいという夢に?

 
古賀:いえ、就職活動の時は漫画に関わる仕事をしたいなという程度で。第一志望は、漫画の出版社。採用には至らなかったのですが、自分はやっぱり本に関わる仕事がしたいと思うきっかけになったと思います。そして、名古屋にある出版取次(出版社と書店をつなぐ流通業者)の会社に就職しました。
 

― 書籍を流通させる仕事が社会人としてのスタート地点だったんですね。

 
古賀:初期配属された名古屋の営業では、書店を巡る仕事がメインでした。そこで、世の中には本当にさまざまな書店があることを知りました。棚のレイアウトや選本のセンスまで、一つとして同じ書店はない。そうやってできていくさまざまな書棚から本を探すときは自分だけの世界に入り込みますが一方で、誰にでも開いていて気軽に訪れることができる。プライベートとパブリックがこんなに混ざり合うスペースはないと書店に強い興味を持ち始めました。
 


↑古賀さんの自宅の本棚には、小説からアート、ドキュメンタリー、漫画まで個性豊かな本が並んでいます。
 

― なるほど!働くうちに本だけでなく書店に魅力を感じていかれたんですね。

 
古賀:多くの人が関わって本は書店に並びます。そして、本を書く人も買う人も、選ぶ人もみんな本が好きなんです。それなのに、現場の書店員さんが、本が売れないという現状に悩んで苦しんでいる姿も目の当たりにしました。
 

― 本が好きで働いている書店員さんが幸せになれていなかったと。

 
古賀:本に関わるみんなが幸せな社会を作りたい。そのためには自分で書店をやってみないと、書店の根本的な問題が解決できないのではないかと思ったのが、「書店を持ちたい」という夢の始まりです。
 


↑大好きな本に関わるみんなが幸せになってほしいと語る古賀さん
 

― 書店を始めたいと思った後はどういった取り組みしてきたのですか?

 
古賀:まずは、多く方に書店の現状や魅力について知ってもらいたいと考え、3年前から名古屋で「本屋について語ろう」というイベントを始めました。書店員さんや本にまつわる会社の方など、自分の気になる人を話し手に招いてお話を伺っています。情報を発信するだけではなく、参加者からも書店の情報をもらえる貴重な機会として定期的に続けています。
 


↑イベントを通してもっと書店に興味を持ってもらい、書店業界全体の集客につなげたいと語ります。
 

― 「本屋について語ろう」が、古賀さんの夢の土壌になっているんですね。3年間イベントを続けてこられて、なにか変化は感じますか?

 
古賀:名古屋でも、本を介した魅力的な取り組みをしている人が多くいると感じています。話を聞いているうちに“都内とは違うから”じゃなくて“意外とイケてんじゃん!名古屋”に変わり始めています。いろいろな人の話を聞くことで、気付かなかった取り組みや書店について自分の知識の幅も広げることができました。
 

― 昨年はフリーマガジン「読点magazine、」も発行されましたね。

 
古賀:手にした人が書店の存在を身近に感じ、楽しみの一つの選択肢として「書店に行く」という一つの選択肢を作ってもらえたらと考えています。
 


↑「読点magazine、」のタイトルにある読点(、)は息つぎや、アクセントとして使われるもの。書店が生活の中の「読点」のような存在でありたいと名付けたそうです 

― 夢の実現に向けて、フリーマガジンというツールを作ろうと思ったのは?

 
古賀:書店を作る第一段階で、どうして自分は書店をやりたいのか、何が障害になっているのかを整理してアウトプットしたいと考えました。また、私はこんな活動をしています、こんな夢に向かっていますと知ってもらう名刺のような役割も持たせたかったです。実際に形になることで、夢に向かって動いているんだという自信にもつながっています。
 

― そのほかに書店関連の活動はなにかされていますか?

 
古賀:「本屋について語ろう」に登壇してもらった縁がつながって、今年の春まで都内で「エディトリアル・ジェットセット」というチームで働いていました。本をふだん読まない人にもアプローチできるように、本にまつわるさまざまなイベント企画や店舗運営などをしているチームです。そのなかで私は、本屋とカフェを両立させるためのお店づくりや、ジャズと本のコラボ企画などを行なってきました。
 


↑エディトリアル・ジェットセットでは、イベントの企画から当日の運営まで幅広く携わってきたそうです。 

― 本を介した異なる文化の融合!面白そうですね。今後、名古屋で企画しているイベントはありますか?

 
古賀:千種区東山公園にある「ON READING」さんで、読点magazine、を絡めたイベント「本屋に行きたくなる企画展、BOOKSTORE IN MY TOWN」を6月24日(水)から開催します。私が思い浮かべる理想の書店の姿を10人のイラストレーターにイラストにしてもらいました。自分の夢を媒体に、書店とアートのつながりを広げたイベントです。
 


↑6月24日より開催中の「本屋に行きたくなる企画展、BOOKSTORE IN MY TOWN」の様子。 

― スマートフォンやインターネットの普及が進む中、改めて書店を構えるために考えていることはありますか。

 
古賀:たしかに書店の現状は厳しいですが、日常に書店に行くという行為を溶け込ませることができればいいと思います。例えば、毎日飲むコーヒーを買いに行く先が書店だったり、面白そうなイベントが開かれている場所が書店だったり、誰かに会いに行く先が書店だったり。そんな場所にしていきたいです。
 

― 生活の中に溶け込む書店というわけですね。

 
古賀:そのなかで、あくまでも書店としてやっていくには、訪れた人が思わず本を手にとりたくなる魅力的な棚を作らなければいけません。夢に向かう準備期間の今は、名古屋の人たちが何を求めているのか、どんなことに関心があるのかを知っていきたいと思っています。この土地のカルチャーをしっかりと吸収し、人脈を広げていくためにも、企画やイベントを仕掛けていきたい。まだまだ、スタート地点。書店を作っていく過程を次号からの「読点magazine、」で発信していきたいです。
 

 
 

(文:山田泰三)

 

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