
三重県桑名市に本店を構える「kurimaro collection(クリマロコレクション)」は、ポップでありながら、細部までリアルに再現した生きものをモチーフとしたクッキーアートを手がける店。創業から10年、1300種類以上のいきものクッキーアートを生み出し、専門家と連携してコラボ制作や、生物多様性を楽しく学ぶワークショップやイベント開催にも積極的に取り組んでいます。
その背景にあるのは、お菓子作りの枠を超えた「生きもの愛」。活動を続けていくなかで、研究者から研究意義や生態を伝える役割を求めれることも増えてきたため、大学・研究機関との共同プロジェクト15件以上、動物園・水族館との連携8件以上を実施し、研究と社会をつなぐサイエンスコミュニケーションにも取り組んでいます。
生きものの魅力を発信し続けるクリマロコレクションの活動について、広報の杉浦芽愛さんにお話を聞きました。
杉浦 芽愛さん
いきものクッキーアート専門店「クリマロコレクション」の広報担当。クッキーアートを通していきものの魅力を広めるべく、専門家とのコラボ制作、ワークショップやイベントを開催。

多種類のいきものクッキーアートの制作に加えて、いきものの専門家とのコラボも展開されていますね
杉浦さん(以下、敬称略):クリマロコレクションの根源にあるのは、クッキーを通して「生きものが好き」「その魅力を伝えたい」という気持ちです。「可愛い」だけでなく、「なぜその姿に進化したのか」「どんな環境で生息しているか」という背景や物語まで伝えたいんです。生きものを支える動物園や水族館の飼育員さん、研究者さんからお話を聞いてクッキーアートで表現することで、専門家さんたちの取り組みを、伝えられる翻訳家のような役割を担いたいと思っているんです。


翻訳家ですか
杉浦:私たちはもともと「知らなかった立場」です。だからこそ、知った時の感動や学びをわかりやすく伝えられるのではと感じています。お店でもコラボクッキーアートのポスターやポップの展示により、お客様に興味を持っていただく工夫をしています。スタッフがコミュニケーションをとることで「へー!知らなかった!」と喜んでいただける事も多々起きています。

杉浦:岐阜大学 動物保全繁殖学研究室とのコラボでは、ネコ科動物のフンから繁殖状況を解析する研究にちなんだクッキーアートを作りました。ネコ科動物は人気が高い一方で、絶滅危惧種が多く、繁殖管理が難しいグループです。同研究室では、動物のフンに含まれるホルモン代謝物を分析し、動物に負担をかけずに繁殖に向けた解析を行う研究を、全国の動物園と連携して進めています。
フンから繁殖期が分かるんですね
杉浦:フンからホルモンの変化を読み取ることで、採血と比べてストレスを与えることなく、発情期や排卵のタイミングを把握できるんです。繁殖の機会が限られる希少動物たちの命を未来につなぐ技術として注目されています。例えば、名古屋市東山動植物園では、2021・2023・2024年の赤ちゃん誕生に生かされたそうです。 科学と現場の連携によって、命のバトンがつながれていることを学び、私たちも「生きものを支える科学の取り組みを伝えたい」と考え、「フンを通じて命をつなぐ研究」をテーマに制作に入りました。
お客さんの反応はどうでしたか?
杉浦:背景や研究目的を伝えると、お客様は「フンからそんなことがわかるの!?」と驚き、面白がってくれました。クッキーアートを通して「えっ、そうなんだ!」という新たな発見になれば嬉しいですね。

ウミガメを研究する黒島研究所とのコラボクッキーのテーマは?
杉浦:ウミガメは種ごとに食性や生息環境が異なり、海の中で棲み分けながら共存しているんです。コラボクッキーでは、日本近海で確認されている6種のウミガメを制作。それぞれの特徴を表現したクッキーアートで違いを見て味わうことで、多様性への理解を促すことをテーマとしています。
また、ウミガメは卵の孵化時の温度によって性別が決まります。近年は気候変動の影響でメスの割合が増加していることが報告されていて、本シリーズではあえてメスを多めにしました。生きものの生態と環境変化の関係を知るきっかけを目指しています。

専門家とお客さんの懸け橋となるサイエンスコミュニケーターとしての役割も広がっているそうですね
杉浦:研究者さんたちも研究成果だけでなく、社会への発信やアウトリーチが求められるようになっています。専門知識を社会へ届けるサイエンスコミュニケーションの重要性が高まり、クリマロコレクションにも研究や絶滅危惧種の存在をわかりやすく伝えるパートナーとして声をかけていただく機会が増えています。

専門家の方たちとはどうやってつながるんですか
杉浦:イベント出展や店舗への来店がきっかけになることもありますし、代表の栗田が生きものの生息地に積極的に足を運んでいることから、各地で研究者や専門家の方々とのご縁をいただいています。最近では、日本動物学会など研究者が集まる場にお声がけいただくことや、専門家からの紹介も増えてきました。
生きもの愛あふれる方々が集まる場でクッキーアートを展開すると、イベント後には「どの子(クッキー)が人気だったか」「どんな面白い人と出会えたか」で、スタッフ一同いつも大盛り上がりしています。
イベントやワークショップの開催も増えているようですね
杉浦:2025年は、主催イベント「いきものラボ」を三重県桑名市の国営七里の渡し公園で開催しました。

杉浦:これまでのコラボレーションでご縁のあった専門家の皆さんにご協力いただき、来場者が専門家から直接話が聞けて、実際に生きものと触れ合い、五感で学ぶ体験型コンテンツを提供しました。幅広い層の人に環境や生態へ関心を持っていただく場になったと感じています。

杉浦:最近開催が増えているのは、生きものの生態や生息環境を調べ、クッキー缶の中に生態系を再現する「クッキー缶ワークショップ」です。

杉浦:先日は名古屋市の藤前干潟活動センターで行われた「藤前干潟生きものまつり」にて開催。参加者が干潟のいきものを観察し、生態系をクッキー缶で表現しました。現地で野鳥を観察・調査している方々のお話を聞きながらワークショップをしたことで、「生物多様性への関心が深まった」という感想をいただきました。「より深く野鳥について知る」というきっかけの場を、調査員の方々と一緒に作れて嬉しかったですね。
さらにこの夏からは体験型の新スイーツも展開するとか
杉浦:生きものと環境の関係性に着目した体験型の「いきものクッキーかき氷」「いきものクッキー鉢植えアイス」を始めます。いきものクッキーアートを選んで、その生態を調べてもらい、雪・水・森・草など環境を表現した土台に、クッキーパーツを配置していくワークショップ型のスイーツです。

杉浦:調べた和名や学名、生きものの特徴を書き込める「標本ラベル」も作りました。体験が終わっても、標本ラベルをコレクションとして手元に残していただけたら嬉しいなと思っています。
今年は創業10周年。これから挑戦したいことは?
杉浦:10周年記念として、限定のクッキーアート缶の販売や新たなワークショップを予定しています。ぜひInstagramをチェックしてください!

杉浦:7月には10周年を迎えるにあたり、研究者とのコラボレーションによる、淡水生物や沖縄・八重山の固有種をテーマにした新作も展開予定です。
私たちは、生きものを知ることが、その生きものが暮らす環境や地域への関心につながると考えています。今後も、クッキーアートやスイーツ、ワークショップ、フィールド体験を連動させながら、「もっと知りたい」が実際に生息地へ足を運ぶ行動につながる循環をつくっていきたいです。お子さんから大人まで、日常の中で生きものや環境に関心を持つきっかけを広げていけたら嬉しいですね。
| 住所 | 三重県桑名市北鍋屋町84-1 |
| 営業時間 | 9:30~17:30 |
| 定休日 | 月曜・火曜 |
| 駐車場 | あり |
| アクセス | JR・近鉄「桑名」駅より徒歩20分 |
| 問い合わせ | TEL 0594-41-5837 |























