書店員の愛書バトン。Vol.3『私の視野を広げてくれた本』5冊

 

 
書店員の愛書バトン第3弾は、名古屋市東区にある「正文館書店 本店」書店員の小山真由さんにセレクトしていただきました。自宅の本棚の大半は冒険小説とスポーツ漫画だという小山さん。「大人になってもドキドキわくわくの物語が大好きで、最近は海外小説を開拓中」とのこと。そんな小山さんおすすめの本5冊を、コメントとともに紹介します。
 

もくじ

『ベルリンうわの空』
著:香山哲(イースト・プレス)

 
旅行記ともエッセイともちがう「あんまり何もしない日々」を描いたコミック。何もしていなくても生活は続くわけで。2018年に東京からベルリンに移住した作者が独自の目線で、ドイツ・ベルリンの人たちの日常をゆるやかに綴っています。
 
作者を含め、動物ともエイリアンともとれる人々のすがたは、スタートレックの世界のようにSFチックで、コミカル。そんなかわいさのあるイラストが、温かさのある人をより人情深く、少しシュールな人たちや歴史はマイルドに、心に溶け込みます。
 
足もとに埋まっているプレートが意味すること。
街中にいるホームレスの人たち。
謎のステッカー。
ふとした時に思い出すそれらは、日本に生きる私の視野を広げてくれました。

 

『中二階』
著:ニコルソン・ベイカー、翻訳:岸本佐知子(白水社)

 
通勤電車を降り、ホームから地上に出るまでのエスカレーターの上で、私はいったいどんなことを考えているか。
 
「今日のお昼ごはん何食べよう」
「前の人の傘危ないな」
「今月のフェアの本の発注を忘れてた…」
 
数分もないこの時間にだいたいこんなことを考えているのですが、『中二階』の主人公はこの10倍、いや100倍近くのミクロ的考察を細胞分裂のように繰り広げているのです。しかもその思考は本文を飛び出し、長い注釈の中で延々と語られ…。自分が今読んでいるのは本文なのか、いやこれは前のページの注釈のつづきだ…と、途方もないような読書体験。
 
著者のニコルソン・ベイカーと、翻訳者の岸本佐知子さんの相性もばっちり。(岸本さんは、あとがきで「この本を翻訳していた期間の自分は変な人だっただろう」と振り返られていますが…)
 
ちなみにあらすじは、切れた靴紐の替えを求めて中二階のオフィスを出て、ついでに昼食を買いエレベーターで戻ってくる…というだけ。それがどうしてこうなった…!
 
帯にある「極小(ナノ)文学」代表作。空想好きにはたまらない1冊かもしれません。

 

『ジュニア版もっと知りたい世界の美術2 ゴッホとゴーガン』
監修:高橋明也(東京美術)

 
数年前、閉館間際の美術館でゴッホとゴーガンの作品展を見ました。展示が進むにつれ、ふたりが出会い、夢が広がり、そしてどうしようもない別れが訪れて…。
 
美術館に解説が展示されているものの、なかなかその場でゆっくりと読むことができず、結局家に帰ってからインターネットで調べたり、本を読んだりすることに。ゴッホは、その精神が追いつめられた時のショッキングなエピソードが有名。絵は、画家の人となりや時代背景を知ることで見え方が違ってきます。
 
この本は子ども向けのアート入門書シリーズですが、画家たちのエピソードや技法、同時代のできごとを丁寧に解説してくれます。やさしいフォントで教科書のように読みやすく、大人も楽しめるシリーズです。

 

『るきさん』
著:高野文子(筑摩書房)

どんな場所にいても自分らしく軽やかに生きている「るきさん」。仕事は在宅で、病院の保険請求。加算器を使いこなし、1ヶ月の仕事が1週間(!)で終わってしまうため、図書館に行ったり、記念切手を集めたりしています。友達はOLの「えっちゃん」。るきさんとはタイプが違うけれど、ふたりの距離感がとってもいいんです。
 
見開き2ページ完結のマンガ。スキップしているように軽やかに読み進めていくと、最後にるきさんは「とんっ」と飛び立っていってしまいます。寂しさを感じてしまいそうなラストですが、えっちゃんの一言にくすりとさせられます。
 
肩の力を抜きたいとき、目まぐるしい毎日に疲れてしまったとき。そんなときはいつも、るきさんに会いたくなります。本棚の片隅に必ずいてほしい大事な1冊です。

 

『黒ねこサンゴロウ 1 旅のはじまり』
著:竹下文子、イラスト:鈴木まもる(偕成社)

 
ひとり旅が好きな少年ケンは、お父さんに会いに行くために乗った特急列車で黒猫のサンゴロウに出会います。立って話す黒猫と電車に乗り合わせるなんて、そうそうない体験…! 最初は緊張していたケンも、サンゴロウの旅の目的が「宝さがし」だとわかると、だんだん前のめりに。
 
「いっしょに、くるかい。つれてってやってもいいぜ」
少しぶっきらぼうだけど、一本筋が通っていて、どこまでもかっこいいサンゴロウ。ケンは途中下車をしてサンゴロウの宝探しに加わります。ふたりの冒険と友情、物語の導入部分からわくわくが止まりません!
 
最後の場面であるものを手に入れたサンゴロウは、自分の過去を探るべく冒険を続けます。子どもから大人まで楽しめる「黒ねこサンゴロウ」シリーズは、1話完結で全10巻。サンゴロウの冒険にどこまでもついていきたい! 2巻以降へと、読み進める勢いがとまらないシリーズです。

 
 

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