岐阜県や愛知県に5店舗を展開している書店・カルコス。定番の文芸書や子どもたちに人気のコミックス、多彩なジャンルの専門書までを網羅する本はもちろん、文具の品揃えも豊富です。
書店員の愛書バトン連載14回目となる今回は、カルコス本店店長の松井賀津哉さんに、『明るい気持ちになれるエッセイ』5冊をピックアップしていただきました。コース料理を楽しむように、紹介する順番にもご注目!
『心配事の9割は起こらない』
著:枡野俊明(三笠書房)
まずはこの本で、こころの中のモヤモヤを断捨離しましょう。私自身の乏しい人生経験からいっても、心配というものは百害あって一利なし。…ですが、現代人はとかく疑い深いもの。なかには「心配するのが自分の仕事」だというような人にも私は出会ったことがあります。それは極端な例だとしても、きっと誰もが心配しすぎた経験はあるはずです。
『心配事の9割は起こらない』は禅の立場から説いており、やや宗教っぽさを感じるところはあるものの、こころのお掃除に役立つことは間違いありません。
『自分の中に毒を持て』
著:岡本太郎(青春出版社)
心がスッキリしたあとは、何と言っても岡本“爆発”太郎さんです。『自分の中に毒を持て』という書名はちょっとどうかと思いつつも、実はとても前向きになれる良い本です。特にその情熱的な語り口はクセになるはず。「人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に積み減らすべきだと思う」こんな衝撃的な冒頭にクラクラしない人は、きっと安全なコースを歩んでいる大人に違いありません。
安全な人生ばかり歩いていて、生きている手応えをもてるだろうか、と太郎は問いかけます。危険といえば大いに危険な教えが含まれている。でもそこがいい。あなたが“心の若者”である限り、モリモリ元気になれる1冊です。
『わたしの献立日記』
著:沢村貞子(中央公論新社)
さて、気持ちが前向きになったところで、ちょっとお腹が空いてきました。本は心の栄養などと申しますが、ご飯はもちろんからだの栄養です。だから、本と同じように、いやそれ以上に、口に入れるものには十分気を使いたいですよね。
食事はただ空腹を満たせれば良いというものではなく、季節感にも気を配りたい。著者の沢村貞子さんの女優というお仕事はそれとして、『わたしの献立日記』の献立や文章からは、日々の暮らしを味わいながら、心豊かに生きるよろこびが静かに伝わってきます。コロナ禍で再び注目を集めているのも頷ける、心和むエッセイです。
『読書について』
著:ショウペンハウエル、翻訳:斎藤忍随(岩波書店)
次にご紹介するのは、本ばかり読んでるんじゃないぞという、一風変わった(?)読書論です。「えっ、それって矛盾しているのでは…」と言いたくなったあなた。その気持ちをグッとこらえて、とにかく読んでみてください。この19世紀の偉大な哲人・ショウペンハウエルの文章は、実にシンプルかつストレート。そこまで言っていいんかいと思うところもありますが、どこか人を惹きつける迫力があります。
「本を読むことは他人の考えをなぞることであって、多読は自分の頭でものを考えることをできなくする。だから注意しなさい」とショウペンハウエルは語っています。はい、わかりました。では先生、読んでもいい本を教えてください。すると氏は「ギリシャローマの古典はいいぞ、いつ読んでも癒される」とのこと。果たしてその意図は…!?
繰り返し読む本を多く持っている人こそ、本当の読書の達人といえそうです。
『大切なあなたノート』
著:はあちゅう(祥伝社)
読書はこのくらいにして、最後は自分で文章を書いてみましょうか。でも何を書けばいいのかわからない。そんな人のために、最近おもしろい本が出たのでご紹介します。実をいうと本ではなくて、その名の通り「ノート」なのですが。ページをめくるごとに質問が書いてあります。全部で100の質問。あなたはそれに答えながら書き込んでいくだけで良いのです。
誰かに手紙を書くようなイメージで書くと調子が出てくるかもしれません。例えば、住んだことがある場所をすべて教えて。どこが一番すきだった?あなたなら何と答えますか?
もちろん、自分用とは別に、誰かにプレゼントしてもきっと喜ばれるはずです。