書店員の愛書バトン。Vol.4『あのときの感動に震える本』5冊

 

 
書店員の愛書バトン連載4回目となる今回は、名古屋駅のタカシマヤゲートタワーモール8階にある「三省堂書店」書店員の大屋恵子さんにセレクトしていただきました。ノンフィクション、エッセイ、ミステリー、短歌など幅広く好きだという大屋さん。また旅がとにかく好きで、3日お休みがあれば飛行機に乗りたくなるほど!(もちろん旅先にも本は必ず持参)。なかなか旅に行けない最近は、粘土やプラバンでブローチをつくったりなど、手芸にハマっているそうです。そんな大屋さんおすすめの5冊を、コメントとともに紹介します。
 

もくじ

『剣客商売』
著:池波正太郎(新潮社)

 
剣術ひとすじに生きるちょっぴりおちゃめな父と、いかにも体育会系の息子が江戸の悪事を斬りつける時代小説。全16巻で、さらには番外編も。「昔読んだんだけど、買う。3巻目は手元にあるんだけど…」というお客様がいて。「わかります。私も自宅に何冊も同じ本があることが…」と談笑していたら、違いました。
 
「若い頃に読んだの、親にもらって。そのときは息子の気持ちで読んだけれど、自分が親になってから父の気持ちで読むとまた違うんだよなぁ、これが」、と。読む立場によって異なる感覚を楽しんでいる、のだそうです。 羨ましくなり、その感覚が知りたくて久しぶりに読みました。 かつては息子の気持ちで、そして新たに父の気持ちで読みたくて読んだ1冊です。
 

『生物と無生物のあいだ』
著:福岡伸一(講談社)

 
美しいミステリーを読むと泣いてしまう癖があります。 本書は「生命とはなにか」という生命科学最大の問いに生物学者の福岡伸一さんが向きあう科学ミステリー。
 
科学者と呼ばれる人は一体なにを研究しているのだろう。 学生の頃理系だった頃がおこがましいほどの、文系脳の私の疑問。生物学の本だと思ったら、美しい物語であり、ミステリーだったから、やっぱり泣いてしまいました。ウロコつきで。
 
目からウロコという言葉があるけれど、 落ちたウロコの質感から色合いまでくっきりみえるように。今回、本を紹介するということで読み返したものの、やはり前とは違ったウロコが新たにポロリ。ひんやりした夏の木陰、透明に溢れる水温…。読後、そんな小さい世界を考えていたら、宇宙のことを想像していた子ども時代の空想を思い起こしました。
 

『おいしいもののまわり』
著:土井善晴(グラフィック社)

 
「本当におすすめなんですよ」 。
初めてこの本を紹介してくれたのは、出版社の営業さんでした。そうやって新しい本が書店に並べられることもあります。
 
料理に詳しくない私は、父や母に尋ねました。料理研究家の土井さんって知っている?「どっちの土井さんだ?」と父が言う。料理研究家の土井善晴さんはお父様も料理研究家。2代に渡る料理のプロフェッショナルです。 母も良く知っており、なんと私の家の家庭料理のノウハウは土井さん仕込みだという。知らずに恩恵を受けていました。
 
なるほど、読むとしっくりきます。
ごはんをよそうときはいっぺんによそわない。「そうそう」。
おかずは、おなじものをいっぺんに食べない。「そうそう」。
母は頭ごなしにしか言わなかったから、この本を読んで「だからか…」と、腑に落ちました。
 
新生活をむかえる方へのプレゼントに、よくこの本を贈ります。「なにごとも一生懸命おこなうこと。お仕事でも料理でも」。そう教えられたから。いつか、自らに馴染んで、次世代に伝わればと思い、せっせと贈っています。

 

『図書館の魔女』第一巻(全四巻)
著:高田大介(講談社)

 
鍛冶の里に生まれた少年と史上最古の図書館に暮らす「魔女」と恐れられる少女のファンタジー。最初で最後となったビブリオバトル(5分で本の紹介をして読みたくなった!という人が多ければ勝ちのイベント)に参加することになったときに選んだ、懐かしい本です。
 
どうしてもPOPに収まりきらないほどの打ち震える体験を皆さんに伝えたいけれど、どうしたら…!と思っていたときに声がかかったビブリオバトル。声をもたない少女は、古今の書物を読み、数多の言語を操る。新しい想像もつかないような言語で。この本の魅力を言葉の力を信じるすべての人に伝えたくて、5分間たっぷりと語った1冊です。
 
たくさんの人に聞いてもらって最初は声がひっくり返るほど緊張したのも、懐かしい思い出。コロナ禍で会話がシールド越しやオンライン上となり、ソーシャルディスタンスという隙間のある世界に変化した今。孤独や打開に難しさを感じたとき、新たになにかを生み出す力をこの本で思い出していただけたらうれしいです。

 

『三びきのやぎのがらがらどん』
作:ノルウェーの昔話、訳:瀬田貞二(福音館書店)

 
私が小さい頃通っていた保育園にはお誕生日会があり、その月のお誕生日の子が選んだ絵本を、保育士さんたちが大掛かりな劇でもてなしてくれるというイベントが行われていました。ほかの園から転入してきてクラスに馴染んでおらず、クリスマスの寸劇も「羊飼い①」の役しかもらえなった私ですが、その月のお誕生日が自分1人という奇跡にあやかって好きな絵本を選べることに。そのとき選んだのが、当時1番お気に入りだった絵本「三びきのやぎのがらがらどん」です。
 
三匹のヤギたちが橋の向こうにあるおいしい草場をめざし、 橋にいる恐ろしいトロルに知恵を絞り、勇気を出して立ち向かう物語。保育園のお誕生日劇では、トロルを演じた保育士さんの迫真の演技に号泣する子どもたちが続出。「おれだ!おおきいやぎのがらがらどんだ!」。大きいヤギが現れたときの興奮は、今でもこの絵本を見るたびよみがえります。

 
 

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