天然藍染めの糸を織ってバリエーション豊富な縞模様を生み出す「松阪もめん」。遡ること江戸時代。現在の三重県松阪市の辺りで木綿の栽培が盛んだったこともあり、染めを行う職人も多かったことから「松阪もめん」が生まれ、江戸庶民のファッションとして大流行するほどに! 今では「松阪木綿の紡職習俗」は、国の無形民俗文化財にも選定されています。
爽やかな藍色が夏にピッタリの「松阪もめん」の魅力を体感しに、三重県松阪市へ。
JR・近鉄松阪駅から商店街を抜けて、歩くこと約10分。かつて木綿問屋が軒を連ね、城下町の中心地だった本町に「松阪もめん手織りセンター」があります。
ここでは松阪もめんの反物をはじめ、衣類やバッグ、雑貨、アクセサリーなど、松阪もめんを使った商品がずらり。その奥に、昔ながらの機織り機があり、手織りの体験ができます。
体験は、15×20cmほどの敷物を制作する「プチ織姫体験」と40cm×1mほどの反物を制作する「1日織姫体験」の2種類。今日は、初心者向けの「プチ織姫体験」にトライ!
320本もの経糸(縦糸)に、杼(ひ)に巻かれた緯糸(横糸)を通したら、筬(おさ)でキュッと押さえつけます。
足元にある踏木(ふみき)を左右それぞれの足で1回ずつ踏んで経糸の上下を交代させたら、再び杼を通します。
これを何度も繰り返して、生地を作っていきます。
手と足を交互に使う作業。うっかりすると順番を間違えそうになるので、ひたすら集中。慣れてくると次第にリズミカルになり、トン、トンと軽やかな音が心地よく響きます。
初心者の私は、ここまでくるのに集中して30分ほど!
松阪もめんの縞模様はこのようにして生まれているんだな~と、体験しながら感慨深い気持ちに。また、近くで見るほどに、模様の美しさに魅了されます。
敷物が完成!
この縞模様以外にも、経糸と緯糸の組み合わせで縞柄のバリエーションはとっても豊富。近くの機織り機を見てみると、経糸の配色だけでもさまざま。
さらに奥では、経糸を準備している様子も見られました!
「松阪もめん手織りセンター」では、(江戸の)安政期・江戸末期・明治時代の松阪もめんの縞帳も展示。とっても貴重な資料です。
色も模様もさまざま。昔の人も自分好みに模様をチョイスして、オシャレを楽しんでいたんですね! 糸は藍のほかにも草木など、すべて天然の素材で染められているんだそう。
体験では織りやすい太糸を使いましたが、細糸を使った暖簾や扇子、ストールなどの商品も店頭に展示されていました。
細糸を使うと、透けるような風合いが素敵!
経糸と緯糸の組み合わせだけでなく、糸の太さによっても表情がさまざまに変わりますね。松阪もめんの魅力、とっても奥深いです。
体験後は近くを散策することに。「松阪もめん手織りセンター」の近くには松坂城跡があり、この辺りはかつて城下町として栄えていたようです。
松阪屈指の豪商であった長谷川治郎兵衛家の本宅「旧長谷川邸」。国の重要文化財にも指定されている建物で、土・日曜、祝日は建物内や庭園も見学できます。松の形ひとつとっても美しい!
高い石垣がそびえる「松坂城跡」を少し過ぎた辺りに、石畳の風情ある小路を発見。
石畳の両側には美しく整えられた槇垣と武家屋敷が並ぶ「御城番屋敷」。松坂城を警護する武士とその家族が住んでいたそうで、現在も佇まいがそのまま残り、屋敷内を公開している1軒を除き、子孫の方が住まわれているようです。歩いていると、タイムスリップしたかのような不思議な気持ちに!
城下町には、そのほかにも飲食店や、街歩き用に松阪もめんの着物がレンタルできるスポットも。松阪もめんの魅力に触れつつ、松阪の街もぶらり歩いてみてくださいね!
(文:広瀬良子)