インタビュー・ひと

「こんなことしたらおもしろいかも!」を実現した人、また、東海エリアに新たな息を吹き込んだ立役者となる『仕掛け人』にインタビュー。仕掛け人の存在や想いを知ることで、イベントや場所がよりイキイキと目に映るはず!


 
御在所岳を間近に望むことができ、青々と茂る木々と澄んだ空気に癒される、三重県三重郡菰野町。豊かな自然を愛でながら、近鉄・湯の山温泉駅から車で5分ほど走ったところに、まるでヨーロッパの絵本に登場するような三角屋根の家屋と花々が鮮やかに咲き誇るナチュラルガーデンがあります。「メイガーデンズ」代表取締役・柵山直之さんの、事務所兼ガーデンです。造園業を営みながら、“ガーデニング主義者”として名古屋市内でユニークなプロジェクトをいくつも手掛ける柵山さん。花のある暮らしを提案する柵山さんが描く、幸せな未来とは。ガーデンへ赴き、取材しました。
 

↑ ガーデンの中でひときわ目を引くこの木。よく見ると1本ではなく、5本の木が1本に見えるように剪定されている。柵山さんは少年のような遊び心を大切にする人だ。
 

― ここへ来ると、柵山さんが菰野町での郊外生活にこだわる理由が分かる気がします・・・ほんとうに穏やかな気候ですね。

 
柵山:夕方になると、家の前に野生のシカやイノシシ、キツネが集まってくるんですよ。僕は長野県松本市の出身で、会社員時代は名古屋にいました。だから初めて目の前で野生動物を見たときは「エラいところに来てしまった!」と思いましたね。ほら、このへこみ。なにかの足跡がある。
 

 

― 本当ですね!ガーデニング好きな人はいるけど、ここまで自然と調和したガーデンは珍しいですね。

 
柵山:僕はガーデナーですが、植物に囲まれた暮らしを実際に営みながら、体験者としてその良さを伝えていきたいと思っているんです。かつて、うちの子どもと一緒に「100種類の葉っぱを描こう」と目標設定をしました。それで、庭に出て葉っぱを観察することにしたんですが、この庭だけで、雑草も含めて本当に100種類あったんです!自然と調和した庭ならではの、感動体験でした。
 

↑ 三角屋根で、煙突があり、中央に入口がある、絵本に出てきそうな夢いっぱいの家。庭と一体となって、すてきな空間を演出している。
 

― 柵山さんの庭づくりのコンセプトは「雑草が絵になる庭づくり」なんですよね。

 
柵山:はい。僕、服で言えば白シャツにデニムみたいな庭が好きなんです。飾らないけどいい雰囲気、と言いましょうか。そんな、親近感のある雑草ですが、生態系の維持には大きく貢献している。すごいことですよね。だから農薬を使わず、雑草を生かしたオーガニックガーデンを手掛けるようになりました。
 

 

― 除草剤を使わず、雑草をすべて抜いてしまうのではなく、ありのままを生かしたガーデンなんですね。

 
柵山:ありのままを生かす庭づくりは、生物が幸せにいのちを育む世界をつくるということでもある。それって効率化・スマート化する社会の中で忘れがちなことで、これから人間たちが向かうべき方向なのかもしれないと考えています。それで、ガーデニング啓発活動をスタートしました。
 

― 活動のひとつである「トラックガーデン」は、トラックの荷台に庭を積んで名古屋駅や栄を走るという、まさに“ゲリラガーデン”ですね。

 
柵山:業務用トラックの荷台を庭にして、好きな場所へ移動しています。信号待ちの道路でさえも、たちまち庭空間にしてしまう試みです。初めてトライした時、稲沢市からスタートして名古屋駅で女の子3人組に「これ、乗ってもいいの?」って声をかけられたことで調子に乗って(笑)、栄の大津通まで移動。三越前では若いカップルからお年寄りまで、本当に多くの方が「乗りたい」と言ってくれて。その反響が嬉しくて、今は同業種の仲間にも声をかけて一緒に普及させています。また、トラックガーデンの活動が発展して、ノリタケの森で実施されるゴールデンウイーク恒例のガーデンイベントになりました。「森のピクニックガーデン2018」では、トラックの上でライブもしたんですよ。2019年も参加を予定しています。
 

↑ 【左】2013年 名古屋市・栄を走るトラックガーデン/【右上】2016年 名古屋市・ノリタケの森にて。楽しそうに庭となった荷台に乗る子供たち。/【右下】2018年5月 ノリタケの森「森のピクニックガーデンにて」。フォトスポットとして毎回人気。
 

― 柵山さんは、事務所兼ガーデンづくりも、ゲリラガーデンも、一般的に大人であれば諦めそうなことを、諦めず実現されていますね。どうして多くの大人が描いただけで挑戦しないことに、体当たりで挑戦できるんでしょう。

 
柵山:かつて会社員として、花を使ったディスプレイなど植物全般に関わる業務を担当していたのですが、仕事に疲れて体調を崩してしまったんです。そこで息抜きをしようと、イギリスを旅しました。日本って、雑誌や広告に使われている写真の方が現実よりも美しいことがほとんどだけど、イギリスのイングリッシュガーデンを見て、度肝を抜かれたんです。そこには、絵本以上の世界が広がっていた。そのとき「もっとトライしていいんだ!」という前向きな気持ちと、「世界は本来、もっと美しいはず!」という強い探求心が芽生えました。帰国後、会社を辞めて独立。独立後に東日本大震災、原発事故があって、みんなが信じてきたことが覆されることってあるんだな、と強く感じました。だから、これまでの園芸やフラワーコーディネートを別の立ち位置から捉え直そうと思いました。植物もきれいに咲かせて終わりじゃないかも、って。それでいろいろと挑戦を始めました。
 

 

― 2018年春からは名古屋・星が丘テラスで「星のガーデナーProject」もスタートしましたね。

 
柵山:市民の方が庭づくりや維持管理を学びながら体験できるコミュニティガーデンです。無農薬で花壇管理をしながら、養蜂体験もでき、生態系を肌で感じることができます。実習場所が、星ヶ丘という街の景色となって残っていく。募集をかけてから3日で定員に達してしまったので、嬉しい限りです。街に植物が増えると、犯罪が減るという統計もあります。社会問題を植物と結び付けることで、今後解決できることがあるかもしれない。僕はこれからも、職業はガーデナー、自分自身は“ガーデニング主義者”として、世の中のあらゆる場面に植物を介在させて、社会のための挑戦を続けていきたいと思っています。
 

 

 
 

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