インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

前編はこちら
 

 
サイダーの瓶を再生して、美しいガラスの器へとよみがえらせている「でく工房」。透明なようでありながら、よく見るとほんのりラムネ色を帯びたやさしい風合い。沖縄でガラスづくりを学んだ後、2010年に生まれ育った三重県伊勢市二見町へ。素材となる瓶集めから窯の温度管理、形成、仕上げまで、真摯にガラスと向きあう中村一也さんのもとを訪ねました。後編では、工房でのガラスづくりに密着します。
 

瓶を砕いて、材料を準備するところから

 
工房で目に飛び込んできたのは、大量の瓶。これは、中村さんが瓶を扱う業者や店を訪ね歩いて、仕入れ先を確保したのだとか。集めた瓶を砕いて材料を準備するところからガラスづくりは始まります。
「午前11時頃から制作が始められるよう、砕いた材料を窯の中で溶かしておきます。窯の中の温度は1,000度以上。冬場は暖房いらず、夏場は桶に張った水に入りながらの作業です。窯に負担がかからないよう、毎日窯を稼働させています」。
よっぽど何かない限り、作業をしない土日も工房を訪れ、窯の様子をこまめに確認するのだそう。
 

↑分業が多いガラスづくりの世界ですが、中村さんは昔ながらの窯を使い、すべて1人で作業を担っています。
 

↑再生ガラスとして利用しているのは伊勢で販売されている「真珠塩サイダー」と「復刻エスサイダー」の2種類。
 

↑瓶を砕くときは破片が飛び散るため、目を防護するメガネが必須なんだそう。
 

吹き竿から伝わってくる感触を頼りに

 
ガラス制作で難しいのは、温度が高すぎるために手で触って状態を確認したり、調整したりできないところ。窯を同じ温度にしていても、ガラスが柔らかい日もあれば硬い日も。中村さんは吹き竿から伝わってくる感触や巻き取ったときのガラスの動き、色から瞬時に判断して、吹き方を変えているんだとか!
 

↑吹き竿を窯に入れて、ガラスを巻き取ります。
 


↑吹いて成形し、道具を使ってモール模様を施します。
 


↑さらに形状を整えていき、10~15分程で形に仕上げます。中村さんが使用しているガラスは冷めるのが早く、冷めると固まってしまうため時間との勝負!
 

最も大事なのが、“ゆっくりと冷ます”こと

 
ガラスづくりにおいて、最も大事なのが徐冷。成形したガラスの器は、その時点で600~700度。急に冷めると割れてしまいます。そこで、520度程に設定した徐冷窯に入れて、翌朝6時半まで約12時間ゆっくりと冷ますのです。徐冷窯は朝になると180度程に。毎朝5時前には工房に来て、徐冷窯を少しずつ開けて温度を下げながら、6時半までにはすべての器を取り出します。そして再び火をつけて、その日の夕方に仕上がった器を入れられるよう準備をしておくのです。
 

↑吹き竿から外した際に底についたポンテをバーナーで平らにしてから、徐冷窯でゆっくりと冷まします。
 

↑できあがった器がこちら。
 

↑ヨーグルトやかき氷などに使っても爽やか!
 

↑器やコップのほか、一輪挿しなども。素朴でやわらかい雰囲気の佇まいです。
 
日によって制作時のガラスの状態は異なるものの、仕上がったときにサイズや形状にブレがないようにするのが中村さんのこだわり。「その難しさがおもしろくもあり、やりがいでもあるんです」と話します。
毎日全力でガラスと向き合い、今できる最高のものを作り上げること。未来はその積み重ね。そんな気持ちで真摯に仕事に打ち込む中村さんの手から今度どのような器が生み出されていくのか、楽しみです。
 
(写真:西澤智子 文:広瀬良子)

 
 

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