インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

 
そのタオルを手にとったとき、そのスウェットを羽織ったとき。あまりに柔らかい感触とふんわり浮くような軽さに驚かされます。三重県三重郡川越町で唯一無二のコットンを手がける株式会社スマイルコットンによる、オリジナルブランド「HAAG(ハーグ)」。柔らかさ、軽さの秘密は、社名でもあるコットン“スマイルコットン”。その秘密に迫るべく、製造現場を訪れました。
 

父がつくった生地を原型に、ブランド化

 
話を伺ったのは、スマイルコットン代表取締役社長の片山英尚さん。祖父が戦後にタオル業を営み、紫綬褒章を受章したことも。その後を継いだ父が、海外にできないものづくりをしたいと、オリジナルのコットンを試行錯誤して開発。これが“スマイルコットン”の原型となります。サラリーマンとしてアパレル系の商社で15年働いた英尚さんは、スマイルコットンをブランド化し、生地の企画や開発、営業。さらにはスマイルコットンの生地を使用したアパレルブランド「HAAG(ハーグ)」を立ち上げました。
 

↑スマイルコットン代表取締役社長の片山英尚さん。現在は、製造は名古屋市と一宮市にある外部の協力工場で行なっています。
 

スマイルコットンの軽さと柔らかさの秘密は…

 
英尚さんの父が45年前につくったオリジナルのコットンが原型となり、20年ほど前にブランド化したスマイルコットン。その柔らかさと軽さの秘密は、糸にあります
糸は本来、「わたの繊維」を撚ることによってつくられます。スマイルコットンは、この撚りをほぐして「わた」のような柔らかい風合いにし、糸を構成する繊維の間に空間を生み出すことで、ふんわりと軽い着心地や肌触りを実現。撚りをほぐしているから、何度洗っても、生地が固くならず、柔らかい着心地が続きます。そのうえ、保温性や吸湿性も高いのだそう。
 

↑左がスマイルコットン、右が一般的な綿天竺の生地をほぐしたもの。同じ10gでも、繊維の間に空気を含むスマイルコットンの方が、ボリュームがあります。
 

↑ほぐしてみると…、撚ってあったときの繊維のちぢれが残っています。これにより繊維に空気が含まれます。
 

肌に直接触れるものだからこそ

 
「自分がまだサラリーマンをしているときに、父親宛てに『ゆっくり眠れるようになりました』『赤ちゃんが泣かなくなりました』『肌を掻かなくなりました』などの手紙が届いていて。当時は肌着の重要性をそこまでわかっていなかったのですが、たまたま人からもらった肌着を身に着けたときに、肌着の生地の大切さを実感しました」と片山さん。
世の中で求められるものをつくりたい”という強い思い。けれど、スマイルコットンをつくるには、大変な労力が伴います。
 

 

↑天竺や肌着用の機械が揃う愛知県一宮市にある編み立て工場「今枝メリヤス」。
 
「今枝メリヤス」では、スマイルコットンをはじめ、糸を編み立てて生地に仕立てるところまでを手がけています。セミジャガードなど生地の模様には、大きな機械の針を手作業で1つひとつ設定。また、一般的なコットンより柔らかいスマイルコットンは、絡まったり切れたりしないよう、とくに気を遣うのだとか。工場での作業は6:00~22:00頃まで。スマイルコットンに限らず、少しのミスが致命傷となるため、常に細心の注意を払っているのだそう。
 
「丁寧に一生懸命に良い仕事をしても、繊維の世界はkgあたりいくら、で片づけられてしまう。デザインも色も着心地も、すべてが機能であり、そこに価値があると思うんです。きちんと価値をアプローチするような売り方で、工場で働く人やその家族、ものづくりの現場を守っていくことも自分の仕事だと思っています」と片山さん。
 

↑「今枝メリヤス」の今枝靖久さんとの会話の中からも、新しい生地のアイデアがどんどん広がります。
 
後編記事では、今枝メリヤスと同じく、スマイルコットンを支える染工場の現場に潜入。また、スマイルコットンの生地を100%使用したアパレルブランド「HAAG(ハーグ)」の魅力に迫ります。後編記事は10月21日頃アップ予定。

 
 
(写真:西澤智子 文:広瀬良子)
 
 

SHARE

  • Facebook
  • Twitter
pagetop