体験

「しょく」=食、職、触。さまざまな情報を手に入れることがたやすくなった今の時代においても、生の体験、実際に自分の手で触れることを大事にしていきたい。1人でも、友人やお子さんとでも。「触れる」魅力を宝物に。

着物の生地に小紋や柄を染める際に使われる三重県の伝統的工芸品「伊勢型紙」。加工した和紙に彫刻刀で丹念に図柄を彫って型紙を制作。その技法は卓越した技術と根気、忍耐を要します。そんな職人魂が息づく伊勢型紙を使い、はがきに版画を施してみました!

 

 
足を運んだのは、伊勢神宮の外宮と内宮を結ぶ「月読宮」の向かいにある「伊勢 つくしや」。型紙を想起させる看板が素敵です。お店には、カフェ「まめく」も併設していて、豆腐を使った食事メニューがたくさん。体験前後にほっとひと息してみても良さそうです!

 

 

↑店内では、はがきや伊勢型しおりなども販売されています。

 
教えてくれるのは、「伊勢 つくしや」のオーナーであり、伊勢市生まれの版画家・古川泰九さん。近年、写真の発展により版画に関わる職人が減少。そのため木版を手に入れることも困難になってきたのだそう…。そこで古川さんは、伊勢型紙を木版の代わりに使った独自の版画作品を制作。店頭で販売するほか、版画体験教室を開催し、その魅力を多くの人に伝えています。

 


 
さっそく版画体験へ!使用する伊勢型紙は、薄い美濃和紙を重ね、“柿渋”と呼ばれる塗料につけた茶色い紙です。柿渋とはその名の通り、渋柿から搾った果汁を発酵し、熟成させたもの。柿渋をつけることによって、強度が増すのだそう。
 


↑柿渋で茶色く染まった美濃和紙。
 

 
さまざまな柄の伊勢型紙から好みのモチーフを選びます。紅葉や朝顔などの植物のほか、ツバメやトンボ、カエルなどの生き物まで!
 

 
冬が楽しみになるような、雪の結晶をチョイスしました。
 
版画に使う“顔料”は好きな色をつくります。天然の原料を小さな粒状に砕いた膠(にかわ)と、絵の具を混ぜ合わせます。
 
画筆の顔料は、よ~く水気を落とすのがコツ!余分な水気があると、型紙の下に染み出してしまいます。
 


 
まずは練習からスタート。
 
ポイントは型紙の絵柄によって、力の加え方やハケの使い方を変えて、それぞれのモチーフに合わせて、絵柄の持つ世界観を表現すること。例えば金魚の絵柄なら、ヒレの部分は力を加えずに色を薄くして浮遊感を。雪の結晶は、あえて濃淡をつけて遠近感を演出します。

 

いよいよ本番。伊勢和紙のはがきに転写!

 

 

はがきは“伊勢和紙”を使います。はがきのどの場所に絵柄を入れるのかも自由でドキドキします!型紙の位置を固定して3色以上を重ねて刷る「多色刷り」とは違って、「単色刷り」はひとつの型紙で好きな場所にデザインできるのが魅力です。
 
古川さん:人それぞれのセンスで自由にレイアウトできるのが単色刷りの良いところ。このはがきは、世界にひとつだけのオリジナルです。

封筒にもかわいらしいモチーフを!

 

 
はがきだけでなく、封筒にも風情ある絵柄を転写できます。かわいらしくデザインしたあとは折りたたんで封筒の形に仕上げます。
 

 
封を開けたときにも、舞っている雪でほっこりした気持ちになってもらえるよう、中にも雪の結晶をちりばめます。
 

 
“自分の作品には自分の判を押す”と古川さんの教えに基づき、はがきに自分の頭文字の判子をつけて完成です!
 
今回は伊勢型紙版画を体験しましたが、「伊勢 つくしや」では型紙となる「型地紙」を彫る体験もできます。これからの季節、年賀状や寒中見舞いなどにもぴったり!
オリジナルのはがきで、大切な人へ一筆したためてみてはいかがでしょう。
 
 
(文:壁谷 雪乃)

 

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