インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

寒い冬に、杖を持つ手が冷えないように。また、杖を少しでもおしゃれに持てるように。そんな想いから、名古屋市守山区大森で生まれ育った幼馴染の3人が“TEAM OHMORI(チームオオモリ)”を結成して、プロダクト開発に挑んだのが、杖の持ち手に装着するカバー「care pocket(ケアポケット)」。
 
メンバーの1人、リハビリテーションの専門職となる理学療法士の野田将嗣さんに開発秘話をお伺いしました。
 

医療現場×デザイナー、それぞれの視点で

 
TEAM OHMORIは、野田さんのほか、都内の総合病院に勤務するリウマチ膠原(こうげん)病科医師の森達男さん、家電メーカーに勤務するデザイナー三宅諒さんの3人。幼稚園や小学校からの幼馴染だという3人が食事を共にしていたときに、プロダクト開発の話が持ち上がり、その3ヶ月後に行われた福祉用品のデザインコンペで優秀賞をもらったことで、開発に拍車がかかったのだとか。
 

↑教育機関で専任講師として勤務する傍ら、地域の医療センターのリハビリテーションにも関わっている野田さん。
 
 

開口部や、生地にこだわりを

 
医療現場で働く野田さんと森さん、デザイナーの三宅さんが、機能性とデザイン性の両軸の視点から開発した「care pocket」。
 
機能性のこだわりは、まず、手を入れる開口部の角度や幅。転倒リスクを避けるため、転倒しても急に手が出せるよう広めの幅に。そして、体より少し前につき、1歩踏み出した後は杖が体より少し後ろにいくという杖の動きにもスムーズにフィットするよう、最適な幅と角度に仕上げたのだそう。
 

↑開口部の幅や角度は、医療現場で実際に患者さんに試してもらいながら試作を重ねたそう。
 
外側はジャージー素材、内側はフリース、そして実はその中にダイビングスーツなどに使われるゴム生地を挟んであり、3層構造に。保温性に加えて、防風・防水効果が高いゴム生地。手を入れると、ふんわりとしたフリースの肌触りが気持ちいいうえ、心地いい温かさに包まれます。
 
「冬は手袋をつけて杖を使う人が多いんです。手袋だと持ち手が滑るのも危ないし、手袋に厚みがあるから、素手より強く握らないと固定がきかないんです。リウマチ専門の森の視点でいくと、変形を助長することになっちゃうのでリウマチの人にはあまり強く握らせたくない。また、リハビリの観点でも、たとえば半身麻痺の方が手袋をつけるのって難しいので、そういうときにもカバーがあるといいなぁと」。
 

↑care pocketはグレー、ワイン、ネイビーの3色展開(写真はワインとネイビー)。10,000円(税別)
 

3層構造にすることでの苦労も

 
3層構造で中にゴム生地を入れることで、製造での苦労も。「見た目にハリをもたせるため、生地の厚みにもこだわりました。ゴム生地でいうと、最終的には2㎜に。5㎜だと分厚くて縫えないし、1㎜だと経年変化でつぶれていきやすい。縫製には特殊ミシンでないと縫えなかったのですが、特殊ミシンでもゴム生地が挟んであることにでたわんでしまい、縫いにくかったり…。工場探しには苦労しました」。
 

 

↑内側のベルトを杖の持ち手に引っかけ、カバー下部のベルトを留めて杖と固定させます。
 

使いたくなるプロダクトに向けて

 
高齢者の中には、「年寄りっぽく見えるから」と、杖を使うことを敬遠する人も。care pocketは、杖を杖らしく見せているもの(=持ち手)を覆うこと、そしてその覆いを曲線にして杖と一体感をもたせることで、杖を持ったときの佇まいをスマートに。「医療現場にいる僕と森だけで考えると機能性を先に求めてしまい、後からデザイン性を足すのって難しい。最初から機能性とデザイン性の両輪で考えていけるのが、チームオオモリの良さだと思うんです」。
 

↑TEAM OHMORIの3人。左から野田さん、森さん、三宅さん。
 
業種間を超えたTEAM OHMORIのおもしろさ、そしてcare pocketのアイデアの魅力がかわれて、アクティブシニア向けブランド「カインドケア(リンク貼る)」から商品化に向けてサポートしてもらい、チーム結成から2年の時を経て2019年11月に商品化。
「まずはcare pocketを多くの方に知ってもらえるよう頑張りたい。そして、機能性とデザイン性を兼ね備えた、ちょっとした工夫で“使いたくなるプロダクト”になるようなものを、これからも開発していきたい」。
 
初めてのプロダクトがこの冬晴れて商品化となり、新たなスタート地点に立ったTEAM OHMORI。夢はこれからもまだまだ広がっていきそうです。
 
 
(写真:西澤智子 文:広瀬良子)
 
 

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