インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。


後編はこちら→ふとん職人の伝統技術が詰まった、スタイリッシュなくつろぎアイテム【KYO-SOKU】後編
 
江戸時代からの技術を引き継ぎながら、綿打ちから販売まで一貫したふとんづくりを極める「丹羽ふとん店」。4代目の父 正行さん、5代目拓也さんともに寝具製作技能士一級の資格を持ち、ふとんのオーダーは3年待ちとのこと。5代目の丹羽拓也さんは新しいくつろぎの道具「KYO-SOKU(キョウソク)」を開発し、LEXUS NEW TAKUMI PROJECTで数多くの応募から選ばれた匠の一人です。ふとん職人の技を守りつつ生み出す、時代に合わせた“心地いいプロダクトづくり”の話を伺ってきました。
 

↑「KYO-SOKU」のカバー生地には、「尾州織物」を使用。
 

老舗ふとん店のものづくりへの想い

 
明治時代から、綿をやわらかくする技法「綿打ち」を生業としていた丹羽家。綿打ち職人から数えると4代目となる父 正行さんとともに、布団づくりや販売を行っているのが、5代目の拓也さんです。布団づくりに欠かせない「心地よさ」を、デザイン・物語・使い方など多方向から追求し続けています。
常日頃、探求心を忘れない拓也さん。偶然新聞で見かけたLEXUS NEW TAKUMI PROJECT
に応募したところから、「KYO-SOKU」は生まれました。
 

↑名古屋市熱田区にある「丹羽ふとん店」。布団店の入りにくさを覆したかったというシックな外観で、2階が工房です。
 

ふとんの枠組みにとらわれない、“心地よいプロダクト“を

 
「KYO-SOKU」の開発は、ふとん職人としてのスキルを生かしながらも、時代に合わせたプロダクトづくりを意識して進められました。
「自分の生活の中に入ってきた時に、違和感のないものを作りたかったんです」と拓也さん。
大きさも3種類。大サイズはリビングでテレビを見るときに使ったり、中サイズは車内に運んでリラックスしたり。さらに、持ち運びやすい小サイズは、オフィスでの休憩時間のお供にぴったり。「どんなシーンでも“心地よさ”がキーワードだと思っています」。
 

 

↑くつろぐ空間のテイストを選ばないデザイン。
 
「KYO-SOKU」は最終形に至るまで、相当な苦労があったのだとか。「敷布団と同様、体を支えることが目的なので、柔らか過ぎずしっかりとした感触になるようブレンドした綿の詰め方も特殊。一見変哲のない四角い形に仕上げるのも、実は至難の業なんです。さらには見た目の美しさを叶えるため、大きさや縫いの処理の仕方、装飾まで何度も試して悩みました」。その中で、デザインのきっかけのひとつとなったのが、有名デザイナーの言葉。「サイドの縫い合わせ部分を持ち手にしたら?と、手に持ってみせたんです。それ意外といいなと」。持ち手部分の強度を増やすため、さらなる改良が続けられました。
 

↑重ねた苦労が見えないものづくりがいい、と語る拓也さん。
 

↑持ち手があることで、より持ち運びがしやすくなり使用シーンも膨らみました。
 

新しいものづくりは、今までの知恵の積み重ね

 
苦悩した縫い合わせ部分がポイントなのかと尋ねると、拓也さんはいえいえ、と笑います。
「よく言われるんですけど、職人の立場からすると全部がポイント。3種類をブレンドした綿の量や程よい硬さを保つそば殻の入れ方、縫製も。すべて、今まで積み重ねてきた知恵と技術があって出来上がっています。さらには、外部で得た感性も含めて、すべてが大事なんですよ。」
 

↑正行さん(左)とは、今でもお互いに仕事のやり方を切磋琢磨しているのだそう。
 
「KYO-SOKU」には、一級技能士のふとんづくりの技術が生かされてます。特に最終縫製の部分に用いられているのは、「掻巻(かいまき)」と呼ばれる袖が付いた着物状の寝具の技法なんだとか。「難しく作りすぎた一品ものではプロダクトとして成り立たず、芸術作品になってしまう。見た目ももちろん大切ですが、ある程度量産できる作り方、フォルムでないと意味がないのです」。
 

↑細かなところまでふとん職人の技が生きています。
 

日本ならではの文化と言葉を使って

 
「KYO-SOKU」という名前にも、伝統を守る丹羽さんらしさを感じ取ることができます。江戸時代に使われていた、肘を休める「脇息」という床座文化である日本ならではの道具。もたれかかって体を支えるというところでは同じ役割を持っています。「ただ単に名前を付けるより、日本の伝統的な言葉を使いたかったからね。大きさもちょうど脇息のサイズなんですよ」。そう語ってくれたのは、拓也さんとともに開発に努めてきた正行さん。「時代とともに減ってしまったふとん屋の中で、残っていくにはそれなりの工夫と知恵がいるんです」。
 

↑製綿から行うのが丹羽ふとん店の強み。綿栽培の現地まで足を運ぶこともあるといいます。
 
伝統技術とオリジナリティーをうまく組み合わせ、時代に合ったプロダクト開発や伝え方をしていく拓也さん。後編では、「KYO-SOKU」の原点となるふとんづくりの様子を見ていきます。

 
 
(写真:朝野耕史 文:佐藤奈央)
 
 

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