インタビュー・ひと

「こんなことしたらおもしろいかも!」を実現した人、また、東海エリアに新たな息を吹き込んだ立役者となる『仕掛け人』にインタビュー。仕掛け人の存在や想いを知ることで、イベントや場所がよりイキイキと目に映るはず!


 
愛知県豊橋市を拠点に活動する石松チ明さんが手がける“不美人画”は、物憂げでブスッとした表情の女の子が印象的です。その独特の世界観に引き込まれます。検察官を目指していたという彼女が、“不美人画家”として活動するようになった経緯や、これからの活動についてインタビューをしました。

― 石松さんは学生時代、検察官を目指していたと伺いました。

 
石松:小学2年生の頃から将来の夢は画家か検察官でした。高校生時代は芸術科でデッサンを学びましたが、絵を描くことを強制される環境がすごく苦手で。このまま美術大学に入学したら、絵が嫌いになってしまうかもと思ったんです。そこで当初のもう1つの夢だった検察官を目指そうと決意し、成蹊大学の法学部に入学しました。

 

― そこから再び画家を目指し、今の“不美人画”に行きつくまでにはどのような経緯があったのですか。

 
石松:大学在学中に体調を崩してしまい…。そのとき何気なく見ていたアートの本に助けられたんです。自分もアートでできることがあればと思い、画家を志すように。“不美人画”は、世の中であまり魅力的だと思われていないものにスポットを当てたいという考えが始まりです。高校生時代、“顔至上主義”で顔立ちが綺麗な子ばかりもてはやされるシビアな世界だと思って過ごしていました。視野が狭かったからなんでしょうね。その価値観が、生きづらさの原因だと感じて。“不美人”を魅力的に描くことによって世の中の容姿に対する価値観に一矢報いたいと思ったんです。

 


↑2020年3月には名古屋栄三越の7階・美術サロンで個展「不美人画展」を開催。
「生まれ変わる」2020年
 

― 石松さんが思う“不美人”な絵とは具体的にはどのようなものですか。

 
石松:顔立ちもそうですが、いわゆる、明るかったり奥ゆかしかったり、家庭的だったり、世間で良しとされているのとは対照的な内面を描くようにしています。例えば、不機嫌だったり、いじわるなところがあったり、いじめられていたりとか。世の中に歓迎されないような、ブスっとした女の子を描くようにしているんです。描くときは、自分自身にある “負の感情”を絵に落とし込みます。背景の色は、その感情を引き立たせるような配色に。鑑賞者に感情がダイレクトに突き刺さるように意識しています。
 

↑普段はベッドの上にしゃがんで制作している石松さん。一番リラックスして取り組める場所なんだとか。

― “負の感情”を作品に表現していく過程で、影響を受けているものはありますか。

 
石松:小説家の太宰治と、ロックバンドのスピッツに影響を受けました。14歳の頃から、彼らのぐしゃぐしゃとした作品内容に共感して。太宰治とスピッツが表現するセンシティブな感情を自分の内面とミックスさせて、絵に踏襲しています。

― 作品全体を通して、メランコリックとエロティシズムを感じました。ご自身が手掛けるひとつのテーマにもなっているのですか。

 
石松:S(サディズム)とM(マゾヒズム)を表現したものが昔から好きなんです。SとMは表裏一体と言われていて、S・Mの両面ともに、自分自身がしたい、されたいという願望を作品に投影しています。
 

↑女性が男性に支配されている「逃がしてやらない」シリーズの新作。支配されている側の女の子は、嫌がる様子を見せず、どこか受け入れているような表情にしているそう。
手前:「ワンカップ」、左上:「ガチャガチャ」、右上:「鯛の醤油さし」
 
 

↑アンニュイな表情を見せる女の子が哀愁を漂わせるこちらの作品。惨めにもてあそばれる天使を表現しているのだそう。
「みじめな天使」2018年

― ご自身の絵がどういう存在でありたいと願いますか。

 
石松:自分自身が精神的に辛かったとき、誰かに頭をなでてくれたり抱きしめてくれたり、辛かったねと言ってもらうよりも、アートに“私も寂しいよ”と励ましてもらえて。すごく救われたんです。もし、私の絵を見てくれる人自身に、何か辛いことがあって心に大きな穴ができていたとしたら、「私も同じ感情だから、その孤独の穴を一緒に見つめよう」と心に寄り添う存在でいたいなと。
 

 

― 今後はどのような活動をしていきたいですか。

 

石松:“精神性”を描くのが好きなので、これからも人を題材にした作品を描いていきたいですね。また、女性の体の曲線美にとても魅力を感じているので、今後もそんな女性の柔らかいフォルムを生かした不美人画を描いて、ひとりでも多くの人の心に私の感情が響けば幸せです。

 
 

(文:壁谷雪乃)

 

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