インタビュー・モノ

「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。


 
夏の夜、庭や公園でおこなう花火の〆には、しっとりと線香花火を…という人も多いのではないでしょうか。丸い火球が少しでも長くもつようにと、一心に火球や火花を見つめる静寂のひととき。実はその火花に、起承転結のストーリーがあるのをご存知ですか?
 
人の一生になぞらえた“わびさび、儚さ”のある火花のストーリーを楽しめるのは、やはり日本でつくられる線香花火ならでは。日本有数のおもちゃ花火の産地、愛知県三河地方の幸田町にある花火メーカー「三州火工」を訪れ、線香花火の歴史やその魅力について話を伺いました。
 

↑職人が1本1本手で撚ってつくる線香花火。
 

2020年発売の線香花火「火STORY」

 
三州火工から今年発売されたばかりの線香花火「火STORY(ヒストリー)」(10本入り770円)。そのネーミングの由来は、線香花火の燃焼変化が昔から人の一生(ストーリー)に例えられてきたことと、江戸時代からずっと愛されてきたという線香花火の歴史(ヒストリー)から。また、線香花火では燃え方の変化を植物の名前に例え、「火球(牡丹)」「松葉」「柳」「ちり菊」といいます。
 
この4つの段階を人生に見立てるなら、火球(牡丹)は生まれたての瑞々しさ。次第に勢いを増し、若さがほとばしるような松葉。角がとれ、力強さと柔らかさを備えていく柳。そして、静かに散るように終焉を迎えるちり菊。そんなことを知ってからは、たった1本の線香花火にも今までに感じなかった、そこはかとない風情が楽しめます。
 

↑↑①牡丹 ②松葉 ③柳 ④ちり菊
 

日本から姿を消した国産花火の復活

 
線香花火の歴史は古く、争いとしての火薬が必要でなくなった江戸時代から、人々は鑑賞用として花火を楽しむようになったとか。ところが1990年代に安価な中国製線香花火の輸入により、国産線香花火が姿を消します。その後国産線香花火の復活の動きが起き、今は愛知、群馬、福岡など一部の地域で国産線香花火が再びつくられるようになったのだそう。
 

↑↑三州火工では線香花火に使う和紙も自社で染めています。
 

線香花火はどのようにつくられる?

 
和紙を染めるところから、火薬の配合、撚り、パッケージ詰めまで自社で一貫して手づくり。火薬には硝石(硝酸カリウム)、硫黄、木炭粉、松煙を混ぜ合わせます。線香花火1本あたりの火薬量は0.08グラム。できあがった線香花火に実際に火をつけて燃え具合を確認しながら、火薬の配合の微調整を続けていきます。
 

↑線香花火の火薬の原料。左上より時計まわりに木炭粉、硝石、硫黄、松煙。
 


↑4種類の原料を混ぜ合わせていきます。
 

1本1本燃え方が異なる、一期一会の儚さ

 
調合した火薬を和紙に包んで、1本の線香花火が完成。しっかりと撚っていきますが、ここも職人の手腕が問われるところ。芯が通ったようにピンと真っすぐな線香花火に仕上げるのには、熟練の技が必要です。火薬の配合や撚りなど、いつもと同じように仕上げても、製造時の環境や、使うときの環境などで1本1本の燃え方が異なります。それもまた、線香花火づくりのむつかしさでもあり、一期一会の儚さや魅力でもあるのです。
 



↑調合した0.08グラムの火薬を包み、1本1本丁寧に撚っていきます。
 

火を身近に感じ、花火を楽しんでみて

 
三州火工では線香花火のほかに、手持ち花火をはじめ、公園や庭で地面において楽しむ噴出花火や打上花火など、いわゆる“おもちゃ花火”を製造しています。「最近は遊びの多様化や場所の問題などで、子どもたちが花火を楽しむ機会が極端に減っています。火を危険だと遠ざける世の中で、火に触れる機会が少なくなった子どもたちに、おもちゃ花火を通して火の扱い方を安全に覚えてもらいたい」とは、三州火工の稲垣泰克さん。子どもたちはもちろん、この夏は“わびさび、儚さ”が楽しめる線香花火を、大人も楽しんでみてはいかがでしょう。
 

↑「牡丹桜(ぼたんざくら)」(20本入り1,200円)も、三州火工による線香花火。
 

↑そのほかにもたくさんのおもちゃ花火を製造しています。
 

↑おもちゃ花火で人気の「たこおどり」。
 

↑花火の美しさに、子どもたちの目も輝きます。
 
 
(写真:岩瀬有奈 文:広瀬良子)
 
 

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