書店員の本棚

東海エリアの書店をリレー形式で巡り、書店員さんが愛読する本を綴ります。

 

 
名古屋市中区、新栄町駅すぐの場所に2020年7月に開店した「CENTRE(センター)」は、こだわりのコーヒーやフードとともに、店内に置かれた本を自由に読むことができるブックカフェです。書店員の愛書バトン連載5回目となる今回は、CENTRE代表の中村恭平さんがセレクト。「もっと知りたい、もっと学びたい」をコンセプトに掲げる同店を手掛けるだけあって、実用書から、ビジネス、経営書まで多彩な5冊をおすすめしてくれました!
 

『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』
著:パティ・マッコード、翻訳:櫻井祐子(光文社)

 
NETFLIXという企業を通じて、根源的な部分まで削ぎ落としたシンプルでエネルギッシュな組織運営の考え方に触れられる本書。「最強人事戦略」というタイトルではありますが、人事の仕事を担当している、いないにかかわらず、チームで仕事をしているすべての人にとって、ひとつの考え方として学びがあると感じます。
 
印象的なのは、「いついかなる瞬間にも、計画をかなぐり捨て、まちがいを認め、新しい進路をとることのできる態勢でいなくてはならない」という言葉。人も組織も変化していかなければいけないし、変化を恐れてはいけません。ブックカフェを運営している私もそうです。世の中は変わっていっているのに、同じことを繰り返して同じ結果を得ようとするのはナンセンス。スピード感をもって絶えず変化し、進化する、そんな仕事をしていきたいと考えています。
 

『両利きの経営』
著:チャールズ・A. オライリー、 マイケル・L. タッシュマン、翻訳:入山章栄(東洋経済新報社)

 
「探索」と「深化」。「広く可能性を探ること」と「深く学ぶこと」の両立。人間は根源的に、興味の範囲が広がっていく生き物。その興味と自分のストロングポイント、社会や組織での希少性が重なりあったとき、大きな成果を上げる可能性が高くなります。これに対して、企業も中核としての事業を活かしながらイノベーションを起こすことでさらに成長するのでは、という論点について事例を交えて深堀りされています。
 
私見ですが「企業」はたくさんの人間の集合体なので、1人ひとりが世界を広げ、高めることを、そしてリーダーは土壌を育て、ひとつの輪を育てる活動をするほどに、活力のある組織になると信じています。
“困難は当たり前!” 困難を恐れずチャレンジするしか選択肢はないのだと思わせてくれました。
 

『コーヒー「こつ」の科学―コーヒーを正しく知るために』
著:石脇智広(柴田書店)

 
私が代表を務める「CENTRE」は本屋であり喫茶店でもあります。コーヒーについても自分なりにこだわりをもって提供しており、その礎となったのが本書です。
 
専門書のように詳しい記載がある一方で、かわいい挿絵がたくさん描かれ、絵本のような側面も。挿絵に癒されながらも「ふむふむ」と唸る知識が得られ、優しさと深みのある1杯のコーヒーのような1冊です。Q&A形式で構成されているので、索引で気になるところから読むこともできます。
 
著書自身が「ガイドブック」と称しながら、「道の歩き方は書いてあるけど、どの道が良いかは書いていない」と表現しているのがとても好きです。そうです、自分でやってみなきゃ何もわからない。さぁ、コーヒーでも淹れますかね。
 

『子どもの宇宙』
著:河合隼雄(岩波書店)

 
私には今年5歳になる息子がいます。折り紙をしたり、塗り絵をしたり、好きなアニメを観たりの毎日ですが、時々私の仕事や生き方について、ハッとするようなことを言われたりもします。そんな子どもの、思索がどこまでも広く、制限がなく、自由に取り出せることが、本書のタイトルである「宇宙」とピッタリだと感じました。
 
「子どもの内面には宇宙がある」。無限の広がりを持ち、日々多くのことを取り込んでいきます。大人になるにつれて、次第に目の前の現実や物質的なことに執着し、自分の中に宇宙を感じることは少なくなるかもしれません。ただ、本書を読むことで、子どもの宇宙を育むこと、そして自分の中にもかつてあっただろう宇宙をもう一度育むことに目が向けられるかもしれません。
 

『私とは何か――「個人」から「分人」へ』
著:平野啓一郎(講談社)

 
私たちはいろいろな関係性の人と、日々コミュニケーションを積み重ねています。その中で、「明るい自分」が出たり、「暗い自分」や「強気な自分」になったりと、無意識にさまざまな自分が出てくることがあると思います。それは果たして相手によって引き出されるのか、もしくは自身で仮面を被ることで演出しているのか。そもそも「本当の自分」って何なんだ、どこにいるのだ…誰もが一度は考えますよね。
 
「それはすべてあなた」。人はコミュニケーションを取る相手ごとに「分人」が生まれ、それらすべてがあなたを構成しているという考え方が本書。生きやすさのヒントがいっぱいで詰まっています。確固たる自分などなく、「分人」すべてが自分。否定される「分人」もあるかもしれない。でもそれはあなたのすべてではなく、1つの「分人」なだけ。否定を嘆くより、自分の好きな「分人」が現れる相手と接する機会が増えるといいですね。

 
 

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