おやつ職人まっちんと老舗油屋・山本佐太郎商店4代目山本慎一郎さんが手がける「大地のおやつ」。かりんとうやビスケットなど、さまざまな商品を生み出しているおふたりですが、製造は全国のメーカーや工場に委託しています。看板商品でもある「大地のかりんとう」を製造しているのが、山本佐太郎商店と同じく岐阜市にある社会福祉法人いぶき福祉会。取材に伺い、製造現場の声を聞いてきました。
お菓子作りに同じ想いを持つ、いぶき福祉会とともに
岐阜市内に事業所を12ヶ所構える社会福祉法人いぶき福祉会。障がいのある人の働く場や暮らしの場をサポートしたり、地域とのつながりを大切に活動。今は140人以上が利用しています。もともとマドレーヌやかりんとう、ジャムなどを作っていたため、技術や設備があり、素材にこだわって丁寧に手作りするという想いも「大地のおやつ」のコンセプトと合致。山本さんとまっちんさんは、いぶき福祉会に「大地のかりんとう」の製造をお願いすることを決めます。
カリっとした軽い食感、さらりとした仕上がりを求めて
「ここでは約20人が月~金曜の10時から15時まで働き、生地の成形からカット、揚げ、味つけ、袋詰めの一部を担っています」と永田さん。
まっちんさんが考案したレシピの配合で生地をこね、長方形にカットするところから作業スタート。その後、手動の機械を使って生地を薄く伸ばしていきます。
機械でのばした生地を細い棒状にカット。「食べやすい細さや噛みやすさを追求し、何度も調整を重ねて今の細さに至りました。これが『大地のかりんとう』のカリッとした軽い食感の秘けつです」。
次はいよいよ揚げの工程。揚げるのは160℃の油で約4分間。揚げるたびに必ず数本食べて、仕上がりを確認しているため、試食の数は1日にして約60本! 手仕事のこだわりが垣間みえます。
「最後は、粗糖や黒糖などをブレンドした蜜とかりんとうを釜に入れて味つけをします。味付けの工程は『大地のかりんとう』の最大の特徴“さらりとした仕上がり”においてとても重要な部分。コーティングの具合を見ながら、長年の勘を頼りに途中で火加減を調節していきます」。こうしたきめ細やかな作業を経て「大地のかりんとう」が日々作られているのです!
お互いを思いやり、声を掛け合う活気ある現場
製造現場で印象的だったのは、作業場に飛び交う「お願いします!」「ありがとう!」など、製造に携わっているメンバーの元気な声。「手際よく良いものを仕上げるにはチームワークが大切。どうしたら次の工程を担当する人が作業しやすいか、また自分が仕事しやすいと感じるのは前の工程を担っている人の配慮のおかげということを頭に置いて仕事に取り組むよう、メンバーには何度も話をしています。皆が丁寧に繋いでいったものが、最終的に商品としてお客様の手に渡る。安心して食べることができ、そして食べた人が少しでも幸せな気持ちになってくれることが、ここでかりんとうを作っているメンバーにとって最大の喜びなんです」。いぶき福祉会へ製造を依頼した当初は、大量に製造することはもちろん、品質を安定させることも難しく何度も試行錯誤を重ねたそう。「作り始めてから1年程は、山本さんとまっちんさんと3人で都度食べては意見を出し合うという繰り返し。メンバーも頑張ってくれて、今では品質を保ちながら週に200キロ以上製造できるようになりました」。
ゴールはあえて作らず、新しい価値を生み出していく
今や全国に300店舗以上の取扱店舗を持つ「大地のおやつ」シリーズ。山本さんに、今後について伺うと――。「最終的にこうなりたいというのは、決めていません。まっちんとの出会いから「大地のかりんとう」が生まれたように、出会いによって物事は変わっていく。たくさんの出会いの中で僕が作りたいものも変わってくるかもしれないし、新しい素材と出会うかもしれない。常にアンテナを張りながら、何か新しい価値を生み出していきたいですね」。