
愛知県名古屋市を中心とする尾張地方で製造され、300 年以上の歴史をもつ伝統的工芸品「尾張仏具」。名古屋・大須にある「ノヨリ」の工房では、代々受け継がれてきた尾張仏具の“錺(かざり)金具”技術を、直接学べるワークショップが常時開かれています。今回は香皿作りに挑戦しました!
「尾張仏具」における錺金具とは?

尾張仏具は江戸時代後期に、下級武士の内職が基盤となり、仏壇に収める仏具を製造することから発展した工芸品です。中でも、仏壇だけでなく、神社仏閣や神輿などを華やかに飾る装飾金具を錺金具と呼びます。
木地製造や彫刻、金箔置きなど数ある工程を経て尾張仏具は制作され、それぞれの工程ごとに専門技術を有する職人が携わります。錺金具もそのうちの工程のひとつです。

ノヨリは1970年に「野依神仏錺金具店」を独立開業したことから始まり、現在まで3代に渡って錺金具の技術を守り続けている工房です。名古屋城本丸御殿の錺金具復元にも参加され、対面所上段之間の帳台構金具と上洛殿の長押金具を担当。本丸御殿では、荘厳な錺金具を観覧できます。
ノヨリの工房で香皿作りスタート
ワークショップは事前予約制。キーホルダーやお香立て、リング・ペンダントトップ・バングルといったアクセサリーなどのメニューからノヨリの予約ページで選べます。銀、真鍮など素材を選べるものもありますが、今回制作した香皿は銅製のみです。

錺金具職人から技法の背景や道具の扱い方について説明を受けた後、実際に職人が扱う道具を使って制作に入ります。最大6人(貸し切りの場合8人)まで参加でき、小学校高学年以上が対象。体験時間は約1時間です。

完成形のイメージはこちら!今回の講師を務めていただいたノヨリの3代目・野依祐月さんの作品です。

文様を刻み付けるのに使うのは鏨(タガネ)という道具。実はこのタガネも専門の職人による手作りで、たしかな技術力を感じます。このタガネを作れる職人は現在日本に1人しかいないのだとか。

文様の一覧を見ながら図案を考えます。花や唐草模様などが錺金具の定番柄とのこと。ワークショップ用に発注された雪だるまや星など、かわいらしいモチーフの文様もあります。
ハートは、古くから仏具や神社仏閣の装飾に使われています。これは猪目(いのめ)と呼ばれ、魔除けの意味が込められているという説も。このような尾張仏具の歴史や道具・文様についての話を聞くことで、尾張仏具や伝統技法への理解が深まり、興味がより一層湧いてきます。
いよいよ文様刻みに挑戦
本番前に、何度か練習用プレートで試し打ち。タガネを持つ指の力の入れ方、金槌を持つ腕の向き、振り下ろし方など、コツが掴めてきたら、いざ本番!プレートがずれないようマスキングテープで固定し、思い思いの図案を刻んでいきます。

文様が欠けないように刻むのは、なかなか至難の業。上手く文様が出た際は打ち込みの音がまるで違い、爽快な音が鳴ります。

スピーディーかつ的確に刻める職人の技量を実感しました。作業に没頭していると、心が整っていくような感覚に。

すべて刻み終わりました!文様が欠けてしまったり、刻む位置を失敗したりした箇所もありましたが、それもすべて味わいですね。
最後の仕上げで職人技を見学
仕上げ作業は職人さんにバトンタッチ。香皿として使えるように、プレートの縁を少し立ち上げます。希望すれば一連の仕上げ作業まで見せていただくことも可能です。

さらに、ヤスリをかけて縁がなめらかな触り心地になるよう整えます。

最後に硫黄に浸けて硫化させたあと、布で磨き、乾かしたら完成です。

銅の色が濃い茶色へと変化。硫化によって表面に皮膜を作り、色の経年変化を安定させるための作業です。文様が際立つ効果もあるのだとか。

自分の好きなデザインで刻印を入れた香皿が完成。

お香を立てて使うだけでなく、ジュエリーを置くためのプレートとしても使えそうな、高級感のある仕上がりになりました!
技術と伝統を守り、遺していくために
寺院用の錺金具を中心に、一品物の受注制作を続けてきたノヨリ。錺金具の技術や伝統を守るため、ワークショップだけでなく、さまざまな普及活動を積極的におこなっています。

錺金具の技術を活かしたジュエリーやインテリア製品も販売。デザインをすべて祐月さんが考え、時代を超えて愛されるものを制作しています。オンラインショップや工房での販売だけでなく、催事やマルシェの出店で錺金具の技術力を伝えています。

また、克彦さんは2026年10月3日(土)・4日(日)開催の体験型イベント「南大須ECHOES芸術祭」の実行委員として、職人仲間のつながりを深め、ものづくりを盛り上げようと一念発起しています。

会場では12の伝統工芸ワークショップや日本文化体験、パフォーマンスなどが用意。ノヨリのワークショップは事前予約なしで体験できます(予約が必要なワークショップもあり、南大須ECHOES芸術祭 公式インスタグラム @echoes.nagoya)。
| 住所 | 愛知県名古屋市中区上前津1-3-22 |
| 営業時間 | 9:00〜18:00 |
| 定休日 | 土曜、日曜 |
| ワークショップ | メニュー、開催日、空き枠、料金は公式サイトより確認 ※事前予約が必要 |
| 駐車場 | なし |
| アクセス | 名城線・鶴舞線「上前津」駅6番出口より徒歩3分 |
























