創業100年以上の老舗店が軒を連ねる、岐阜市の美殿町(みとのまち)商店街。その一画に2020年10月にオープンした「川島 KAWASHIMA」は、焼き菓子を中心としたフランス菓子で人気のパティスリーです。前身は柳ケ瀬で9年間愛されてきた「A.L.C.café(エーエルシーカフェ)」。移転とともにもともとからの人気商品も全て見直し、さらに美味しく新しく生まれ変わりました。
↑レトロな雰囲気に、大きな窓が開放的な外観。
巨大な石のカウンターがお出迎え
↑店内に一歩足を踏み入れると、スタイリッシュな空間が広がります。
グレーを基調とした店内で、まず目を引くのが巨大な石のカウンター。「デザイナーと店舗コンセプトを話し合う中で、”なにか岐阜のモノを置きたい”という話に。中津川市蛭川で採掘された巨石はなんと10トン以上。現物を見るまでまさかここまで巨大な石だとは思っておらず驚きました」とオーナーである川島祐里さんは笑います。
店の中心で力強く佇む巨石のカウンターからは、岐阜に根を張ってフランス菓子の味や文化を伝えていくのだという川島さんの想いを感じます。
↑岐阜県出身の川島さん。「なにより“味”を大切に、丁寧に手作りしたお菓子を届けたい」とお店のコンセプトを語ります。
硬さとクリーミーさを両立した絶品プリン
↑ここでしか楽しめない味わい!と評判の「カスタードプリン」324円(税込み)。
カスタードプリンのこだわりは、「生地のしっかりさとクリーミーな味わいの両立」。相反する2つのキーワードですが食べてみて納得。しっかりとした食べ応えを感じながらも、クリーミーで濃厚な味わいが口の中で溶けるように広がります。川島さんが修業時代に出合ったというイタリアのプティングをヒントにしたもの。
「日本で好まれるなめらかなプリンに、イタリアの硬めで濃厚なプリンのエッセンスを加えることで、私にしかできない味わいを生みだせるのではないかと、試行錯誤して作った自信作です」と教えてくれました。
↑お皿に出してカラメルと一緒に味わうのが川島のプリンの“お約束”!
川島のプリンにはもう1つ大きな特徴があります。それが「皿にひっくり返して食べる」ということを強くおすすめしている点。「甘いカスタード生地とビターなカラメルを一緒に味わうことで生まれる”味のコントラスト”を計算してプリンを作っています。容器の底のカラメルをまんべんなく生地にまとわせるため、お皿にひっくり返して召し上がってほしいです」と川島さん。
カラメルももちろん丁寧に鍋で焦がした手作り。硬さ、生地のクリーミーな味わい、ほろ苦いカラメル。すべてが絶妙に絡み合い、まるで芸術品のようなプリンです。
焼き菓子から季節のショコラまで
↑店内には季節ごとにさまざまなお菓子が並びます。
定番の焼き菓子、発酵バターサブレは、季節に合わせ常時5〜6種類が並ぶそうですが、ここにも川島さんのこだわりが。「基本の生地に素材を足して色々な味を作るのではなくて、テーマとする素材に合うように、小麦粉の産地や砂糖の種類など、サブレ生地自体から全部を一つづつ調整しています」とのこと。さらに、毎日の湿度や温度で仕込みや焼き具合を微妙に変えているそうです。「とても手間はかかりますが、その分納得のいく味わいに」と、お店の看板商品に自信を見せます。
↑こだわりのサブレはギフト包装にも対応しているので、手土産にもピッタリ。
↑もう1つの定番の焼き菓子が「ファーブルトン」。ラム酒に漬け込んだプラムと発酵バターを使った濃厚なクレープ生地の絶妙なハーモニーを楽しめます。
秋から冬にかけては、本格的なショコラが店内を彩ります。カカオ豆を石臼ですり潰すところから手作りで行うという、本格的な自家製ショコラにも注目です!
↑川島のショコラはフレッシュな味わいが特徴。まるで“生菓子のような”ショコラです。
川島さんが地元である岐阜に最初にお店を開いてから10年余り。当初は昔ながらのケーキ店の多い岐阜で馴染みの薄いフランス菓子が受け入れられるのか不安だったそう。「それでもお店を続けるうちに、学生だったお客さまが社会人になっても来てくれたり、カップルだったお客さまが結婚して子どもと来たりと、川島のお菓子を求めて通ってくれる方が増えていきました」と川島さん。現在では2世代3世代にわたる常連さんも。新たにお店を構えた美殿町商店街でも、1つひとつ丁寧に作られる川島さんのお菓子は、多くの人々にとってずっと食べ続けていきたい味になっていくのではないかと感じました。
(文:山田泰三)