まち歩きしながら本に出合う 東海発「ブックマークナゴヤ」が発信したいコト 【ブックマークナゴヤ実行委員会 委員長 黒田義隆さん・黒田杏子さん】インタビュー


↑ 黒田夫妻が経営する、名古屋市千種区にある書店「ON READING」。
 
2008年、名古屋市内の書店文化を刷新するイベントがスタートしました。書店、古書店、雑貨店、カフェが連携して「本と本屋の魅力を再発見しよう」をテーマに始まった「ブックマークナゴヤ」。このイベントは、何を目的に立ち上がったのか、そして、10年目を迎える2017年、今年を最後にイベントは閉幕するといいます。10年間で名古屋のまちにどんなムーブメントをもたらし、閉幕にあたり、今何を思うのか、委員長の黒田義隆・黒田杏子夫妻にお聞きしました。
 

↑ 洋書も和書も、古書も混在する「ON READING」の書棚。自分は今、何に興味を持っているのかを発見できる場所にしたいと義隆さん。
 
― どんな思いで、2008年にブックマークナゴヤを立ち上げたのでしょうか?
 
義隆:僕たちが2006年にYEBISU ART LABO FOR BOOKSを始めた(2011年に現在の場所に移転、ON READINGとしてリニューアルオープン)のと同じ頃、本山の古書店・シマウマ書房や覚王山の古本バー・cestaが開店し、名古屋に少しずつ個人経営の本屋が増え始めていました。その割には、マスメディアで取り上げられることが少なくて。じゃあ自分たちで何か発信しようと思ったのがきっかけです。
 
杏子:当時私は、自分たちの店を運営しながら、リブロ名古屋店でも働いていました。新刊書店では、日常的に書店員が棚をつくったりフェアを企画したりしているのですが、それを外にPRすることはあまりなかったんです。逆に、私たちの店のような小さな店はその存在を知ってもらうまでが大変で、そのどちらももったいないな、と思ったんです。ブックマークナゴヤという箱をつくって、必要としている人のもとに情報が届くようになれば、どちらにとっても新しいお客様を得られるのではないかと考えました。
 

↑ 「大切なのは、知らないことに対して無関心にならないこと。無関心が排他的な世の中をつくってしまうと思うから。そうならないためにも、本屋がきちんと多様性を担保する場所でなければと考えています。」と黒田夫妻 。
 
― ブックマークナゴヤではどんなイベントを手掛けてきたんですか?
 
義隆:本好きの一般の方々が、読み終わった本を持ち寄って販売するフリーマーケット形式の「ブクマ古本市」や、作家や編集者、デザイナーなど本に関係するお仕事をされている方をお招きしてのトークショー、さらに、参加店の皆さんにおすすめの本を選んでいただいてブックガイドを制作するなど、さまざまな企画を行いました。ひとつの場所ではなく、図書館、書店、 商店街など、名古屋のいろんな場所で同時多発的に行われますから、巡って楽しいイベントだと思います。
 
杏子:立ち上げの時の話に戻るんですが、名古屋にはまち歩きの文化がないとよく言われます。だから、本や本屋を媒介に、まち歩きを楽しんでもらえるような仕掛けができないかと考えたんです。
 

↑ 「ブクマ古本市」は毎年人気のイベント。2017年は円頓寺商店街で開催します。
 
義隆:名古屋というまちは、わりと都会で自然も程よくあって、恵まれている。だから、このまちに暮らす人は与えてもらう意識が強いんじゃないかな。街に対して、能動的に面白いことを探したりしている人がまだまだ少ないっていう気がしていて。だから、ブックマークナゴヤには、イベント期間中だけじゃなくて日常的に、街をすすんで楽しむような人が増えたらいいなっていう想いも込めています。
 
― なるほど、毎日を面白くするきっかけづくりなんですね。
 
義隆:はい。住んでいる人たちが面白がれば、その街はどんどん面白くなると思うんです。今、名古屋は魅力がないって言われてしまっているのは、住んでいる人たちが自ら動くことが欠けていることが大きな要因だと思います。
 
杏子:私たち自身もブックマークナゴヤを通じて本当に多くの書店の方、出版社の方、そして本のファンに出会うことができて刺激をもらってきました。これからは、そのつながりを生かして、新しい動きが出てくるんじゃないかな、と期待しています。その土壌のようなものはこの10年で多少なりともつくれたんじゃないかと。
 

↑ 2011年 TRAVELING COW BOOKS at 名古屋テレビ塔
 

↑2014年 「能町みね子と渋谷直角の雑誌にまつわるエトセトラ」
 
義隆:情報の発信の仕方、受け取り方も10年経って大きく変わって、個人でも圧倒的に情報を共有しやすくなりました。個々でも新しいチャレンジはしやすくなっていると思います。そのためにも最後は、種をまいて終わるようなことができればと、スタッフたちとも話してきました。ブックマークナゴヤという枠組みがなくなっても、名古屋のいろんな人がそれぞれに興味のあるモノやコトを突き詰めるようになったら、それが一番だと思います。
 

 
(文:塚本千晃)
 

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