木工文化が根付く飛騨高山で、お土産として有名な「さるぼぼ」をモチーフにした積み木「TSUMIBOBO(つみぼぼ)」。前編では、頭部と胴体で異なる木材を使うことによる絶妙なバランスの理由や、創造力を刺激する秘訣を紹介しました。後編では、「白百合工房」の木工職人・上野望さんにつみぼぼのデザイン裏話を伺います。
- 前編はこちら
素朴なぬくもりを感じる、無垢材の木目
↑頭部に使用しているカエデは木目があまり目立ちませんが、胴体に使っているスギは木目がはっきりしている樹種です。
まずは、つみぼぼ自体の見た目のこと。
胴体部はあえて木口を表面に出すことで、素朴な味わいに。色の濃さ、輪の大きさや幅などの違いにより、ひとつとして同じ模様がないのも魅力です。
↑年輪が細かい木は、ゆっくり時間をかけて育った「苦労人」なんだそう。
赤みを帯びているのは木の内側部分で、白っぽいのは木の外側部分。山の急斜面で育った木と平らな場所で育った木など場所による差があるほか、同じ木のなかでも日がよく当たる部分と当たらない部分の差があります。
周囲の支えによって完成したパッケージ
↑「箱の素材を紙にするというのは、自分1人では辿り着けなかった発想です」と上野さん。
積み木は普通、木箱に入れることが多いのですが、つみぼぼを入れる箱の素材には、段ボールを選びました。そのきっかけは、「保育士が選ぶ木のおもちゃ10選」というプロジェクトに参加したときのこと。
美濃市の4つの保育園につみぼぼを貸し出してモニタリングをしたところ、「木箱だと子どもが誤って蹴ってしまったときに痛い」という意見を聞きました。「それなら、多少箱が傷んでも、子どもたちに優しい紙の素材のほうが良い」と段ボールの箱に改良したのです。
↑引き出し型にして密閉することで、箱を開けたときに木の香りが広がります。
つみぼぼを箱に入れるときの並べ方にも、特徴があります。縦にして詰めるでもなく、横にして積んでいくでもなく、顔が見えて収まりの良いこの並べ方。引き出し型にしたことで、開けたときに整然と並んだつみぼぼが現れるかわいさも生まれました。
箱に貼ったパッケージシールも好評です。実は、デザインしてくれたのは、市内の川原でたまたま出会った男性。「職人になるために県外から修業に訪れていたそうで、前職でデザイン経験があるということで依頼しました。不思議な縁があるものです」。
キャッチーな「TSUMIBOBO」というネーミング
↑つみぼぼという商品名は、愛らしい見た目にもぴったり。
つみぼぼのネーミングは、ふとした日常から生まれたもの。「商品名に悩んで唸っていたら、妻が食器を洗いながら『つみきのさるぼぼなんだから、つみぼぼでいいでしょ!』と一言。すぐに、それだ!と思いました」。
↑「白百合工房」2代目の上野望さん
パッケージに入れる商品名を「TSUMIBOBO」と英語にしたのは、商標登録をする際に専門家に相談したときのこと。祖父母が孫にプレゼントとして贈る際、英語でかっこいい商品名にしたほうが「おじいちゃん、センスいいね!」と褒められるのでは、とアドバイスをもらったのです。
誇らしい気持ちで贈れるプレゼント。贈る側の気持ちにも寄り添いたいという上野さんの想いを体現する商品名となりました。
ひとりでつくったものではなく、みんなでつくりあげてきたもの
↑商品開発、パッケージデザイン、ネーミング…あらゆる場面で関わってきた人たちのおかげで、「全てがバシッとハマった感覚がある」といいます。
「開発段階でもいろんな人が助けてくれましたが、つみぼぼの遊び方も手に取ってくれた子どもたちが自由な発想で考え出してくれます」。
イベントなどでたくさんの子どもたちが、つみぼぼで遊ぶ機会をつくってくれたのが岐阜県の「おもちゃコンサルタント」のみなさん。「応援に感謝しています。つみぼぼは、とても、自分だけでつくったものような気がしません。周りが一緒につくりあげてくれたものなんです」と上野さん。
夢は、良質な知育玩具のメーカーが多いドイツで、つみぼぼを知ってもらうこと。「そのためにも、まずは日本全国で認められるおもちゃにしていくことが目標です」と語ってくれました。
↑「白百合工房」2代目の上野望さん、飛騨最高齢の現役職人である上野良一さん、スタッフのみなさん。
(写真:西澤智子 文:齊藤美幸)
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