1周ぐるりと途切れることのない木目が美しい、木曽ヒノキのお弁当箱「HINOKI BENTO(ヒノキ ベントウ)」。手がけるのは、名古屋で江戸時代中期より神様へのお供えを載せる台・三方(さんぼう)を作り続けている岩田三宝製作所。三方の製作技術を生かし、細かなところにもこだわりが詰まったブランドNUSA(ヌサ)の魅力に迫ります。
江戸時代後期に一大ブームとなった神棚
↑HINOKI BENTOについて話してくれた、岩田三宝製作所の尾張仏具伝統工芸士・岩田康行さん。
江戸時代後期より一般家庭でも神棚を飾る一大ブームが起こってお伊勢参りをする人が増え、また三英傑ゆかりの地ということもあり、名古屋尾張でものづくりが盛んに。神具や仏具は名古屋と京都が2大産地として発展し、名古屋で江戸時代中期より神具のひとつ・三方を作っているのが岩田三宝製作所です。当時はたくさんあった三方メーカーですが、今では専門で作っているのは同社のみだそう。
↑三方向に眼像(くりかた)と呼ばれる穴が開いていることからその名が付いたという三方。穴の形は仏教で宝珠といわれる、災難を避け、濁水を清くするといわれる珠(たま)の形だといわれています。
海外も視野に、お弁当箱に着手
新しい三方(NEW SANBOU)として、岩田三方製作所が2021年1月に立ち上げたブランドが「NUSA」。その第1弾商品として販売されたのがHINOKI BENTOです。
「時代が変わって三方の需要は減ってきていますが、その技術は絶やしたくない。なにか現代の衣食住に関係するようなものを作りたいと思っていたところ、海外のビーガンの方々が日本のお弁当に着目していると知って、三方に使っているヒノキで作ったらおもしろいと思ったんです」と岩田さん。
↑三方と同じように眼像があり、6色の防水シートから好みの色を貼れるようになっています。
魔法のような美しい「曲げ加工」
HINOKI BENTOに使われている木曽ヒノキは、その耐久性や木目の美しさ、香りのよさから古来より神社・仏閣の建築材料をはじめ、奉納する際の器や家具などに長年使われてきた歴史があります。木曽ヒノキは吸湿性にも優れているため、サンドイッチを1日入れておいても、しっとりと柔らかな食感が続くのだそう!
木目自体の美しさが引き立つよう、1周を1枚の木で作っているのもポイント。木目が連続して続き、ほかの木工製品ではなかなか見られない特徴です。
木がどうしてこのように滑らかに曲がっているのか、とても不思議ですよね!これは、三方にも使われている「曲げ加工」の技術。角になる部分に切り溝を入れ、水を含ませて柔らかくして曲げているのです。
具材が映える漆塗りの「URUSHI BENTO」
三方は神具ですが、実は漆を塗ると仏具に変わります。そんな、三方に身近な素材である漆を内側に塗ったお弁当箱「URUSHI BENTO」も展開。色は赤と黒の2種類。たとえばお弁当の定番食材のトマトは黒のほうが映えそう!と思いきや、赤の漆にも映えるのだそう。
赤も黒もすてきで、選ぶのに迷ってしまいそうですね!漆には抗菌性や表面の耐久性もあるので汚れも簡単に落としやすく、殺菌効果もあって安心です。
滑らかで美しい「曲げ加工」がどのように作られているのか。また、そのほかにも人気のNUSAの商品ラインナップについて、後編で紹介します。
後編記事は5月24日頃アップ予定。
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(写真:山本章貴 文:広瀬良子)
住所 | 愛知県名古屋市熱田区中田町6-9 |