黒紋付染(くろもんつきぞめ)とは、婚礼や葬儀などに使われる家紋が付いた着物を黒く染める技術のこと。
名古屋では1611年(慶長16年)に尾張藩が旗やのぼりを作ったのが始まりといわれ、その後着物が作られ多くの人々に親しまれるようになり、尾張徳川家の城下町として栄えたことから染色文化がさらに発展しました。
そんな名古屋黒紋付染ですが、時代とともに着物を着る機会が減り、職人も数えるほどに。伝統を未来につなぐべく、名古屋市西区の山勝染工が生んだ“黒を基調にした”アパレルブランドが「中村商店」です。
名古屋黒紋付染・山勝染工とは?
着物の中で最も格式が高いのが、五つ紋の入った黒紋付。略式として、三つ紋や一つ紋もあります。名古屋黒紋付染は、家紋の型を使って染めます。
技法は「浸染(しんぜん・ひたしぞめ)」または「引染(ひきぞめ)」の2つ。浸染は名古屋独特となる「紋当金網(もんあてかなあみ)技法」。
名古屋で1830年頃に家紋の染め抜き技法として生まれた「紋型紙板締め(もんかたがみいたじめ)技法」がルーツとなり、紋を大切にする心とともに現代に受け継がれています。
名古屋黒紋付染の染元・山勝染工は大正8年(1919年)に創業。昔ながらの技法で職人が一反ずつ丁寧に染め上げ、時間が経っても色あせず、艶のある黒色が特徴です。
一般的な黒の洋服を隣に並べると黒の濃さが違うことに驚きます。
ハッと目を引き、吸い込まれそうな魅力ある黒を基調にした中村商店のラインナップは、Tシャツをはじめ、手の届きやすい値段で日常使いできるアイテムが揃います。
「伝統を知ってもらいたい」という思いから
「中村商店のアイテムが、地元の人に名古屋黒紋付染を知ってもらう入口になればうれしい」そう話すのは、山勝染工代表の中村剛大(たけひろ)さん。
伝統工芸品がルーツでありながら、買いやすい値段設定にしているのも「まずは知ってもらいたい」という思いから。
自社サイトで商品を販売するほか、東山動植物園や名古屋グランパスなどの地元企業とコラボした商品を企画したり、地元のお祭りで手ぬぐいを作ったりなど、地域と連携した取り組みにも積極的です。
黒が魅力!中村商店の商品ラインナップ
商品のデザインを担当するのは剛大さん。紅の染料を使った「紅下染め」(詳しくは後編原稿で紹介!)から生まれる特別な黒のアイテムは、見れば見るほどに黒の美しさに魅了されます。
また、夏に涼しげに使えるような青い染色のアイテムもラインナップ。
黒の魅力あふれるラインナップですが、なぜ黒がこれほど深みのある色に染められるのか――
ただ染料を多く入れればいいというわけではありません。それには、伝統技法や職人が長年積み上げてきた技があってこそ。
後編記事では染めの現場に潜入。中村商店、しいては山勝染工の「黒」の秘密に迫ります。後編記事は2月6日頃公開予定です。