雪の結晶のように美しい、釘を使わず木を組み付ける伝統技【組子コースター】前編

product_17_1
 
雪の結晶がはらはらと舞い降りてきたかのような美しさ。これは日本の伝統産業で、かつては家屋の障子やふすま、玄関を入ってすぐの上がり端に使われることの多かった「組子(くみこ)」の技法を生かして作られたコースター。組子とは、一本の材木からわずか1.5mmほどの木片に切り分け、釘や接着剤などは使わず、切り込みやほぞ(木材を接合するための突起)を施すことで組み合わせ、意匠(模様)を作り出していく職人技。手がけるのは、三重県三重郡菰野町で三代続く「指勘(さしかん)建具工芸」。目を奪われてやまない美しい造形の組子! その魅力を探りに、一級技能士である指勘建具工芸三代目・黒田裕次さんのもとを訪れました。
 
木で綿密に作られた、アートのような組子建具
 

product_17_2
黒田さんの自宅で障子に施されていた組子。裕次さんの父親である二代目・黒田之男さんオリジナルのデザインで、お釈迦様の後光が放射線状に広がっているのをイメージして作ったのだそう。

 
伝統的な意匠はあるけれど、それだけにとらわれない。基本、組子の建具はお客さんから「こういうデザインで作ってほしい」と抽象的なイメージ、もしくは具体的な絵柄のオーダーが入り、その期待に応えるべく、伝統的な意匠や、ときに新たなデザインを生み出し、組み合わせながら作っていきます。今まで作ったことがないようなチャレンジングなデザインオーダーもあるのですか…?との問いに、「結構ありますよ。父親はそういう場を数え切れないほどくぐってきた。その都度、考え、工夫する。そこで、新たな技術や意匠が生まれることが多いんです」と黒田さん。伝統の技術を継承していくだけでなく、新たな技にも挑んでいかなくてはならない厳しい世界です。
 

product_17_3
お客さんのオーダーにより生まれた曲線の意匠。組子で曲線を描くのは至難の業。指勘建具工芸ならではの技術です。

 

大小の輪を木製チェーンでつないで連動させた動く組子。これも黒田之男さんによるアイデアです。2015年に行われた「ミラノ国際博覧会」にも出品されました。
 

product_17_4
2016年の「伊勢志摩サミット」の贈呈品として、指勘建具工芸が「文箱」を制作。「輪継ぎ(わつなぎ)」という意匠は、世界をつなぐという想いを込めて。

 
 
組子建具の需要が低下。そこで始めた、“伝える努力”
 
伝統的でありながら、モダンな雰囲気も醸し出す組子。現代でも、和モダンテイストや古民家風の建築のアクセントとして、組子を取り入れたいというニーズがあるそう。それでもやはり、木造建築が減ってきたことで需要も低下。そこで黒田さんの代から意識しはじめたのが“伝える努力”です。「2009年から『まちかど博物館』に参加し、この地域の地場産業を巡るツアーに組み込んでもらったんです。まずは組子ってどんなものかを見て、体験してもらう。そうした“伝える努力”を発展させ、より日常に使える組子を!と開発したのが『組子コースター』です」。
 

product_17_5
「柔軟な発想の持ち主である父親にはまだ届かない。制作に関しては、今は父親の技術に追いつくことに精進しています」と語る、黒田さん。

 
 
薄くて繊細でも、組子の意匠をたたえた「コースター」
 

product_17_6
「組子コースター」2,000円。模様については、左から/麻の葉、桜亀甲、ねじぐみ。

 
組子コースターのデザインは全部で6種類。何をモチーフに模様が作られているのかを尋ねると、「建具の組子に使われている伝統的な意匠です。“こどもが真っすぐに成長しますように”との想いを込めて産着の模様にも使われる麻の葉や、縁起物の亀甲。昔から縁起の良いモチーフが使われることが多いんです」。
建具に比べると、かなり小さい。ひと回り大きいだけの鍋敷きと比べても、これだけ薄さが違います。
 

product_17_7
左が鍋敷き、右がコースター。

 
「組むときにピンセットを使ったりと、繊細な作業となります。小売りだとある程度スピードをもって仕上げていく必要があるので建具ほどの手間暇はかけられないけれど、多くの人に組子を知ってもらう入口になるかもしれないので下手なものは作れない。そのバランスに気を配りながら制作しています」。
「建具の展示会はプロ向けだし、一般の人にはまだ組子の存在を知られていない」と話す黒田さん。その橋渡しともいえる役割を十分に果たしてくれそうな、美しい存在感を放つ「組子コースター」。コースターとしてはもちろん、オーナメントや小物置きに使ってもステキだと思いました! 後編では、黒田さんの自宅からほど近い、菰野富士の麓にある工房で拝見した制作風景を紹介したいと思います。
(後編は2月22日アップ予定)
 
後編はこちら
 

New Report

2026-08-06

HIROBAくんと行く

遊び方は無限大!屋内施設「カラダうごかす森 Harappa(はらっぱ)」があいち健康の森公園にオープン

愛知県大府市の大型公園「あいち健康の森公園」に2026年7月、「カラダうごかす森 Harappa(はらっぱ)」が誕生!暑い日も雨の日も、天候を気にせず楽しめる屋内施設です。木の遊具がふんだんに配置さ...

2026-08-04

HIROBAくんと行く

鳥羽湾クルーズでイルカ島へ!イルカのあそび時間や絶景を満喫する1日旅

「近場でも非日常感が味わえる体験をしたい」そんな夏休みのお出かけにぴったりなのが、鳥羽湾を巡るクルーズとイルカ島観光が楽しめる船旅です。 遊覧船に揺られながら鳥羽湾の美しい景色を眺め、...
妖怪,イベント,もののけ宝箱,岡崎,2026

2026-08-01

TOPICS

妖怪が大集結!「開け!もののけ宝箱」8/1(土)~10/12(月・祝)

妖怪の歴史と魅力いっぱいの展覧会「開け!もののけ宝箱 ~コワイもカワイイも⁉三次&岡崎から妖怪大集結!~」が2026月8月1日(土)~10月12日(月・祝)に岡崎城・三河武士の...

2026-07-31

TOPICS

愛岐トンネル群を特別公開「森のビアホール」8/1(土)~30(日)

登録有形文化財の愛岐トンネル群でビールやグルメを楽しめる「森のビアホール」が2026年8月1日(土)~30日(日)に開催。春・秋の特別公開を除き、トンネル内に入れる唯一の機会です。 入...

2026-07-29

東海ムーブメント仕掛け人

街角演奏で人や街とつながり、名古屋の魅力を伝える【名古屋の人間観光地・サックス侍】

浪人笠をかぶり、名古屋市内の街角に現れてサックスを吹く「サックス侍」。その活動がSNSやテレビで話題を呼び、「サックス侍に会いたい」「あの音をまた聴きたい」と名古屋を訪れる人が増えているとか...

2026-07-28

しょく育

冷たい飲み物を注ぐと色が変わる!多治見市の「壱LABO」でサンドブラスト体験

17℃以下の飲み物を注ぐと、グラスの中で鮮やかな花火が打ち上がる。 そんな夏にぴったりの仕掛けが施された「冷感グラス」を知っていますか? 多治見市の老舗食器製造販売「丸モ高木陶器」が手...
安城七夕まつり,七夕まつり,安城,2026,愛知

2026-07-25

TOPICS

“願いごと、日本一。”の七夕まつり「安城七夕まつり」8/7(金)~9(日)

竹飾りのストリートが日本一長いことで知られる「安城七夕まつり」が、2026年8月7日(金)~9日(日)にJR安城駅周辺市街地一帯で開催されます。 安城市民だけでなく周辺地域からも多くの...

2026-07-23

TOPICS

愛知の食文化を楽しく学ぶ!「酢づくりが今も昔も酢っごい展」7/25(土)~8/30(日)

愛知県半田市にある食文化の体験型博物館「ミツカンミュージアム」では、通常の見学ゾーンとは別のMIMホールにて、イベント「酢づくりが今も昔も酢っごい展」を2026年7月25日(土)~8月30日...

2026-07-22

ノスタルジックさんぽ

国の登録有形文化財に新スポットがオープン!さくらももこが愛した「郡上八幡さんぽ」

岐阜県郡上市にある国の登録有形文化財である郡上八幡 町屋敷越前屋に2026年7月4日、さくらももこさんが愛した郡上八幡の魅力を伝えるスポット「さくらももこと郡上八幡」がオープン。 漫画...

2026-07-20

トーカイ・プロダクト・ストーリー

知多半島産の柑橘をブレンドした爽やかな味わい!クラフトコーラ「知多コーラ」

愛知県南部にあり、名古屋から南へ突き出した知多半島の温暖な気候で育ったレモンとみかんをブレンドしたクラフトコーラ「知多コーラ」。生みの親となる磯村優太さんは、会社員として働きながら、コロナ禍...

2026-07-17

TOPICS

三河花火発祥の伝統技「岡崎城下家康公夏まつり 第78回花火大会」8/1(土)

三河花火発祥の地・岡崎が誇る、夏の風物詩「岡崎城下家康公夏まつり 第78回花火大会」が、2026年8月1日(土)、岡崎市の乙川と矢作川の河畔で開催されます。 花火と鉾船が浮かぶ伝統的な...
pagetop
もくじ