岐阜・郡上おどりの新たな踊り着「ODORIGI(オドリギ)」シルクスクリーン発祥の地で職人とデザイナーがタッグ:後編

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岐阜県郡上市は、毎年7月中旬から9月上旬にかけて30夜以上にわたり続く日本一のロングラン盆踊り「郡上おどり」や、世界最速の盆踊りの呼び声も高い「白鳥おどり」で知られる町。また、シルクスクリーン印刷産業発祥の地でもあり、20社を超える工房がその技術を守り続けています。

2024年夏、郡上市の盆踊り文化とスクリーン印刷産業を融合させた踊り着アパレルブランド「ODORIGI(オドリギ)」が誕生。前編記事では、ブランドが生まれるまでの背景や、関わるデザイナーと工房の物語を紹介しました。後編記事では、ODORIGIがどのようにして形作られたのか、その制作現場と職人たちのこだわりに迫ります。

もくじ

“水と空気以外は何にでも印刷できる”スクリーン印刷とは?

ODORIGIの衣服制作は、郡上のスクリーン印刷産業が土台にあります。20を越える工房の半数は、アパレルの受注をメインに、驚くことに今もなお手刷りによる印刷をおこなっています。機械に入らないサイズのものもプリントできるうえ、機械が及ばないインクの浸透度や堅牢度が人の手によって高められること、そして何より、一色ずつ版をつくり、一色ずつ刷ることにより生まれるスクリーン印刷の美しさは、人の手の加減で変化するからこその魅力です。

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左より、旗将の直井将人さん、スナップ・スクリーンの古田快樹さん、上村考版の上村佑太さん。

スクリーン印刷とは、一色ごとに版を作成し、一色ずつ丁寧にインクを重ねていく技法。この方法により、多彩な水性インクをはじめ、生地に蓋をするように圧着させる顔料や染料、さらにはラメや発泡インク、箔やクラックといった特殊な表現も可能に。また、生地の糸だけに染まる染料は、プリントしても風通しがよく、裏にも染まるのが魅力です。

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インクの開発を郡上八幡で手がけたのは、日本グランド社を立ち上げた菅野一郎さん。水性インクだけでなく油性インクにより、紙や瓶、ビニールや金属など多様な素材や、平面だけでなく立体物にも印刷できることから、「水と空気以外は何にでも印刷できる」と謳われるようになりました。

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スキージを斜めに押し当て、インクを版にムラなく浸透させます。
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インク詰まりなどによる印刷の不備がないよう、丁寧にチェック。

郡上市のシルクスクリーンのプリント技術とインクの多彩さの結晶が、ODORIGIの商品。盆踊りに欠かせない「踊り手ぬぐい」には、蛍光インクや肌馴染みの良い和の色彩の染料を使用。光に反射する蛍光色の手ぬぐいは、夜の郡上おどりの会場で踊り手たちを一層際立たせ、人気を集めました。

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蛍光色のODORIGI手ぬぐい

洋服と和服が混在する踊り着づくり

衣服づくりにあたり、まず自分たちの先祖がどのような服で暮らし、踊ったのかをリサーチ。半纏やたつけ、浴衣や素襖を軸に、パタンナーの伊東敬史さんが型紙を起こしました。

かつてこれらの和服はすべて反物幅の四角で断ち切られ、手縫いで接合部を調整。着る人の体に合うように一点一点仕立てられていたため、既製服としてM・Lなどの寸法を出して型紙に起こす矛盾や、カーブなど和裁にはないパターンとミシンによる縫製の調整など、さまざまな不自由が洋裁の世界で生きてきた伊東さんの肩にのしかかったそうです。それでも伊東さんは、「自由に形をつくれる洋服とは反対の、ほぼ直線断ちの和服だからこそ生まれる、着る人で変化する自由さがある」と言います。

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土地に根付く衣服デザインからパターンを再構築。

ODORIGIには「郡上の盆踊りをもっと自由に」というコンセプトがありますが、パターンにおいては、和服と洋服の融合による自由、その結晶が前編でも紹介したプロダクトの〈TEI〉と〈IV〉だといえます。

前編記事はこちら

踊り着と藍染から盆踊りの自由をリマインドさせる

また、スクリーン印刷以外に、藍染によるプロダクトもあります。江戸時代、郡上八幡城下町に17軒あった紺屋(藍染店)ですが、現在は「渡辺染物店」一軒のみ。その一方で、郡上各地で藍染を始める若い人たちが登場し、天候や気温に左右されるかつての染色技法に、自然ならではの色彩の多様さを発見する人が増えているのだそうです。

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「製品を通して郡上の土地風土や文化を伝えたい」という思いのもと、藍の葉を自分たちで育て、藍染をおこなう「ゑ うのら」さんに染色を依頼。藍染のムラやゆらぎをデザインとして取り入れた唯一無二の表現の探求をおこなっています。

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ODORIGIに関わるメンバーは、「踊りとともに文化を次世代へさらに昇華させたい」「踊り文化を自分たちの手でさらに昇華させたい」という共通のビジョンを持っています。これまでの郡上おどりでは、自由な服装が許容される一方で、郡上発の衣服が踊り手に選ばれる機会は限られていました。ODORIGIは、地元の素材や技術を生かした「郡上らしい踊り着」として、その価値を広めようとしています。

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ODORIGIの版を持つシルクスクリーン工房「上村考版」の上村佑太さん(右)とODORIGI事業責任者の下田知幸さん(左)。

2025年の盆踊りでは、さらに進化したODORIGIの披露が予定されているとのこと。ポップアップショップの展開や、新しいプロダクトの開発が進行中で、踊り手たちの自由な着こなしをサポートするラインナップに期待が高まります。ただの衣服ブランドにとどまらず、郡上市の伝統文化と地域産業の未来を切り拓くための挑戦であり、地元と踊り手たちをつなぐ架け橋として生まれたODORIGI。2025年夏、さらに洗練されたODORIGIとともに、郡上の盆おどりがどのように進化するのか楽しみです。

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シルクスクリーン工房「上村考版」

ODORIGI 公式インスタグラム

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