インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

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食の満足度を高める、スタイリッシュな器!
 
料理が盛り付けられた時に初めて完成する。どんな料理も受け入れる包容力があり、それでいてその一皿が少し特別なものになる――。取材に行って、その言葉を聞いた時、シンプルな器の有り方にハッとさせられました。そんな想いを話してくれたのは、美濃焼で有名な土岐市にある金秋酒井製陶所のデザイン室で働く河野季菜子さんと岸弘子さん。「KANEAKI SAKAI POTTERY」の生みの親です。落ち着いた艶消しの質感とシンプルなデザインでありながら、ちょっぴり個性的なニュアンスカラーと、細部に宿るあしらいで、着実に女性ファンを増やしている「KANEAKI SAKAI POTTERY」。その誕生の裏側には、河野さんと岸さんの驚くべき行動力があったのです。
 

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具体な料理や、盛り付けのイメージを想像しながら器の形を考えていきます。
 
岐阜の製陶所の技術と歴史を受け継ぐ、新しい風
 
明治37年創業で110年以上の歴史を持つ金秋酒井製陶所。染付、絵付けなどを中心に業務用の食器を制作しています。デザイン室は、4代目となる社長・酒井邦行さんの長年の夢でした。主な受注元である飲食店との打ち合わせでたびたびネックとなっていた、「オーダーメイドなら要望に応えられるのに…」。そんな長年の課題を解決するべく立ち上がったデザイン室。河野さんは入社してすぐにデザイン室に配属となりました。ところが、仕事をしていくにつれ、河野さんは葛藤を感じるように。「オーダーメイドで手間をかけても、その手間に見合う金額がなかなか付かない。このまま今のやり方でオーダーメイドを続けていたら、商売として成り立たないのでは」と――。
その1年後に岸さんが入社し、「KANEAKI SAKAI POTTERY」への思いが動き出したのです!
 

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笑顔で丁寧に取材に応えてくれた河野さんと岸さん。河野さんは京都出身、岸さんは大阪出身で、時々混じる関西弁のイントネーションに場がほっこりします。

 
とにかくまず行動!実績をあげるためにアクションを!
 
何か新しいことを始めなければ…!と、「KANEAKI SAKAI POTTERY」の素案を酒井社長に提案したという河野さんと岸さん。ところが、この辺りの製陶所では大量生産できる安価な陶器の方が一般的で、「KANEAKI SAKAI POTTERY」のようなデザイン性やブランドの価値を重視したアイデアは、なかなか社長の理解が得られません。そこで、「とにかく売れれば、社長もきっとわかってくれるのでは?」と、2人は商品を考案&制作し、売れたという実績をまずはつくろう、と考えます。女子2人、素晴らしい行動力です!
 
「KANEAKI SAKAI POTTERY」がデビュー!
 
販売の照準を合わせたのが、毎年ゴールデンウィークに開催される、日本三大陶器まつりの「第40回土岐美濃焼まつり」。酒井社長には、イベント直前に「KANEAKI SAKAI POTTERY」という名前で出品するということを報告しました。ちなみに「KANEAKI SAKAI POTTERY」は、金秋酒井製作所をそのまま英訳。すると酒井社長は、「一度出てみるか」と承諾してくれました。「KANEAKI SAKAI POTTERY」は製陶所の“大量生産・安い”というイメージを払拭するため、商社のエリアからは離れ、作家用テントブースで販売しました。
 
その結果は…2人が想像していたよりもたくさん売れました!製陶所に戻って酒井社長に報告をすると「よくやった!」との言葉。当初の、賛成とは言い難い雰囲気とは少し変わっていました。
 

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作家用のテントブースには、若い女性のお客さんだけではなく、老若男女訪れてくれました。

 
休みの日は工房を出て、職人ではなく営業として奔走
 
売り上げを上げたい思った2人は、仕事が休みの日曜日を利用して、「KANEAKI SAKAI POTTERY」の営業にまわることに。飛び込みでも話を聞いてくれたお客さんの中には、翌日に工房に来て、すぐに取引を始めてくれることも。営業の成果も出て、この頃から「KANEAKI SAKAI POTTERY」の取扱い店舗が増えはじめます。
 
「売れたときはやった!と思いました。」と岸さん。それに対して河野さんは「立ち上げた頃は不安な思いもありました…が、取引が増えてきたことで安心しました」と話してくれました。現在の酒井社長は、温かく見守ってくれている様子。それは、「KANEAKI SAKAI POTTERY」が売れたという事実はもちろん、若い2人の女性職人が製陶所のために奔走したことを一番に嬉しく思っているからなのかもしれません。
 
この職場で働けることが、幸せ
 
アットホームな雰囲気も金秋酒井製陶所の魅力のひとつ。酒井社長の奥さんが手づくりした蒸しパンをおやつに食べることも。15時にはおやつの時間をもうけ、社員みんなで母屋に集まり、夏はアイス、冬はおかきや芋けんぴなどを食べ、たわいのない話で和むのだそうです。
 

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工房内に冷房がないため、夏場はおやつのアイスで涼をとります。

 

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社長の奥さんは日曜大工も得意。アトリエの天井や棚、机や椅子など、使い勝手のいいサイズのものをつくってくれるそう。

 
後編では「KANEAKI SAKAI POTTERY」がどのようにして作られていったのか、紹介していきます。お楽しみに!
 
後編はこちら
 
●「KANEAKI SAKAI POTTERY」は下記で販売されています。
・tsunagu(岐阜県多治見市本町5-15-2)
・まちゆい(岐阜県土岐市土岐ヶ丘4-5-3テラスゲート土岐内)
・on la CRU(http://www.rakuten.co.jp/on-la-cru/
 

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