インタビュー・ひと

「こんなことしたらおもしろいかも!」を実現した人、また、東海エリアに新たな息を吹き込んだ立役者となる『仕掛け人』にインタビュー。仕掛け人の存在や想いを知ることで、イベントや場所がよりイキイキと目に映るはず!

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「名古屋に笑いの神が舞い降りる!」
そんなキャッチコピーが印象的な「やっとかめ文化祭」は2012年に始まり、今年で4年目。伝統芸能や歴史文化の魅力にあふれる名古屋を舞台に、観客との距離感がとてつもなく近い“街角で行なう狂言”や、見どころをダイジェストに切り取った“ストリート歌舞伎”、お座敷遊びが気軽に体験できる“お座敷ライブ”など!趣向をこらした催しの数々が印象的です。いったいどんな方たちが、どのように企画をたてているのか。初年度から中枢的役割を担う名古屋市役所文化振興室の吉田祐治さん、コミュニケーションデザインを手がける株式会社クーグート代表の高橋佳介さんに、立ち上げの経緯や企画立案の裏話など、話を伺いました。
 
 
—10月29日(土)〜11月20日(日)までの文化祭期間中、狂言から歌舞伎、お茶会、歴史文化を感じるまち歩き…と、企画が盛りだくさんですね! 全部でどのくらいあるのですか?
 
吉田 150ほどです!
 
—おぉ!盛りだくさんですね!どの企画も伝統そのままではなく、幅広い世代が親しめるようアレンジされているのがおもしろいです。でも、これほどの数の企画をかためていったり、文化祭期間中の運営をしていったりと、かなり大変な作業では…?
 
吉田 今はディレクターが3人。そのまわりに、芸どころまちなか披露チーム、芸どころ名古屋舞台チーム、まちなか寺子屋チーム、まち歩きなごやチームと、ジャンルごとにチーム制で企画立案や運営を行なっています。そして、立ち上げ2年目から、ボランティアで文化祭を盛り上げてくれる「やっとかめ大使」を結成。それは高橋さんの発案です。
 
高橋 「やっとかめ大使」は毎年募集をしていて、今年は約90人集まりました。まちの人も一緒に、みんなで運営していく仕組みづくりをしたいと思って。“サポーター”みたいな主役を助ける役割ではなく、自分ごととして捉え、主役になってもらっちゃう!と、“大使”と銘打ちました。主に文化祭期間中の運営を一緒に担ってくれているのですが、文化祭までのミーティングでは、日本舞踊西川流の家元・西川千雅さん直々に所作をレクチャーしてもらったり、狂言のプチ体験ができたりと、伝統を身近に親しめる機会もつくっています。
 
 
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老若男女、幅広く集まる「やっとかめ大使」。ときには司会を務めることも!参加者との距離感の近さが、文化祭を親しみのある雰囲気に仕上げます。

 
 
吉田 加えて、演者、講師、会場を貸してくれる方、企画に協力してくれる店など、主催者側で延べ1200人くらい。みんな名古屋が好きで、名古屋のために何かしたいという気持ちで参加してくれているんです。
 
—まさに“まちのみんなで盛り上げる文化祭”ですね! ところで、立ち上げのきっかけは何だったのでしょう?
 
吉田 最近は、観光の魅力づくりが、レジャー施設や複合施設などの誘致ばかりではなく、“まちの人と、まちの魅力を探す、つくり出す”という方向性に変わってきています。そんな中で、名古屋の魅力は何なのか?を、まちの人と探し、発信し、新しいものを作っていきたい、という話が持ち上がったのがきっかけ。初年度は、「長崎さるく博」という日本で1番最初のまち歩きイベントを立ち上げた茶谷幸治さんをプロデューサーに迎え、路上で伝統芸能を見せたり、まち歩きをしたりと、複合型のイベントを立ち上げました。2年目から地元のスタッフを中心に、体験を盛り込んだり、やっとかめ大使を募集したりと、工夫を重ねていきました。
 
—路上で伝統芸能!今では「やっとかめ文化祭」のおかげで少し馴染みがありますが、最初に道を切り開くのは、苦労もあった?
 
吉田 主催者側に、伝統芸能にそこまで詳しい人がいなかったので、最初は“まちの中で、こんな小さな舞台でやれるのか!?”とか、“車が近くを通るからうるさいな〜”“マイクはいるか?”“舞台の高さはどのくらいにする?”と、わからないことだらけ。やはり、伝統芸能が今まで守ってきたことも大切にしたいし、かといっていつも通りだと敷居が高い。尊重しながらも、なるべく敷居を下げるよう工夫をしていきました。
例えば、狂言。能舞台って3間×3間なのですが、それほどのスペースを街中で確保するのは難しい。もっと狭いスペースで探しても…、意外となくて。雨が降っても大丈夫なよう、屋根があるフリースペース。見つけて交渉して、でも規制があってダメだったり…と。苦労しました…!今年は、大須商店街ふれあい広場ほか、8つの場所で行なう予定です。
 
 

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昨年の狂言舞台。今も昔も変わらない人間の姿が描かれ、ほっこり幸せな笑いに包まれます。

 
 
—なるほど、想像するだけで大変そうな作業! 私が印象的なのが、「しゃちほこチャレンジプロジェクト」です。たしか昨年初の試み? 一般の人も一緒に、あの難しそうな“しゃちほこポーズ”を披露するって、革新的!
 
吉田 文化祭では伝統芸能を身近に見られるし、「まちなか寺子屋」では体験できるし。でも、もう1歩何かできないか?と。実際に自分で体験し、発表できたらおもしろいなと考えついたのが、名古屋の芸妓さんのお家芸“しゃちほこ”。あれって、ポーズだけではなく、実は舞踊の一部なんです。最初は一般の公募で集まったメンバーがあのポーズを体現できるか、ある意味賭けだったのですが、やってみたら意外とできた。今年は50人くらい集まり、西川千雅さんから日本舞踊のお稽古をしてもらって、当日は着物で披露。しかも名古屋城の金のしゃちほこの前で(笑)!昨年雨で場所を変えたので、今年こそ、しゃちほこコラボを実現させたいです。
 
 

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「しゃちほこチャレンジプロジェクト」。昨年は大須商店街のふれあい広場で開催。着物姿の数十人が一斉に“しゃちほこポーズ”をする光景は圧巻です。

 
 
—その光景、ぜひ見たいです。11月12日(土)11:30~、名古屋城二の丸広場ですね。雨、降りませんように~! ちなみに、吉田さんと高橋さん的に、今までで印象に残っている企画ベスト3を教えてください。
 
吉田 3つ!選ぶのが難しい(笑)。どれも内容が濃くて…(笑)!
まだお話ししていない中で挙げるとすると、まずは、「ストリート歌舞伎」。日本舞踊って、もともと歌舞伎の中の“踊り”だけ取り出したものなんですよね。日本舞踊をやっている方は、お芝居もできるんです。なので、西川千雅さんや日本舞踊工藤流家元の工藤倉鍵さんに、路上で歌舞伎を演じてもらおうと。
 
高橋 歌舞伎の中でもインパクトのある部分を切り取ってパフォーマンスしているので、すごくおもしろいです。路上に舞台をつくるから、着替えたり化粧したりする場所もない。舞台のすぐ脇で着替えや化粧をしている様子もオープンで(笑)。こんな貴重な光景ってなかなか見られないです。
 
 

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「ストリート歌舞伎」。能、歌舞伎、文楽をはじめ芸能や文学に繰り返し描かれてきた平景清。異形のヒーローが、現代のストリートに!

 
 
吉田 昨年から始めた和菓子屋さん巡りも。名古屋って古くからお茶処でもあるので、暮らしに和菓子が息づいているんですよね。とても丁寧に仕事をされていて、食べてみると本当においしい。今年は、ずっと愛されているロングセラーをはじめ、昔あったんだけど残念ながらなくなってしまった復刻の和菓子も期間限定でつくってもらう予定。
あとは、「お座敷ライブ」かな。料亭で伝統芸能を見ながら食事を楽しむ機会ってなかなかないと思いますが、それが8,000円~と、お値打ちに楽しめる企画。お座敷遊びの世界、芸も人間模様も、なかなかおもしろいですよ!
 
—聞けば聞くほど、文化祭に興味が湧いてきますね! 今年の新たな試みって何かありますか?
 
高橋 “まち歩き”の趣向を少し変えました。今までは、まちの歴史や魅力を紹介するオーソドックスなものでしたが、狂言方の野村又三郎さんと杁中を散策して、最後は喫茶マウンテンを登頂しよう!だったり、名古屋に関する著書も多数ある大竹敏之さんと幻のコンクリ仏師・浅野祥雲作品を見学したり、“渋ビル手帳”の編集者とモダニズム建築を巡ったり。まちのおもしろさって歴史だけではないので、歴史に加え、現代を楽しむ要素も加えてみました。
 
吉田 「ナゴヤ面影座」は今年初。日本文化研究の第一人者でもある松岡正剛さん、現代の歌人で名古屋出身でもある岡井隆さんに来てもらい、荒子観音寺に残存する1200体を超える円空仏について話してもらいます。より深く名古屋を切り取り、文化を捉え直し、新たな文化を再編集していくことにトライしていきたい。伝統を親しみやすく敷居を下げる一方で、訪れてくれた人がまた次に楽しめるようなディープな企画も、バランス良く入れていきたいと思っています。
もう1つ、「旅する判子コレクション」も、今年の新しい取り組みです。判子も日本の大切な文化なんですよね。文章を結んだり、作り手の証として刻印したり。今回、判子屋さんに全部オリジナルで作ってもらい、プログラムに参加するごとに判子を押す。何十種類もあり、中にはユニークなものも!楽しくコレクションしてもらえるとうれしいです。
 
 
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「旅する判子コレクション」の判子。集めたくなる、ほっこりしたかわいさです!

 
 
—毎年、魅力が増していますね!文化祭の今後を、どう考えていますか?
 
高橋 メインビジュアルの写真ですが、2年目までは、笑いの神様の頭に大きなエビフライが乗っていたんです!3年目からそのエビフライをとりました。というのも、最初はインパクトのあるビジュアルで文化祭をアピールしたいと思っていたのですが、今後はもっとまちに根ざした、“まちのみんなで作っていく文化祭”にしていきたいなと。撮影も今までスタジオで行なっていたのを、今年は有松で撮りました。名古屋のまちに、笑いの神様がやってくるというイメージを身近に表現したくて。
 
 

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初年度と2年目は、笑いの神様の頭上に大きなエビフライが!かなりインパクトのあるビジュアルです。もう一度見たい!という場合は、「やっとかめ文化祭公式ホームページ」のArchivesをチェックしてみて。

 
 
吉田 「名古屋は観光の魅力がない」と言われることも多いですが、視点を変えれば、魅力はたくさんあります。まずは、この地域に住んでいる人が、自分たちのまちをおもしろがれるよう、意識が変わっていくといいなと思いますね。
 
 
 
 
まちじゅうが舞台となる、“芸どころ・旅どころ・なごや”の祭典「やっとかめ文化祭」。約150ある企画は、興味の入り口。気になる扉を探して足を踏み入れると、自分の住むまちが魅力を放ち、見える世界が違ってくるかもしれません!
 

 

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