インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。


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焼物のまち・碧南市が誇る、日本屈指の植木鉢メーカー
 
現代の生活空間にやさしく溶け込む植木鉢「VINTAGE GLAZE(ヴィンテージ グレイズ)」の製造現場とはいかに。製品に息づく匠の技を見学するため、井澤製陶の工場を訪れました。初代が1931年に創業し植木鉢づくりを始め、2代目が大型機械を導入し生産を拡大、現在では全国でも1・2位を争う生産量を誇っています。「分業制が主流の焼物業界における当社の特徴は、植木鉢の型となる石膏づくりから焼成までを一貫して手がけていることです。それにより各工程につくり手のこだわりを反映し、細部にまで納得のいく製品をつくることができます」と代表取締役の井澤賢次さんは説明します。
 

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井澤製陶の工場は、丸みを帯びたかわいらしいロゴが目を引きます。

 
まず案内されたのが、植木鉢のフォルムを形づくる成形機。粘土が入った石膏にローラーを押し込むことで、あっという間に粘土が植木鉢の形に引き伸ばされます。「植木鉢は植物の成長を長期間にわたって支える存在。だからこそ、三河地域で採れる良質な粘土は強度のある植木鉢をつくるうえで欠かせません。また、少しでも耐久性を高めるために、粘土に含まれる空気をしっかり抜くといった工程も必要となります」。植木鉢づくりが地域の土壌と丹精な下準備に支えられている産業であることが分かります。
 

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成形された粘土のマットな質感もいいですね!

 
先人から継承した技術・設備が、現代の挑戦を支えている
 
広い工場を進むと、初代から受け継がれる手動成形機械が!現在は、「VINTAGE GLAZE」の受け皿の成形に使用されています。「植木鉢との一体感にこだわりたいと思い、植木鉢・受け皿の型づくりのプロである『原型師』のもとで修行し石膏をデザインしました。自動成形機と比べると生産量は限られますが、細やかな操作が可能な手動成形機の方が受け皿をつくりやすいことから、この昔ながらの設備が活躍しています。陰ながら私たちの挑戦を支えている井澤製陶の財産のひとつです! 」。
 

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受け皿の石膏だけでこのバリエーション! 細部へのこだわりを感じます。

 
次に見学したのは釉薬をかける工程。2日半かけて乾燥させた成形粘土に井澤製陶が独自に配合した三河釉薬をスプレーで均一にかけていきます。思わず見入ってしまうほどの繊細な手さばき! 薄くかけてしまうと深みのある色に仕上がらず、かけ過ぎてしまうと釉薬の垂れ跡が残ってしまうことから、職人としての経験が求められます。随所に散りばめられた手仕事が「VINTAGE GLAZE」を形づくっていたのですね!
 

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愛情を注ぐように釉薬をかけたら完成までもう少し。窯で20時間焼き上げます。

 
1+1=無限大! 井澤製陶の挑戦はこれからもつづく
 
「日本の伝統文化である『盆栽』は、『盆』は器、『栽』は樹と、どちらかが欠けると成立しない美しさを表しています。これは植木鉢づくりを担う当社としては、忘れてはいけない考え方。植物の引き立て役ではなく、植物と相互に魅力を高め合えるような製品をつくっていかなければならないですね」と井澤さんは力強く話します。
 

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「VINTAGE GLAZE」は種類を問わず植物の個性を受け入れる包容力に満ちています。

 
この「引き立て合う」という盆栽の関係性は、井澤賢次さん自身が体現しています! 弟の亘亨(のぶゆき)さんは賢次さんの良き理解者でありサポート役として10年近く会社を牽引。「VINTAGE GLAZE」の開発にも携わりました。「冷静に物事を考える弟は、ついひとつの事柄に集中してしまう私にとって新たな気づきを与えてくれる存在です」と話す賢次さんに対し、「対照的な性格の兄弟ですよね。だからこそ互いの欠点を補い、長所を最大限発揮できていると感じています。これからも力を合わせて一人でも多くの方々に、植物のある生活の魅力を伝えていきたいです」と亘亨さんは照れながら話します。
強い信頼関係で結ばれた兄弟が手がける「VINTAGE GLAZE」。植木鉢の新たな可能性を開花させた逸品は、これからも静かに、美しく、人々の生活を彩っていくことでしょう。
 

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左から兄・賢次さん、弟・亘亨さん。これからも兄弟の絆が、植木鉢の未来を明るく照らしていきます!

 

(写真:西澤智子 文:西村友行)

 

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