インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

前編はこちら
 
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雄大な自然のなかで行われる下駄づくり

 
郡上木履の「踊り下駄」がつくられているのは、店舗がある街中から山奥に向かった郡上市明宝。「この工房では原料となるヒノキを下駄サイズに切る下準備から、余分な箇所をカットし下駄の形状に仕上げ、鼻緒をはめ込む前の段階まで加工しています。現在はメインシーズンである夏に向けて下駄づくりの真っ最中です」と店主の諸橋有斗さんは話します。
 
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↑ 郡上木履の工房。思わず深呼吸したくなるほどの自然豊かな環境です。
 
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↑ 研磨加工を終えた踊り下駄は、見ただけで木のなめらかな質感が伝わってきます。
 

手わざを駆使して理想のフォルムを築き上げる

 
さて、どのような工程を経てやさしい風合いの踊り下駄が生まれるのでしょうか?
まず長さ30cm前後にカットした木材を下駄の形になるよう機械で余分な箇所を切り落としていきます。高速回転するカッターに木材を当てると、ぶわっと木くずが舞い上がります! 徐々に現れる郡上下駄のフォルム。台と歯が一体となった踊り下駄の特徴を生みだす重要な工程です。
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↑ 体重を支える歯の部分に節が入ると丈夫さが失われるため、節の位置を確認しながらカットしていきます。
 
次は郡上下駄の表面を滑らかに仕上げる研磨工程。履き心地を左右するため下駄全体をまんべんなく磨いていきます。さらに、シンプルな造形を損なわないためにノミで細かな凹凸を整える心配りも。諸橋さんは自身の手で何度も触感を確かめ、理想とする踊り下駄へと仕上げていきます。
「この後、下駄の角を削り、丸みをだす整形工程を行うと踊り下枠の大枠が完成します。シンプルなデザインの踊り下駄ですが、15以上の工程を経てつくられているんですよ」。諸橋さんは我が子を見るようなあたたかな視線を踊り下駄に送ります。
 
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↑ 踊り用の履物としての機能性はもちろん、美しさも兼ね備えた踊り下駄。細部にまでこだわり抜きます。
 

踊り下駄に託す地域貢献への思い

 
郡上市産のヒノキを原料に使用し、製造も一貫して郡上市内で行う諸橋さんのポリシー。「岐阜県立森林文化アカデミーに入学する前から、森林資源の有効活用に貢献する取り組みに携わりたいという目標がありました。そんなビジョンを思い描くなかで出合った郡上おどりの踊り下駄、そして郡上市に広がる豊かな自然。『この魅力あふれる地域のために貢献したい』と思いました。郡上市の文化・資源をその地域から発信したいという気持ちは今も変わらずに持ち続けています」。
 
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↑ 古い町並み、親切で穏やかな地域の人々。郡上市は諸橋さんを魅了してやみません。 
郡上の大地で長い年月をかけて大きく成長した木が、郡上を愛する職人の手で、郡上の文化を象徴する下駄に形を変える。そんな郡上市を舞台としたストーリーが踊り下駄に刻まれています。
「踊り下駄をきっかけに郡上市を訪れる人が少しでも増えたら、これほどうれしいことはありません」。まさに“足元”から地域の伝統、活性化を支える郡上木履の踊り下駄。今年もつくり手の思いが宿る軽やかな音が伝統のまつりを彩ることでしょう。
 
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↑ ふらっと立ち寄りたくなる踊り下駄屋は、素朴な看板が目印です!
 
(写真:渡辺シンヤ、文:西村友行)
 
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