インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

前編はこちら
 

 
“火加減いらず、吹きこぼれなし”の土鍋「かまどさん」の産地は三重県伊賀市。ともに忍者の里として知られる甲賀市・信楽にも程近い山あいに、創業180余年の窯元「長谷園(ながたにえん)」をはじめとする伊賀焼の窯元が点在します。
 

↑ 長谷園の敷地内にある展望台から望む、伊賀市丸柱の風景。
 

長谷さん親子が挑戦した、伊賀焼のブランド化

 
この地で1,300年の歴史がある伊賀焼。素材(粘土)に恵まれ、燃料となる赤松も豊富。腕のいい職人もいながら、産地として今ひとつメジャーになれていなかった要因に、“商人が育たなかったこと”と、長谷園8代目当主の長谷康弘さんは語ります。
“良質な資源(粘土)・燃料(赤松)・腕のいい職人・商人”の4つがあって、ひとつの産地が形成されますが、伊賀には商人が育たなかった。そのため、長い歴史がありながら、下請けのような存在だったんです。それでは寂しいと、先代と私とで伊賀焼をブランド化するため、流通改革や新しいものづくりを進めていったんです」。
 

↑ 長谷園8代目当主・長谷康弘さん。高校から東京に出て、流通を学ぶため百貨店に4年間勤務したのち伊賀へ。
 

産地に遊びにきてもらえるように

 
実家を一度離れたことで改めて、山深いロケーションや昔ながらの登り窯、歴史ある建物を有するこの場所がとても魅力的だと実感したそう。
「16連房旧登り窯」をはじめ、「母(おも)や」や「大正館」など、長谷園には国登録有形文化財に指定されている建物が14棟も。「このロケーションも財産だと思い、皆さんに開放したり、私が実家に戻ってきてから、古い建物を改装して商品を展示するギャラリーも作りました」。
 

↑ 長谷園のさまざまな商品を展示販売するギャラリー。
 

↑ 以前は事務所に使っていたという、大正時代に建てられた「大正館」。
 

↑ レトロな金庫や電話機などが現存する館内は、今は休憩スペースに。自由にくつろげる。
 

↑ 入口の自動販売機でコーヒーやカフェラテなどを購入すると(350円)、伊賀焼のコップに注ぐことができ、なんと器は持ち帰れるんです!
 

↑「母や」は毎年ゴールデンウイークに行われる窯出し市のときに開放。200年以上前からある茅葺き屋根の建物は外観も室内も風情たっぷり。
 

↑「16連房旧登り窯」。日本に現存する登り窯の中でも最大規模なのだそう! 階段を登り、上まで見学できます。
 

↑ 展望台まで!
 
工場内も見学させてもらうことに。
 

↑ 鍋底の表面を削ることで凹凸部分ができて表面積が増え、火をより蓄えられる工夫が施されます。
 

↑ 乾燥させたときに亀裂が入らないよう、取っ手と本体を同じ状態(湿度や温度)で保管しておき、手作業でつけていきます。
 

“卓上”を豊かにするために

 
長谷園が大切にしているキーワードが“卓上”。「テーブルでみんな一緒に楽しんだり、会話しながら絆が深まったりするような役割を、長谷園の商品が担えたらうれしいですね」。そのためテーブルにそのまま持ってきてもインテリアにマッチするような見た目のデザインにもこだわっています。
 

↑「かまどさん」以外の商品も、ほっこりした佇まいながらどこかモダンな雰囲気を感じます。左から、蒸す・煮込む・ローストする・炒める・焼く…などさまざまに使える「ビストロ蒸し鍋」、新商品の「ロースト土鍋」、煙が出ないため室内で本格スモークができる「いぶしぎん」。
 
「すべてが成功するわけではないし、新しいものを開発するには苦労が伴います。それでも消費者の声に応えたり、自分たちがこんなものあったら良いなと思うようなものを開発するときはワクワクします」と長谷さん。
陶器業界では珍しい土鍋のパーツ販売を始めたり、「オール電化の家に引っ越しした」「年配の父母に火を使わせるのが危ないから電気対応のかまどさんが欲しい」などの声に応えるように、4年の歳月をかけて異業種である家電メーカー「Siroca」と共同開発したのが、2018年3月9日に発売となる「かまどさん電気」です。
 

↑「かまどさん」をそのまま使った、土鍋電気炊飯器「かまどさん電気」。
 
“多くの人に、土鍋ごはんのおいしさを楽しんでほしい”。そんな、食卓を囲む人々への多大な愛情を原動力に、新たな開発に意欲を燃やす長谷さん親子(7代目当主の長谷優磁さんとともに開発)の挑戦はまだまだ続きそうです!
 
(写真:西澤智子、文:広瀬良子)
 
 

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