インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

前編はこちら



地場産業である萬古焼の鍋と鋳物の鍋蓋を組み合わせた、蓄熱調理ができる土鍋「best pot(ベストポット)」。手がけるのは三重県四日市市にある「MOLATURA(モラトゥーラ)」。前編では誕生秘話を紹介。後編では0.001ミリの精度で蓋と鍋との隙間をなくす加工技術や、素材へのこだわりに迫ります。

 


↑食卓にそのまま置ける美しいデザインの「best pot」。

 

熱の循環を良くする秘密とは

 
「best pot」の内側は、外側のポップなカラーとは対照的に黒くシックな印象。「内側には阿蘇山の火山灰を混ぜた釉薬を使用しています。火山灰は鉄分が多く含まれているため、安定して遠赤外線放射率を保つことができるんです」と、MOLATURA代表の山添卓也さん。阿蘇山のクレーター部分から採取する数万年前の火山灰を釉薬として使用しているのは、日本で唯一「best pot」だけなのだそう。
 

↑一般的な無水調理なの鋳物の鍋と比べて軽く、扱いやすいのも魅力

 

鍋蓋の中央を高くすることで空気の対流を促す形状に。蓋の裏にフィボナッチ数列で配置された突起は無水調理で発生する水分を料理の中に戻しやすくする目的があります。蒸気で持ち上がらない鍋蓋の重さも気密性を高めるポイントですが、気密性を高めすぎると蓋が外れないなどのトラブルにも。「あえて鍋の正面と背面に0.05ミリの隙間をつくっています」。1ミリ以下の精度にこだわるMOLATURAの削りの技術力の高さがうかがえます。

 


↑鍋蓋には鋳造の錆を防止するホーロー加工が施されています。

 


↑鍋蓋の取っ手部分をネジ式で組み合わせ、ホーロー加工を全体にムラなく施します。

 

陶器の特性に合わせた削り方を考案

 
陶器は鉄と違い、精密に同じ物を作ることが難しいのだとか。削り作業も一筋縄ではいかなかったそうです。「私たちの常識では、焼き物を削ることはまずありません。一度に削ると割れてしまうので0.01ミリ単位で少しずつ。この方法に辿り着くまでに半年ほど費やしました」と山添さん。MC(マシニングセンタ)と呼ばれる機械で鍋を固定し、機械を動かしながら削ります。1つひとつの鍋の形は微妙に異なるので、職人さんが計算機で鍋の中心を算出して行う微調整が欠かせません。
 


↑MCで削るのは3ミリ以下という細かい作業。1日に1人がつくれるのは10個ほどだそう!

 



↑加工前(上)と加工後(下)。蓋と密着する白い部分のみを削って微調整します。

 

安全安心で楽しく使えるカラーリング

 
カラーリングについて、「最初は赤も考えていましたが、赤の釉薬にはカドミウムが含まれているので、採用を見送ることに」と山添さん。調理に使う部分に使用しなければ問題はありませんが、長く使用してもらう過程で溶け出してしまわないとも言い切れないと安全性に配慮。そのため「best pot」には赤やオレンジがないんです。5色のラインナップのほか、アメリカ限定でオーシャンブルーとインディゴブルーも販売しています。
 


↑日本で購入できる5色。やわらかな色合いが食卓に映えます。

 


↑左が2~4人用の20㎝、右が1~2人用の16㎝。飲食店や成長期の子どもを持つ家庭からの要望で、さらに大きな24㎝も発売予定。
 
(写真:西澤智子 文:堀絢恵)
 
 

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