インタビュー・ひと

「こんなことしたらおもしろいかも!」を実現した人、また、東海エリアに新たな息を吹き込んだ立役者となる『仕掛け人』にインタビュー。仕掛け人の存在や想いを知ることで、イベントや場所がよりイキイキと目に映るはず!

江戸時代に酒や酢などの醸造業で栄え、今なおノスタルジックな黒壁の蔵の風景が残る半田運河周辺。古き良き美しい景観が認められ、2015年には国の都市景観大賞(都市空間部門)で国土交通大臣賞を受賞。この半田の素晴らしい景観を地域活性につなげたいと始まったプロジェクトがHOTORI(ホトリ)です。
「HOTORI brunch」から始動し、「HOTORI SAKABA」、「HOTORIの朝市」など、景観を活かしたイベントの開催により、半田運河沿いに賑わいをもたらしているHOTORI。ゆったりとした時間が心地いいHOTORIの生みの親であり、半田を愛する3人にインタビューしました。

 


↑HOTORIの中心メンバーとなる、半田市観光課の酒井諭さん(左)・半田市観光協会の榊原宏さん(中)・アートディレクターの小島百恵さん(右)

 

― 2018年秋から始まり、回を追うごとに賑わいを増しているHOTORIですが、どういった経緯でプロジェクトが立ち上がったのですか?

 

酒井:もともと半田運河は江戸時代から続く歴史ある運河で、この地方の物流の要として機能していました。近年はそういった用途で使われることはなくなりましたが、半田の誇る風景として街をあげて景観を維持してきたエリアです。景観形成重点地区として行政や企業、民間団体で整備を十数年やってきて、ハード面の整備を2年くらい前に終えたところ。では次に、この素晴らしい風景のある場所にどのように人の賑わいをつくろうか、と動き始めたのが事の発端になりました。

 


↑酒井さんは、行政の立場からイベント開催のために道路の使用許可をとるなど様々な調整を担当しています。

 

― “半田運河沿いに賑わいをもたらす”という目的で、3人を中心にプロジェクトが動き出したんですね。

 

榊原:それまでは風景だけだったんですよ。この趣のある風景が半田の誇りだよねっていう思いは市民にもあったんですが、そこに人の息遣いが感じられなかったんです。
 
酒井:HOTORIのイベントがある日もない日も、半田運河に人が行き交う風景をつくるのが、私たちの目指すイメージなんです。
 

↑榊原さんは、豊富な人脈を生かして地元知多半島の生産者や事業者とイベントの架け橋となっています。

 

小島:半半田運河エリアの目指すイメージが決まったら、どのような時間をすごせるイベントに落とし込んでいくか、コンセプト、規模感、ネーミングやデザイン、出店者に関することを私が提案し具体化して行きました。半田に根付いてきた文化を大切にしていきたいというのがHOTORIのメンバー共通の思いですので地元に詳しい宏さん(榊原さん)はじめ、半田で生まれ育ったメンバー達からアイデアやインスピレーションをいただき、また景観をきれいに見せる目的や、安全面での道路や環境の整備は酒井さんに手伝っていただきながら、イベントをスタートさせることができました。
 
榊原:HOTORIの運営には、地域の住民や事業者、商工会議所、地元クリエータなど20名ほどの方が参加しています。定期的に集まってみんなの意見を取り入れながら、また地元の生産者さん方とも連携しながら進めています。

 


↑小島さんは、イベントのコンセプトづくりやデザイン全般、出店やコンテンツのコーディネート、当日の運営や撮影など幅広い業務を担当しています。

 

― HOTORIでは具体的に、どんな取り組みをしているのですか?

 

榊原:たとえばHOTORI brunchは、昔から半田の文化として息づいていた朝市をイメージ。近年は、生活環境の変化などで減ってしまいましたが、私のように半田で生まれ育った人の心には朝市の賑わいの記憶が残っています。そんな朝市を、今の時代に合わせてうまく表現できないかと考えました。お客さんはお子様を連れたファミリーの方が多いのですが、その子どもたちが大きくなった時に、半田運河でこんなことやったなとか、食べたなとか、そういう思い出が残ってほしいと思っています。
 
小島:また、出店者さん同士のコラボや、出店者さんと地元の農家さんのつながり、知多半島内外で活動している方同士のマッチングなど、横のつながりが活発になるような働きかけをしています。HOTORI brunchで、知多で無農薬野菜を生産する「杉浦農園」さんと半田の人気ベーカリー「海音」さんのコラボ商品が生まれたのもそのひとつです。
 


↑「HOTORI brunch」は芝生が広がる「蔵のまち公園」を中心に、「ミツカンミュージアム」周辺で開催。

 


↑知多半島の農家「杉浦農園」と、カレーを扱う出店者「Gacha no Curry day」のコラボ商品のカレー。地元で採れた野菜の素揚げがトッピングされています。
 

― 朝市という文化の現代版を意識したわけですね。半田運河沿いというロケーションでの魅力はありますか?

 

酒井:何よりも半田運河周辺の環境が素晴らしいです。情緒ある景観に加えて、気持ちのいい芝生の公園、運河を吹き抜ける心地いい風。最高のロケーションでイベントをやらせていただいてます。
 
小島:公園でお貸ししているピクニックシートを広げて、出店者さんから購入したフードをのんびり楽しんでいらっしゃる方が多いです。設置しているハンモックでくつろいだり、音楽を楽しんだり、ゆったりと穏やかな空気感をつくりだすことができていると思います。
 
榊原:開催回数を重ねるにつれ、来場者の滞在時間が長くなってるよね。
 
酒井:そうなんです。買うだけでなく、くつろいだり、遊んだりと思い思いに過ごしていただいています。

 


↑地元で採れた有機野菜や卵などが揃う「HOTORIの朝市」は、「HOTORI brunch」から朝市の要素を抽出した後発イベント。新鮮な商品の購入はもちろん、生産者の方々との交流も大きな魅力です。
 

↑知多半島の酒蔵で作られた日本酒や地元で造られているビールなどと、お酒に合うフードを楽しめる「HOTORI SAKABA」。光の演出や、DJブース、映像のコンテンツなどで夜の半田運河周辺が彩られます。
 


↑10月開催の「HOTORI SAKABA」のゲストは熱燗DJつけたろうさん。熱燗をDJに見立て、知多半島六蔵の日本酒をそれぞれベストな温度で温めて提供するテクニックは前回の出演時に大盛況。この日のために特別なプロジェクトも進行中とのこと!

 

― ― モノを買うだけでなく、半田の文化を体感したり、ゆったりと滞在できる場所なんですね。HOTORIは今後どんな姿になっていくのでしょうか?

 

榊原:HOTORIの可能性はもっとあると思っています。「brunch」も「SAKABA」もまだまだ未完成。音楽や映画などの切り口で何かできないか?など、アイデアはいくつかあります。僕の立場としては、やりたいことのアイデアを持った人たちをサポートしていくことが大切。運営の中心となるような人をどんどん増やしていきたいと考えています。
 
小島:私はHOTORIのトップバッターとして、半田運河に、古くからある文化と新しいカルチャーを掛け合わせ、地域の方にも外から来るお客さまにも新鮮さを感じていただけるようにイベントを企画しています。「SAKABA」でも、お酒という伝統的なものづくりと新しいカルチャーをぶつけましたが、イベント後に更に新しい取り組みが生まれており、今年の秋の「SAKABA」でリリース予定です。イベントという表現方法を使って、これからの半田運河で何が起きるのかという期待感を持っていただきたいですし、表面上だけでなく実際の新しい動きを生み出すことが大切だと考えています。次の目標は、まだ先になりそうですが、常設の場をつくるなど一過性のイベントだけでなく、より日常へとHOTORIの活動をシフトしていくことです。
 

↑ゆったりとした時間が流れるHOTORIのイベント。参加者の方々は半田運河でのひとときを思い思いのスタイルで過ごしています。

 

― ― 半田運河の日常へとHOTORIを溶け込ませていくのが目標なんですね。最後に地域の日常に携わるイベントを手掛ける魅力を教えてください。

 
小島:現在は今後の半田運河の活用を進めるためのノウハウの蓄積を目的としてプランニングしています。たとえば運営上、困ったことや工夫で補えない部分を地域の方や観光課に相談し、協力や整備を検討してもらうこともあります。今後はHOTORIに共鳴し、こういうことをやりたい!という方が現れたらみんなでサポートし、どんどん今の私の役割を譲りたいです。地域に関わることを通して人が共に成長していく、それを実感できることが地域でデザインを続けていくことの魅力ですね。
 

(文:山田 泰三)
 
 

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