インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。

前編はこちら→溝がないのにしっかり擦れて、器としても使える。食卓に幸せを届ける「かもしか道具店」【すりバチ】前編
 
溝がないのにしっかり擦れる。素材が溝に詰まることがないから、洗い物もラクラク。擦りたての素材を野菜などとそのまま和えて、器としても使える「かもしか道具店」のすりバチ。前編では、三重県・菰野町の窯元「山口陶器」のオリジナルブランドである、かもしか道具店の実店舗を訪ねました。後編となる今回は、工房で実際の製作風景を覗いていきます。
 

かもしか道具店の製造元、「山口陶器」へ

 


↑かもしか道具店の実店舗からほど近い場所にある、山口陶器の工房。
 


↑製作中の商品がずらりと並ぶ工房内。職人のみなさんが工程ごとに分担して作業をしています。
 


まずは、すりバチの形をつくる工程です。大きな土のかたまりから適量を手に取って型へ。拳で土を広げてから、形を仕上げていきます。
実際に体験させてもらいましたが、難なくこなしているように見えて難しい!職人さんの経験値を思い知らされました。
 


↑すりバチらしい形に近づいてきました。真剣な眼差しで向き合う、職人の中村さん。
 
形を整えたものを乾燥させたら、次は表面を削って整える工程。つるっと綺麗な見た目になったところで、ここで登場するのが“中村チョップ”!職人の中村さんが、指でトントンとチョップをして注ぎ口をつくります。細かなところまで人の手でつくっているんですね。
 


一度素焼きをしたら、内側に鉄を塗る工程へ。鉄を塗ることによって擦りやすいザラザラとした質感になるだけでなく、器としての強度が高まるのだとか。
この後の釉薬を塗る工程で、鉄を塗った部分に釉薬がかかってしまわないよう、鉄にはっ水剤を混ぜています。
 


↑釉薬を塗ったら、再度乾燥させる工程へ。
 
すりバチは、白・黒・茶・藍の4色展開。それぞれの色の釉薬をつくるために、10種類ほどの原料をブレンドしています。釉薬の原料となる鉱石や粘土など自然が生んだものは環境によって状態が左右されやすいため、多種類を混ぜておくことで安定した生産ができるのだそう。
 


↑いよいよ、焼成の工程へ。窯の中の酸素濃度を薄くして、あえて不完全燃焼させることで、よく焼き締まり色味も深くなる「還元焼成」という方法を用いています。
 
窯の端と真ん中では温度が変わるため、商品ごとに窯のどの場所に置いて焼くのが適しているか見極めます。湿度によって酸素濃度が変わるため、季節ごとに温度や焼き時間も微調整。マニュアル的ではない、職人の経験に基づく感覚的な作業が必要になります。
 


↑焼き上がったすりバチがこちら。深い色味が味わいを生み出しています。
 

すりバチを活用して、料理をもっと楽しく

 


↑ゴマやナッツを擦って和え物に、ゆで卵を潰して卵サラダにと、すりバチの活用法はさまざま。好みの素材でふりかけをつくり、そのままご飯を入れて混ぜ合わせれば、器ひとつでおにぎりができあがり。
 
使う人によって新しい使い方が見つかることで、料理が楽しくなるすりバチ。それはまさに、“食卓を通じ、幸せを届ける”という、かもしか道具店のコンセプトそのものです。
 


↑すりバチの裏側には、かもしかをモチーフにしたロゴマークが。
 

産地を守るために、菰野町全体で活動の幅を広げる

 
かもしか道具店の商品は、山口陶器だけでなく、ほかの窯元でも製作をしているものも。各窯元の得意分野をふまえて企画段階から関わり、適材適所のものづくりをしていく。そこには、「萬古焼の産地としての菰野町を残したい」という使命感が込められています。
 


↑山口陶器の代表取締役、山口典宏さん。場所は変わって、「かもしか道具店」の実店舗の前で。
 
最後に、かもしか道具店、そして萬古焼の産地としての今後を山口さんに聞きました。
「産地を残すために、今やるべきことをやる。“30年前の当たり前”と“今の当たり前”が違うように、“未来の当たり前”も違うはず。今、萬古焼の業者で60歳の人が15人いるのが、10年後には70歳になるのは分かっていること。10年後、20年後のために、問題解決を積み重ねていくことが産地を守ることにつながります」。
 
産地を守るために、「かもしか会」という交流・勉強の場も立ち上げたそう。現在所属しているのは、萬古焼の窯元や型屋、デザイン事務所や異業種も含めた20人ほど。山口陶器としてだけでなく、菰野町全体で未来を見据えた活動をしています。「風当りは強いけれど、自分たちの力で未来を変えていきます」と、強い意思で語ってくれました。
 
 
(写真:西澤智子 文:齊藤美幸)

 
 

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