インタビュー・ひと

イベントやスポットなど、新たなムーブメントの「仕掛け人」にインタビュー。

 
愛知県豊田市の「橋の下世界音楽祭」や「トヨタロックフェスティバル」、知多市の野外音楽フェスティバル「UME JAM」などで唯一無二の存在感を放っていたのが、有機物で彩られた奇抜なモニュメント。手がけたのは「造景集団某(なにがし)」。庭師を中心に、装飾やライティング、フライングアートなど、それぞれの分野で活躍するプロフェッショナルが集まり、圧倒的な「造景」パフォーマンスを生み出しています。近年ますます活躍の場を広げる「造景集団某」を代表して見城周さんと赤塚剛さんに話を伺いました。
 

 

― 会社も業種も越えてプロフェッショナルが集まる造景集団某は、どのようにして結成されたんですか?

 
見城:庭師である僕らが表現できるのは庭。普段は庭師として施設や住宅などの限られた場所で仕事をすることが多いんですが、フェスなどのイベントの場では、これまで培ってきたスキルや感性で何かを生み出していきたいなと。そこで共感できる仲間とともに5年前にスタートし、今は10人のメンバーで活動するに至ります。
 

↑某の出発地点となった橋の下世界音楽祭の造景。有機物で作られた巨大な造景は、日常の風景とは一線を画している。
 

― イベント会場でシンボリック的に設置されたモニュメントは、まさしく圧巻!造景をつくる上で心掛けていることはありますか?

 
見城:有機物を使って、“誰も見たことのない世界”を生み出したい。仕事を依頼してくれた人も、会場を訪れた人も、あっと驚かせたいんです。ただ、ものを吊り下げたり、人が乗れるようなモニュメントを作ったりもするので、構造としての丈夫さも必要。庭師の世界でもそうなのですが、結束の要は「3」。造景でも「3」を軸につくっているものが結構あるんです。
赤塚:僕らの造景でよくつくるトライポットは3の倍数でできています。一番コンパクトにしたのが三角形。次に柱の数を増やしつつ丈夫さを追求すると六角形に、次は九角形…と、昔からの技術ですが、しっかりと突き詰めると丈夫で幾何学的なひとつの景色になるんです。
 

↑明るく朗らかな造景集団某のお二人。左が見城さん、右が赤塚さん。普段は庭師として働かれています。
 

― ほかにも庭師の技術が生かされている部分はあるのですか?

 
赤塚:庭に借景という言葉があります。庭の後ろに山が見えたとしたら、その山も庭の一部に見えるように景色を借りる手法です。某で造景をつくる時は借景を意識しています。
見城:造景集団某の字に「景」を使っているのも“景色”を大切にしているからなんです。たとえばハンモックを設置するなら、そこで子どもたちが遊んでいる景色をイメージしてから作ります。物体だけでなく空気感や景色を作りたい。庭師っぽい頭の使い方だと思います。
 

↑ロープワークをはじめ、庭師の技術が光る某の作業風景。
 

↑「FIELDSTYLE Picnic 2019」にて、借景を駆使した造景。観覧車とモニュメントの風車の輪がシンクロしている。
 

― 「造景集団某」という名前は結成当初から?

 
赤塚:2年目くらいに我々2人で考えました。イベントで「造景をつくるあの人たちは何者だ?」という感じで(笑)。
見城:フィンランドの伝統装飾であるヒンメリの作家や、装飾家、ライティングや映像マッピングの技師など、アメーバ式に人が広がっていく、誰のものでもない集団。案件ごとにメンバーを組んで、新しい世界を作っていきます。姿、カタチを変えながら挑戦的で自由な表現の場にしていきたいですね。
 

↑現場では「某」のロゴが入ったおそろいの半纏を着用している。
 

― どのようにして個性を掛け合わせているんですか?

 
赤塚:全体の骨格部分は庭師の私たちがつくり、そこに他の要素が加わり、レイヤーを増やしていきます。たとえば装飾家の能勢聖紅さんが花を活けるイメージで布を活けたり、畳を織り込んで花の形をつくったりと細かい装飾を施してくれたり。すると、造景がまた違った表情になるんです。
 

↑「橋の下音楽祭」にて、有機物に布を生けた造景。夕日と相まってエキゾチックな雰囲気を醸し出している。
 
見城:メンバーの鈴木和旺さんは、フェス会場の日差しよけ機能を兼ねた、空に向かってレイヤーを重ねて奥行きをもたせるフライングアートをしたり、夜の造景物にライティングをして夜映えさせるなど、3次元な空間をインスタレーションします。自然造形作家の仲宗根知子さんは、いつもは麦わらで正八面体や正六角形の幾何学的なモニュメントをつくりますが、それを竹で組み合わせて巨大なヒンメリへと見せ方を変えたりもします。これらは、某だからこそ生まれる“掛け合わせ”の造景です。
 

↑野外フェス「UME JAM」にて。空に向かってレイヤーを重ねたフライングアートが前衛的な景色をつくる。
 

↑光をあてることで、夜映えする立体的な造景。昼とは違う顔を見せている。
 

↑橋の下世界音楽祭の造景。巨大ヒンメリの幾何学的な美が異彩を放っている。
 

― いろんな個の力が集まって某の造景が作られているんですね。最後に、今後の活動についてのお考えをお聞かせください。

 
赤塚:庭師の仕事で言えば、庭って極端な話、生きていくために必要なものではないんです。だけど、心を豊かにするもの。それは某の活動も同じ。きれいなものを見てきれいだなと思うような、心を刺激する造景を、これからもつくっていきたいです。
 

↑造景集団某のメンバー。「FIELD STYLE」の屋内会場に高さ約3m、重さ約4tもの巨大な杉の木を設置。常にインパクトのある造景を生み出し続けている。
 

 
(文:青野凌)

 

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