書店員の本棚

東海エリアの書店をリレー形式で巡り、書店員さんが愛読する本を綴ります。

 

 
本が好きな書店員さんが自宅で読んでいるのはどんな本? 東海エリアの書店で働く書店員さんに愛書を教えてもらいます!
 
今回本を紹介してくれたのは、名古屋市港区のららぽーと名古屋みなとアクルスにある「名古屋みなと 蔦屋書店」書店員の後藤敦子さん。どんなジャンルも読むそうですが、最近は時代小説愛が再燃中とのこと。読書しながら膝上の猫とたわむれるのが至福のときだそうです! そんな後藤さんに5冊の愛書を教えてもらいました。以下、後藤さんからのコメントです。
 

『人類のためだ。:ラグビーエッセー選集』
著:藤島 大(鉄筆)

 
去る2019年10月5日。豊田スタジアムで、アジア初のラグビーワールドカップ「日本vsサモワ」戦が行われました。応援に駆けつけた多くの人々。老いも若きも、男も女も、日本人も外国人も、私も一緒になって肩を揺らし、声を張り上げたのは、もう何年も昔のことのように思えます。
 
本書は、ラグビーの素晴らしさを迸らんばかりの熱情で綴ったエッセー集です。著者の藤島氏の文章は、まるで一流のアスリートのように硬質で美しい。大切にしなければ、やがてこの国から消えてしまうかもしれないもの。忍耐、規律、不正を憎む心など。「さあ、ラグビーの出番だ」と藤島氏は言います。危機に瀕する今こそ。
 
スポーツの大会がことごとく中止になり、自粛生活が続く日々ですが、あの日の思い出と代表の勇姿は、今も私の背骨を支えてくれているのです。
 

『カモメに飛ぶことを教えた猫』
著:ルイス・セプルベダ、翻訳:河野万里子(白水社)

 
ある日、主人公猫ゾルバが日光浴をしていると、瀕死のカモメが空から落ちてきます。死を前にしたカモメが、ゾルバに誓わせた三つの約束。
「わたしはこれから最後の力を振り絞って卵を産むけれど、それは決して食べないと約束して。」
「ひなが生まれるまで、その卵のめんどうを見て。」
「ひなに飛ぶことを教えてやって。」
 
その日から、ゾルバと仲間たちの奮闘が始まります。優しく気高い港の猫の、愛情と献身の物語。我が猫本コレクション(!)のベスト3に入る名著です。
 
著者のセプルベダ氏は、今年4月16日に新型コロナウイルス感染のため亡くなりました。”まったく異なる者どうしの愛”こそが、私たちを誇らしい気持ちにさせるという著者のメッセージは、こんな時代だからこそ、より一層輝きを放ちます。
心から、ご冥福をお祈りいたします。
 

『銀河英雄伝説』
著:田中芳樹(東京創元社)

 
はるか未来の宇宙を舞台に、専制政治を敷く「銀河帝国」と、民主主義を掲げる「自由惑星同盟」の戦いを描いたSF小説です。
 
物語を貫くのは、「腐敗した民主政治と優れた独裁政治では、どちらが正しいのだろう?」という人類普遍の問い。SFと銘打ちながらも、政治、軍事、歴史、宗教など多彩な要素が、この物語をより魅力的にしています。
 
人物造形、いわゆるキャラ立ちも素晴らしく、初読時はラインハルト派だった私も、年齢を重ねた今ではヤン派に。読むたび多くの登場人物の魅力に翻弄されてしまいます! 政治学の副読本として、胸を熱くする英雄譚として、架空の歴史書として。教訓と示唆に富んだ名作SFを、こんな時でも、こんな時だからこそ、ぜひ。
 
「もうすぐ戦いが始まる。ろくでもない戦いだが、それだけに勝たなくては意味がない。」
 

『三国志』
著:吉川英治(講談社)

 
今より1800年程の昔。後漢末期の中国大陸で覇を競い合う、数多の男たちの戦いを描いた英雄絵巻です。
 
日本人の三国志好きは有名ですが、私も中学時代に偶然本書に出会い、その作品世界に夢中になりました。歴史小説を読むことの楽しさは、吉川氏が教えてくれたと言っても過言ではありません! 戦後に刊行されたとあって言葉の古さは否めませんが、それを補って余りある面白さです。
 
人外の強さを誇る武将や、謀で敵を退ける名軍師。君側の奸。傾国の美女。天才医師。妖術使いなど。個性的な登場人物が楽しい、何度読み返してもワクワクドキドキのエンタメ歴史小説です。いつの日か、弊店の時代小説の棚前で、同じく歴史好きのお客様と三国志談義ができたら、楽しいだろうなあ。そんなことを夢見る一書店員なのであります。
 

『モリー先生との火曜日』
著:ミッチ・アルボム、翻訳:別宮貞徳(NHK出版)

 
死が間近に迫る恩師と、多忙の中で心を殺して生きている元教え子のミッチ。16年ぶり、二人だけの最後の授業が始まります。心震えるノンフィクションです。
 
「年をとるまいといつも闘ってばかりいると、いつまでも幸せにはなれないよ」
「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べるんだよ」
「そりゃ愛さ。愛はいつも勝つ」
モリー先生の言葉は、まるで渇いた砂に染み込む水のよう。
 
私自身、仕事を理由に多くを後回しにしてきたなぁと思いながら、学生時代の恩師に思いを馳せて…。誰しもそうですが、いつかは死ぬ。その時もし、モリー先生みたいな方が向こうで待っていてくれるなら、勇気凛々、何にも怖くない。
 
「正しく怖がること。」
私の恩師もきっと、こう仰るに違いない。
 
 

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