書店員の本棚

東海エリアの書店をリレー形式で巡り、書店員さんが愛読する本を綴ります。

 

 
本好きの書店員さんの本棚にはどんな本が並んでいるのだろう?気になる方も多いのではないでしょうか。書店員の愛書バトン第2弾は、名古屋市中区新栄にある「福文堂書店」書店員の石田愛さんにセレクトしてもらいました!石田さんの好きなジャンルはホラーやミステリー作品。国内のみならず、海外の作品も手に取るのだそう。幅広いジャンルの読書を楽しむ石田さんの注目の5冊をコメントとともにご紹介します。
 

 

『ウー・ウェンの北京小麦粉料理』
著:ウー・ウェン(高橋書店)

 
中国の家庭で作られる伝統的な小麦粉料理のレシピを集めた本です。買ったきっかけは、水餃子を作ってみたかったから。市販の餃子の皮を使うのもいいけれど、自分で粉からこねて作ってみたかったのです。
 
実際に作ってみると小麦粉の素朴な香りや、もちもち、つるんとした皮の食感がとてもおいしくて、それ以来餃子はいつも皮から手作りしています。餃子に慣れてくると、今度は肉まんや花巻などの発酵生地も試したくなって、気づけば本のレシピをどんどん試作。予想以上にうまくできたものもあれば、失敗したものもあり、また難しそうで未だに敬遠しているレシピもあります。それはそれで良し。
 
なかなか日本を出る機会のない私が、外国の素朴な家庭料理に自分の手で触れられるというのは、ある種の新鮮な驚きを感じます。レシピ本でありながら、他の国の文化を身近に感じられる素敵な本です。

 

 

『蜘蛛の糸・杜子春』
著:芥川龍之介(新潮社)

 
芥川龍之介の作品の中でも、読みやすい短編を集めた1冊です。表題作のほかに、「蜜柑」「魔術」「アグニの神」「トロッコ」など、国語の教科書で読んだ、という記憶がある方も多いのではないでしょうか。
 
どれも子どもに読ませる作品として書かれていて、やさしい言葉が使われています。
冒険活劇があったり、叙情的な美しい風景を描いたものがあったり、皮肉と風刺を効かせたコメディがあったり。それぞれのお話によって違った魅力が込められています。
疲れたとき、何も考えたくないとき、ただひたすら頭を空っぽにしてこの本を読みます。
空っぽの頭の中に物語の情景をゆっくりと思い描きながら、読み進めていくのです。
 
薄い本なのですぐに読み終えてしまうのですが、読み終えたとき、なんとなく全身がほんわりと温まったような感じがします。「子供向け作品」ではありますが、大人の心を癒してくれる力のある本です。

 

『クリスマス・カロル』
著:ディケンズ、翻訳:村岡花子(新潮社)

 
※現在は『クリスマス・キャロル』として販売されています。
 
クリスマスシーズンになると映像化や舞台化される定番作品ですね。クリスマスじゃなくても何度でも読みたい作品です。ケチで冷酷な老人スクルージが、クリスマスイブに3人の幽霊に誘われて過去・現在・未来の自分と対峙し、自分の生き方そのものを見直し、生まれ変わっていくという物語です。
 
冒頭では「何にも心動かされない鉄の心臓を持つ男」というイメージのスクルージですが、青春の日々の思い出に頬を緩めたり、自分の会社の従業員の困窮に心を痛めたりと、物語が進むにつれて、人となりが身近に感じられていきます。
 
私自身はスクルージほど冷酷なヤツじゃない…とは思うものの、ちょっとしたことで心の余裕を失くしてしまい、人に対する優しさがなくなっちゃうよな…などと反省することも・・・。
 
「善く生きる」とはどういうことか。「人はいくつになっても変われる」など、読む度に自分の良心を呼び起こしてくれるような作品です。

 

『災厄』
著:周木律(KADOKAWA)

 
四国の小さな村で突然起きた謎の集団死亡事件。その村を中心にじわじわと広がり、ついには四国全土を覆う死の連鎖。未知の細菌か?それともテロなのか?エリート官僚が命を賭して原因の究明に挑む!果たして彼は原因を突き止められるのか?日本を救えるのか?
という非常に熱い物語です。
 
妖怪の鵺(ぬえ)のような政治家との攻防や、出て行ってしまった妻、かつて妻を争った親友との葛藤など、物語を彩る要素が巧妙に配置され、読み進めるにつれて高まる緊張感。解き明かされた謎の意外性や、その後の含みの持たせ方など、全てが読後の爽快感に向かってなだれ込んでいくのです。まさに「読むエンターテインメント」。
 
「努力!友情!勝利!」という王道少年漫画のような熱い展開は、何度読んでも「本を読むのって楽しい!」と思わせてくれます。現時点でまだ新型コロナウィルスは終息していませんが、この本の主人公の姿勢から、改めて多くの人がそのために必死に労していることに思いを馳せました。

 

『フェルマーの最終定理』
著:サイモン・シン、翻訳:青木薫(新潮社)

 
※私は相当な数学音痴です。
 
300年以上も数学者達を悩ませ続けた“フェルマーの最終定理”が、いかにして解かれるに至ったか、その過程が描かれるノンフィクションの作品。数学好きのアマチュアのおじさんが数学書の余白に書いたメモが発端となり、以後の時代の名だたる数学者たちがその証明に挑みます。
 
問題そのものよりも、その問題に挑んだ数学者たちのドラマや、数学のさまざまな分野とその発展の歴史に重点が置かれていて、物語としてとても面白い。世代を重ねながら少しずつ解かれていく問題の影に、多くの数学者たちの栄光と挫折が秘められているのです。
 
何より凄いと感じたのは、数学音痴でも、途中で挫折せずに読み進めることのできる内容だということ。作中では数学のいろいろな理論だとか定理だとか数字だとか出てきますが、
それが妨げにならないのです。
 
無味乾燥で冷たい数字の羅列だと思っていた数学の世界が、実に血の通った人の営みであるということを思い知らせてくれた驚きの1冊です。
 
 

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