体験

「しょく」=食、職、触。触れることの魅力を伝える、編集メンバーの体験記事。

 
洋ろうそくよりも炎が大きく、自然な炎のゆらぎが神秘的な和ろうそく。そんな趣ある灯りや職人の手仕事に触れられる工房があると聞き、さっそく出かけてきました。
 


↑赤いろうそくが印象的な看板が目印。九代目店主で職人の磯部亮次さんと、女将の有記枝さん。
 
お邪魔したのは岡崎市八幡町にある「磯部ろうそく店」。江戸時代から300年に渡って国産櫨蝋(はぜろう)を使用し、変わらぬ技法で和ろうそくを手作りしている工房です。
 


↑店内には和ろうそくの魅力を体験できるスペースが。
 

 
和ろうそくについて教えてくれたのは、女将の磯部有記枝さん。和ろうそくに火を灯してもらい、五感すべてで和ろうそくの世界を楽しみます。
 

ほのかな草木の香りに包まれる

 

 
和ろうそくの炎を眺めていると、「江戸時代の人が見ていた灯りと同じものを見ているんだな」と、なんだか感慨深い気持ちに。
 
ふと、草原の中にいるような爽やかな香りが漂ってきました。これは、100%自然由来の原料で作られた和ろうそくの匂いだそう。
 

↑和ろうそくの蝋は、「櫨(はぜ)」という植物の実から抽出したもの。
 
絞った蝋を固めたものを嗅がせていただくと、先ほどの香りが! 100%自然由来の心安らぐ香りです。どのように作られているのか?職人さんが作業する工房を見学させていただきました。
 

江戸時代から受け継がれる製法

 

 
櫨(はぜ)の蝋を鍋で溶かし、和ろうそく作りのスタート。まずはろうそくの芯を竹串に刺す「芯さし」。まっすぐの竹串に芯を刺していきます。
 

↑和ろうそくの芯は、和紙にイグサの外皮を取った「髄(ずい)」を巻きつけたもの。
 
イグサと言えば畳を思い浮かべますが、ろうそくの芯に使われることから、別名「灯芯草(とうしんそう)」と呼ばれることも。生活にろうそくが溶け込んでいた日本の情景が浮かびます。
 

 
「芯さし」した竹串を溶かした蝋の中へ。「芯つけ」と呼ばれるこの作業、ひと束辺りの竹串は200本!巧みに操る職人さんの手さばきに目が釘付けです。
 

 
ろうそく同時がくっつかないように、たくさんの竹串を巧みに操る「もみつけ」。蝋をつけると、芯の部分がほんのり黄色に。
 

 
さらに、手のひらで丁寧に蝋をかけていく「下がけ」という作業。約50度の蝋をかけては乾かして、またかけるという作業を繰り返し、太くしていきます。
 

 
太さと形が整ったら、化粧蝋で表面をキレイに。手早く竹串を回し、化粧蝋が固まらないうちに表面を整えます。
 

↑職人の手によって何度も蝋がかけられ、滑らかになったろうそく。
 
何度も回転させながら、芯に蝋をつけていくこの作業。職人技だけでなく、軸となる竹串も重要です。なぜなら、竹串に少しでも歪みがあると回転させる際に蝋がよれてろうそくが歪んでしまうため。
 
ちなみにこの竹串、今では生産する職人がいないとても貴重な物。壊さないよう、1本1本大切に使われています。
 

↑竹串のストック。ろうそくの種類によって、使う竹串の太さや長さは異なります。
 

 
何度も蝋をつけて太くなったろうそく。しっかりと乾燥させて竹串を抜きます。
 

 
鉛筆削りのような機械で先を削り、芯を出す「しん出し」。
 

 
最後に、温めた包丁で竹串部分をカットする「しり切り」をして完成です。職人さんの手作業による和ろうそく。シンプルな形ながら、これほど手間をかけて作られているんですね!
 

↑右端の薄緑色のものが、できたてのろうそく。2~3年経つと、箱に入っているようなほのかに真珠みたいな光沢がある白色に。そんな経年変化も楽しみです。
 

↑手のひらサイズのカンナで削り、真ん中にクビレを作ることも。
 


↑カンナの削り跡が、独特の風合いとなって表面に残ります。
 

和ろうそくの、ゆらぐ炎に癒されて

 

↑(左:和ろうそく、右:洋ろうそく) 洋ろうそくに比べて炎が大きいのが和ろうそくの特徴。
 
風の吹かない室内で眺めていると、和ろうそくの炎だけがゆらり。このゆらぎ、芯の原料である植物に含まれる水分が蒸発することで発生するのだとか、竹串が刺さっていた穴の中を空気が対流するために発生するのだとか、諸説ありますが原因は解明されていないそう。
 
そんな不思議を内包した灯りに包まれて、穏やかな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
 
(文:黒柳 愛香)
 

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