子どもが自由に、自発的に活動できる、子どもだけの場所 「マーブルタウン」を東海で!! 【マーブルタウン 発起人 浅井朋親さん・中根信也さん】インタビュー


 
ドイツのミュンヘン市で約30年にわたって開催されてきた7歳から15歳までの子どもだけが運営する小さな都市「ミニ・ミュンヘン」。これに発想を得て、「子どもたちだけで作る子ども王国」をキャッチフレーズに、会場に集まった小学生だけで仮想都市の自治活動や商店の起業・運営を行う体験ができる「マーブルタウン」は東海地域での立ち上がりから8年目を迎えます。これまでに愛知こどもの国やドリームシアター岐阜で開催され、回を重ねるごとに参加者が増加してきました。
でも本当に子どもだけで自治活動なんてできるの?実際、どんな反響が出ているの?――
 
2017年9月17日・18日に開催予定の「あいちマーブルタウン2017」
を前に、編集部が素朴な疑問を、発起人の浅井朋親さん・中根信也さんにぶつけてみました!
 

↑ あいちマーブルタウン国王選挙の様子。参加者の小学生の中から1人の国王が選出され、自治が行われます。
 
― おふたりは元々、岡崎青年会議所で知り合い、当時岡崎市北部で行われていた子どもたちだけで運営する子どものまちを知り、規模を拡大したいと思われたんですね。
 
浅井:はい。僕は岡崎のタウン誌の編集を行っていて、その取材を通して地元NPOが「なごみん横丁」をサポートしていることを知りました。これは、大人立ち入り禁止の子どものまちで、子どものみでお店を切り盛りするというもの。しかし、地域に暮らすお母さんたちが支える活動であったため、なかなか広めていくことが困難でした。ドイツの「ミニ・ミュンヘン」に近い、魅力ある「なごみん横丁」を地域限定にせずに、もっと多くの子どもに体感してほしいと思い、最初は青年会議所として関わり、2013年以降はNPO法人コラボキャンパス三河を立ち上げて、運営に注力するようになりました。
 
中根:愛知県内で行う「あいちマーブルタウン」は、開催地にもこだわっているんです。行政で名鉄西尾・蒲郡線(西尾~蒲郡間)の存続に向けた協議が行われていることを知り、名鉄西尾・蒲郡線「こどもの国」駅近隣にある愛知こどもの国からの要請もあり、存続協議を行う地域協働事業実行委員会と一緒に「あいちマーブルタウン」の誘致に取り組みました。「愛知こどもの国」で開催するようになってから、徐々に名鉄西尾・蒲郡線「こどもの国」駅を利用する人が増え、「あいちマーブルタウン」が地域の子どもの成長を支えるだけでなく、その子たちが暮らす地域もうるおすことができるようになったんです
 

↑ 左が中根信也さん、右が浅井朋親さん。
 
― 子どもが「あいちマーブルタウン」で公共福祉や仕事を体感するとともに、その交通手段が自分たちの暮らす三河地域の活性化につながる。すてきな企画なんですね!
 
中根:確実に「あいちマーブルタウン」が開催される月に名鉄西尾・蒲郡線の利用者が増えるようになりました。電車を利用して参加してくれた子どもたちには特別にプレミアム100マーブル(マーブルは仮想都市「マーブルタウン」内で使える通貨の単位)を渡すようにしています。
 

↑ 名鉄西尾・蒲郡線で来場した子どもはプレミアム100マーブルが受け取れる。
 
― ところで「マーブルタウン」では、どんなことができるんでしょう?
 
浅井:「マーブルタウン」は子どもたちが入場でき、お金を稼ぐ意味や、仕事のやりがい、社会の仕組みを感じられる場所。来場したらまず住民登録(受付)をし、銀行で10マーブルを受け取ったら後は自由。自分で仕事を選び、お金を稼いで生活を成り立たせ、税金も納めるんです。
 
― 「貨幣経済を体感できる」ということなのでしょうか。職業体験ができるテーマパークとマーブルタウンの違いは?
 
浅井:「マーブルタウン」は職業体験とは少し違います。政治に参加したりまちづくりに協力する意味を知り、主体性を育てる企画です。マーブルタウンでは警察官役になっても制服は着ないし、ハンバーガーショップを起業しても本物のバーガーを売ることはしない。でも、見た目のリアリティよりも、僕らが大切だと思うのは、その職業に就いて自分なりに考え出した任務を果たし、街に変化が生まれることを体感できること。街でちゃんと役立っている自分を肌で感じられる喜びは、普段の生活ではなかなか得られないものだと思います
 
中根:開催期間2日間の途中に国王選挙があるのも特徴です。子どもたちは、10分働いたら10マーブルもらえるのですが、税金1マーブルを引かれて実際の手取りは9マーブルなんです。その「税金」は「国王が考えたことに使われる」と、選挙をして国王が国民との約束を果たして初めて理解できる。だから実際の社会でも政治に参加することは必要だと体感できるんです。
 

 
― 子どもたちの姿を見ていて心に残っていることは?
 
浅井:仮想都市「マーブルタウン」内でどんな職業を設けるかは「国王」になった子が「議員」の子たちと話し合って決めていくのですが、過去に自衛隊を設置しようという決議がありました。熊本地震やイスラム圏の紛争など、メディアを通して自衛隊員をよく目にするからでしょうが、時代を反映するものなんだなと思いました。自分たちで考えて壁をのぼる訓練や、ほふく前進の訓練をしていて感心しましたね。ほかには、キッチンペーパーと紐を使ってPM2.5対策マスクを自作した子もいて、今の社会をよく見ているなと思いました。
 
中根:ほんと、大人があれこれ言わなくてもいろんなことを考えて行動しているよね(笑)。僕が面白いと思ったのは、ハンカチやポーチ、帽子などの持ち物を渡すとその場で刺しゅうをするという店を出した女の子。つくったものを売るのではなくて実演型で客を引き寄せるって、子どもながらに戦略的だなと思いました。
 
浅井:保護者の方からも、いろんな驚きの声をいただきます。「うちの子は引っ込み思案だと思っていたのに、自分のお店では大きな声で呼び込みしてて、こんな面で頭角を現すとは思わなかった!」とか(笑)。
 

 
― 子ども自身に社会の一員だという意識が芽生えるから、それだけ発想力と行動力をのびのびと生かせる場になるんですね。
 
中根:そうかもしれません。実は今大学生になる息子が、小学生の時にマーブルタウンに参加したんです。友達を集めて映画を撮り、マーブルタウン当日に放映しました。音楽が入っていなかったので納得できなかったようで、翌年に再度チャレンジして効果音やBGMまで入れて収録していました。そのときの体験が魅力的だったからか、今は美大へ進んで映像を学んでいます。
 
浅井:幼いながらも将来の可能性につながるかも…と思えるから、主催者である僕たち大人もやりがいがありますよね! 今は、愛知開催の時には愛知学泉大学や愛知学院大学の学生が、岐阜開催の時には岐阜大学の学生が主にボランティアとして協力してくれています。
 
9月17日・18日の「あいちマーブルタウン2017」では、国王が選ぶ「良かったお店賞」を新しく導入予定。「良い」の判断基準も、子どもたち次第。見た目がかっこいいから「良い」のか、接客態度が優れているから「良い」のか。なぜ「良い」のかを考えながら主体的に議論を進めてほしい。思わぬ意見のぶつかり合いや相乗効果が見られることを、今回も楽しみにしています。
 

 
 

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