イベントやスポットなど、新たなムーブメントの「仕掛け人」にインタビュー。 インタビュー三重多気町

 
緑あふれる山々が周囲を連ね、透き通った宮川や櫛田川などが流れる自然豊かな三重県多気郡多気町。そんな風光明媚な場所で2017年6月に設立したポモナファームは、トマトをはじめとした高品質な野菜を栽培している農業生産法人ベンチャー。環境問題・食糧危機に対し、革新的な技法で解決策を生み出しているポモナファームで取締役・農業長をつとめる杉村圭亮さんにお話を伺いました。
 

― ポモナファームはどういった考えのもとに設立されたんですか?

 
杉村:今、世界では水不足と気候変動リスクが非常に大きな問題になっています。20億もの人々が管理された安全な飲み水を得られず、また地球温暖化などの気候変動による大雨や干ばつが一次産業に重大な影響を与えているんです。地球全体の水のうち、海水が約99%、私たちの生活に必要な淡水はわずか1%。その淡水の66%が農業で使われています。農薬や化学肥料を伴う農業は希少な淡水を多く使っているにもかかわらず、河川に流れ、水質汚染に関与している側面もあるんです。そうした環境問題への解決策のひとつとして、低エネルギーコスト、超節水、排水ゼロの環境配慮型の農業技術のモデルファームとして設立したのがポモナファームです。
 

↑気さくで朗らかな杉村さん。地元は三重県四日市市で、現在はポモナファームのある多気町で暮らしています。
 

― 杉村さんご自身の経験がポモナファームに重なる部分はあったのですか?

 
杉村:私は「地方創生」をテーマに、スイスやスウェーデン、ブータンなど国民の幸福度が高い国々を巡っていたことがあります。農作物やチーズ、牛乳などがおいしく、また自然と人との距離がとても近いことに感動しました。しかし、そんな美しい自然が環境問題の影響で失われていく現状を知り、自然豊かな地域を残すために、まずは地元の三重県でできることを考えました。そんなときにポモナファームと出会って農業が環境問題を左右するひとつだと気づき、地域が豊かになるような持続可能な農業を実現したいと思ったんです。
 

↑ポモナファームがあるのは北緯34度32分線。偶然にも同じ緯度上に、世界4大文明とそれらを支えた食の生産地が存在しているんです。ポモナファームは多気町から新たな食文化を育んでいくと語る杉村さん。
 

― ポモナファームではどんな農業技術を使われているんですか?

 
杉村:主に独自開発した「膜式栽培農法」を使っています。水で農作物を栽培する従来の方法ではなく、農作物が地面に根を張る箇所に根特殊繊維(膜)で作られたマットを使い、水を湿気に変える農法です。農作物が湿気からたくさんの水分を取り入れるために根を広げ、効率よく水分を吸収するようになるため、従来の農業の1/10ほどの水量で栽培が可能になるんです。
 

↑トマトの根が多くの水分を得ようと広がり、農作物の生きる力が感じられます。
 

― 膜式栽培農法で作られた農作物のクオリティはどうですか?

 
杉村:手前味噌になってしまうのですが、味、見た目、機能性などの品質は非常に高いと思っています。なぜなら、膜式栽培農法で根を広げることにより、その農作物の成長を最大限に促すことができるから。また、栽培技術だけでなく、私たち自身のスキルも磨いています。どんな技術があっても、それを使用する人次第で農作物の品質は変わります。愛情も農作物のクオリティに大きく影響するんです。現在ポモナファームでは、マイクロリーフやベビーリーフ、トウガラシなどを膜式栽培農法で栽培していますが、なかでもトマトの栽培に力を入れています。
 

↑ポモナファームの年間の農作物出荷量は約3t。今後も出荷量と農作物のバリエーションを増やしていくと語る杉村さん。

― なぜトマトに力を入れているんですか?

 
杉村:実はトマトは栽培方法によって味に差がでやすい野菜なんです。さらに約8,000種類もの品種があり、大きさや色、皮の柔らかさなど多彩。膜式栽培農法によって環境配慮型の農業技術を確立しつつ、おいしくて栄養価の高い農作物を生み出したいと考えているので、研究し甲斐のあるトマトを軸に栽培しています。年間で10品種ほど、これまでに計50品種ほどトライしてきました。現在は“ポモナファームで育ったトマト”という意味の「Pomato(ポマト)シリーズ」として、赤色のミニトマト・黄色のミニトマト、ファーストトマト、チェリートマト、ナポリトマトの計5品種を栽培しています。
 


↑赤色と黄色のミニトマト。色の違いは中身の成分の違い。赤色は抗酸化作用の高いリコピン、黄色には血管強化作用の高いルチンが多く含まれています。
 

↑細長い形のナポリトマト。甘くて香り高く、フルーティーな味わいが特徴です。
 

― それらの評判はいかがですか?

 
杉村:地元の方々からは「旨みが強く、トマト本来の味がしっかりと感じられる」という言葉をいただいたり、はるばる遠方の方が訪れて購入してくださったり、リピーターの方も日々増えています。レストランやカフェ、スーパーにも卸しているのですが、トマト自体の品質もさることながら、ポモナファームのブレない信念に共感してくださる担当者さんが多いです。最近では、糖酸比のバランスがよく、旨味成分が詰まったファーストトマトを使用したケチャップ「Pomato トマトケチャップ」の販売をスタート。トマトのコクが口いっぱいに広がると好評をいただいています。今後は、ポモナファームで栽培しているチェリートマトを使用したトマトジュースも販売予定。チェリートマトは味が不安定で日持ちがしないなどの理由から栽培を敬遠されがちですが、糖酸比が非常によく、とってもジューシー。100%のジュースにすることで、そのおいしさを存分に味わっていただけると考えています。
 

― 栽培以外で取り組んでいることや、今後の展望はありますか?

 
杉村:地元の小学生を対象にポモナファームで農業体験を実施したり、三重県内のイベントに出店したりと、地域との連携を大切にしています。来年には農地を拡大して、直売所も新設する予定。ポモナファームの取り組みを知っててもらうためでもあり、生産者の顔が見える農作物を地域の方々が安定的に買えるようになることは、地域が豊かになるために大切なことです。また、農業は誰もが働ける場でなくてはいけません。ポモナファームの栽培方法は最先端ですが、働くメンバーは多様。10代~30代、異業種からの転職や子育て中の女性、ベテラン農家、障がいのある人など、さまざまな人がフラットに働ける環境も魅力のひとつです。誰もが居心地よく働ける仕組みを形成することも、地域農業の持続につながると考えています。技術の研究や地域とのつながりを大切にし、環境問題の解決となるモデルファームとして今後も着実に取り組んでいきたいです。
 
 

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